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  • Shingo Sakamoto

2021年10月に資金調達した廃棄物アップサイクル海外企業3社まとめ

IDATEN Venturesでは毎月、ものづくり・ものはこび領域の国内・海外スタートアップの資金調達ニュースをリストアップしています。2021年10月前半分のリスト(海外)を見渡すと、Do Good Foods (米国)、Bolder Industries (米国)、Made of Air (ドイツ)という企業が資金調達を行っていました。これらの3社は、事業を展開する業界はそれぞれ異なるものの、アプローチの仕方としては共通する部分があるのではないか?と思い、取り上げてみることにしました。各社は以下のような事業を展開しています。


Do Good Foods  食品廃棄物を動物用飼料に変換する

Bolder Industries 廃タイヤを石油化学製品や鉄鋼製品に変換する

Made of Air    木質廃棄物を、炭素を排出しない耐久性新素材へ変換する


ご覧の通り、3社はいずれも、廃棄物を利用し、世の中で再び価値が認められるモノに変換していくサービスあるいは技術を開発しています。


今回は、この3社の会社概要・マーケット課題・ビジネスモデルの調査を通じて、廃棄物アップサイクル事業について深堀りしていきたいと思います。


(Source: https://pixabay.com/ja/photos/%e3%81%94%e3%81%bf-%e7%a0%b4%e7%89%87-%e7%84%a1%e9%a7%84-%e3%82%bf%e3%82%a4%e3%83%a4-%e5%b9%b4-1715064/)




Do Good Foods

会社概要

Do Good Foodsは、アメリカのインフラ投資会社KDC(Kamine Development Corporation)の創業者であるKamine兄弟(Justin、Matthew)が、2015年に立ち上げた企業です。設立6年後の2021年10月、資産運用会社のNuveenから1億6,900万ドル(≒190億円)の投資を受け、食品廃棄物を回収して動物用飼料に変換するプラットフォーム「Do Good Foods」を立上げました。


マーケット課題とビジネスモデル

こちらのレポートによると、2020年にアメリカで廃棄された食料の総重量は800億ポンド(≒3,600万トン)で、アメリカの食料供給量の約40%に相当します。


ちなみに、食品廃棄物について調べていると、「食品廃棄物」と「食品ロス」という言葉がどちらも登場します。定義としては、「食品廃棄物=可食部・非可食部を含める」、「食品ロス=可食部しか含めない」という使い分けがされているそうです。

(Source: https://www.econetworks.jp/translationtips/2019/11/loss-and-waste/)


食品廃棄物の方が集合として大きく、生産〜消費のサプライチェーンの中で廃棄された食品全てを包含した概念になります。先ほどの「アメリカの食料供給量の約40%」は食品廃棄物全体の数字で、そのうち30%が上図でいう小売・消費レベルで廃棄されているそうです


Do Good Foodsが持つ問題意識は、小売レベルで廃棄される1,050万トンの食品のうち、約35%(≒370万トン)が埋立地・焼却炉に送られていることにあります。まずは第一目標として、この370万トンを再び価値のあるものに変換していくことを目指しています。


Do Good Foodsは、提携する小売業者から余剰食品を2〜3日ごとに無料で引き取り、自社工場で動物用飼料に変換します。飼料は養鶏農家に無償提供されることになっており、この飼料で育った鶏はDo Good Foodsブランドで小売店に販売されます。Do Good Foodsの試算によれば、鶏1羽あたり4ポンド(≒1.8kg)の食品廃棄物を埋立地・焼却炉に運搬しなくて良いことにつながるそうです。2021年11月時点では、販売可能な製品は鶏肉に限定されています。


Do Good Foodsは、2015年の設立から6年間、この新しいサプライチェーンを完成させるため、小売店から食品廃棄物を回収する物流、回収物の飼料加工、そして鶏肉の販売まで、安定的にビジネスを回せる体制づくりに努めてきました。創業者であるKamine兄弟に加えて最高戦略責任者としてチームに参画したSam Kass(オバマ元大統領の専属シェフ兼栄養政策アドバイザー)によれば、この食品廃棄物アップサイクルプロジェクトを富裕層が居住する一部地域で試験的に実施するのは簡単ですが、全米の住民が購入可能な価格帯で鶏肉を販売できるようにするまでには、越えるべき高いハードルがいくつもあるそうです。


ビジネスを大規模に成立させるために、Do Good Foodsが心がけたのは、既存のオペレーションを変革しすぎないことです。小売業者はこれまでお金を払って食品廃棄物を引き取ってもらっていましたが、小売業者は引き取り相手を回収業者からDo Good Foodsに変えるだけで、これまでのやり方を大きく変える必要はありません。


Do Good Foodsは、2021年10月に1日あたり生産能力が160トンの食品廃棄物処理工場をペンシルベニア州に建設し、2022年1月から再生飼料によって育った鶏肉が小売店舗に並び始めるという計画で事業を進めているようです。2025年までに20工場を建設予定で、1工場の1日あたり生産能力を160トンとすると、合計で年間100万トン強の食品廃棄物を処理できることになります。これから順次、豚肉・牛肉のような他の食肉も扱っていく予定です。


収益モデルは具体的に明かされていませんが、公開範囲の情報から推定すると、Do Good Foodsの売上は、自社ブランドの食肉製品販売収入のみになります(食品廃棄物の回収も、養鶏農家に対する加工飼料提供も無料で実施)。コストは、小売業者から食品廃棄物を回収する物流コスト、廃棄物処理工場の減価償却・稼働コスト、飼料を養鶏農家に運搬するコスト等が思いつきますが、この他にも細かいところでコストがかかるかもしれません。どれくらいの規模になると損益分岐点を越えるのか、今後注目していきたいと思います。



Bolder Industries

会社概要

Bolder Industriesは、2011年にアメリカのコロラド州で創業された企業です。廃タイヤを、カーボンブラック(炭素主体の微粒子)・石油化学製品・鉄鋼製品等に変換する技術を開発しています。


2021年10月、CIMグループとAravaipa Venturesが主導する資金調達ラウンドで、8,000万ドル(≒90億円)の出資を受けました


マーケット課題とビジネスモデル

こちらのサイトによれば、アメリカでは年間2億本以上の廃タイヤが発生しています。また、日本では、廃タイヤ発生量が約1億本と言われています


こうした廃タイヤが全て埋立・焼却されてしまうことはなく、既にある程度アップサイクルおよびリサイクルのプロセスが確立されています。以下の表は、日本における廃タイヤの再利用内訳です。

(Source: https://www.jatma.or.jp/environment/report01.html)



2019年のアップサイクル・リサイクル率は合計94%で、内訳としては原型加工利用18%、熱利用61%、そして海外輸出16%という構成になっています。合計には毎年少しずつバラツキがあり、2018年が97%、2017年が93%となっています。


一方で、こちらのソースによれば、アメリカにおけるアップサイクル・リサイクル率はピークを記録した2013年の約96%から減少傾向にあり、2019年は約76%だったようです。アメリカの廃タイヤ再利用推進協会によると、廃タイヤの生産量は毎年約7%増加している一方で、アップサイクル・リサイクル量は2017年から変わっておらず、放置された廃タイヤが増えている、と報告されています。

(Source: https://www.greencarcongress.com/2020/10/20201015-ustma.html)



Bolder Industriesは、廃タイヤの98%をアップサイクル・リサイクルできる技術を持ち、着実に稼働実績を積んでいます。2019年2月からミズーリ州の工場を24時間365日稼働させていますが、増加する廃タイヤ処理に対応するため、2022年第一四半期までに生産能力を2.5倍に増強する計画を立てています。ホームページによれば、廃タイヤの再利用内訳は、Bolder Black(Bolder Industriesが商標を持つ再生カーボンブラックで、石油や天然ガスを原料とするカーボンブラックを代替することができる)33%、ガス10%、石油化学製品40%、そして鉄鋼製品15%となっています。

(Source: https://www.bolderindustries.com/)



2021年10月の資金調達時のニュースによれば、カーボンブラック市場で日本No.1シェアを持つ東海カーボン社は、Bolder Industriesが生産する再生原料をカーボンブラック生産に用いることで協業関係にあると言われています。




Made of Air

会社概要

Made of Airは、2016年にドイツで創業された企業です。木質廃棄物から耐久性の高いプラスチックを生産しています。


2021年10月にシードラウンドを実施し、500万ユーロ(≒7億円)を調達しました。この資金調達ラウンドは、ノルウェーのファンドが主導し、元グーグルCFO・オリンピック選手などの著名人も株主として参画しました。


マーケット課題とビジネスモデル

Made of Airが開発・生産するプラスチックは、「カーボン・ネガティブ」であることを目指しています。カーボン・ネガティブとは「ある経済活動によって排出される温室効果ガスよりも吸収される温室効果ガスが多い」ことを意味します。


Made of Airが目をつけたのは、林業で排出されるおがくずや小さなチップ等の木質廃棄物です。こうした廃棄物は、埋立・ガス化・焼却されるケースが一般的ですが、Made of Airは違うアプローチを採用しています。TechCrunchによれば、Made of Airは木質廃棄物を無酸素炉で高温加熱する過程で生成されるバイオ炭を顆粒化し、プラスチックの原料として利用しますバイオ炭は主に農業用肥料や動物用飼料添加剤として使用されることが多い原料ですが、サングラスや自動車内装部品のようなプラスチック製品に再利用する、というのがMade of Airのビジネスモデルです。すでにH&Mのサングラス、Audiの販売店建築に使用され始めており、これから都市インフラ・インテリア家具などに事業拡大していくことを計画しています。


バイオ炭の市場規模は拡大傾向にあり、2019年〜2025年の年間平均成長率は13.2%で、2025年にはグローバルで31億ドル(≒3,400億円)に達することが予想されています。主要用途は前述の通り農業用肥料や動物用飼料添加剤がメインですが、これから工業製品向けの市場が伸びてくるのかもしれません。


現時点では、化石燃料から生産したプラスチックに対して、バイオ炭由来のプラスチックは約2倍の価格となっていますが、Made of Airによれば、今後3〜5年のうちに化石燃料由来のプラスチックと同等レベルまで引き下げることを目指しています。




まとめ:3社の調査を通じて


近年の環境意識の高まりを考えると、スタートアップ・エンタープライズ問わず、企業はこれまで以上に、ビジネスの中で廃棄物削減に貢献することが求められていくと考えられます。いかに調達・生産・販売活動の中で廃棄物を削減するか?そのうえで排出してしまった廃棄物はどのように再生するか?という問いを立て、アクションしていくことが重要になります。


こういった大きな動きがある中で、ニーズをに掴んで事業化していくスタートアップが果たす役割は大きいかもしれません。


今回3社の調査をして感じたのは、廃棄物アップサイクルビジネスにはケアすべきポイントがありそうだ、ということです。各社紹介の中で言及したものも、しなかったものもありますが、改めて2つ整理してみます。


①既存オペレーションとの関係

Do Good Foodsの章で言及しましたが、関係者の既存オペレーションを変革しすぎない、というのは重要なポイントだと思います。


「環境保護のために、これまで店の前にまとめて捨てていた廃棄物を、15種類に分類したうえで500m先の集積場まで運んでください。」と言われたらどうでしょうか?そこに何のインセンティブも罰金もない場合は、多くの人が従わないか、従っても長続きしないのではないかと思います。


(まさに私がそういう人間なのですが、)頭では「こうした方が環境に良い」とわかっていても、これまでのやり方を大きく変えなくてはいけないと、「面倒くさいから今回だけはこれまで通りでいいか。」と妥協しまうことがあります。


もちろん一人一人が意識高く生活することを心がけるのは大事ですが、いかに「これまで通り行動していたら、勝手にエコな活動に貢献していた」という状況を生み出せるか、というのも重要だと思います。これはtoCでもtoBでも同じように当てはまることだと考えています。




②物流コストとの関係

こちらは、各社紹介の中であえて言及することはしませんでしたが、多くの廃棄物アップサイクルビジネスは、物流コスト問題をケアしなければなりません。


廃棄物の種類によって大きさや価値は異なるため、一概に決めつけることはできませんが、一般的に廃棄物は廃棄されるくらいなので、重量当たりの価値が小さい場合が多いです。そのため、効率的に運搬しないと、廃棄物リサイクルによる創出価値を運搬コストが上回ってしまい、ビジネスとして継続することが難しくなります。


そのため、地域ごとにアップサイクル設備をつくり、地産地消していくことが1つの戦略になります。以前ご紹介した廃棄物から水素を抽出するRavenというスタートアップも「地産地消」を心がけていました。今回ご紹介した3社も、一箇所に集めて大規模処理するよりも、モジュール化した処理設備を全国展開していくことで廃棄物の運搬コストを下げるアプローチを採っています。




また、①・②どちらにも関連しますが、廃棄物選別コスト問題も重要です。例えば、廃棄物を排出する事業者の既存オペレーションを変えないようにすると、再利用方法が異なるものがごちゃごちゃに混ざってしまい、後から選別するのに時間と手間がかかってしまう場合があります。回収時点である程度選別される仕組み・ルール・インセンティブをつくるのか、あるいは回収した後の選別コストを下げるのか(ロボットやAIの活用等)、といった工夫が必要になります。



最後になりますが、いつ達成できるか、どういう優先順位で進めていくべきは別にして、各廃棄物のアップサイクル・リサイクル率は100%にできることが理想です。ある程度、処理技術が成熟している廃タイヤですら100%には達していません。廃棄物の最後1%まで再利用できる技術・ビジネスモデルの開発を進めていく必要があります。IDATEN Venturesとしても、ものづくりやものはこびに関わるテーマとして、今後ますます注目していきたいと思います。



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