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  • Writer's pictureShingo Sakamoto

国際輸送予約プラットフォーム Freightosを深掘りする

2023年に1月に、国際輸送予約プラットフォームを展開するFreightos(フレイトス)という企業がNASDAQに上場したため、分析してみたいと思います。


国際輸送×デジタルの領域では、FlexportFort等、大型資金調達を重ねている企業がいくつかあり、過去に分析記事を書いてきましたが、いずれも未上場のため情報が限られている印象を受けました。


上記2社とアプローチは異なるものの、国際輸送効率化というテーマで上場した事例としてFreightosは貴重なケースであるため、主にプロダクトと収益構造の部分を中心に、公開情報の範囲で深掘りしていきます。


なお、為替レートは2024年5月15日時点のものを利用します。

(Source: https://pixabay.com/photos/aircraft-sunrise-airport-morning-7206820/)



Freightosとは


Freightosは、2012年にマイアミ(アメリカ)で設立されました。現在の本社は香港となっています。


Founderで現在もCEOを務めるZvi Schreiber氏はイギリス出身の連続起業家で、LinkedInを見ると過去に4~5社起業してきた経験があるようです。こちらのインタビュー記事を読むと、 Schreiber氏がFreightosの前に創業したLighttechという企業はLED電池のパワーサプライ(安定した直流電力を供給するための機器)を開発していましたが、中国の深圳で製造した商品を北米・欧州に出荷する際に、国際輸送のデジタル化が遅れていることに気がつき、同社売却後にFreightosを創業したそうです。


Freightosはいくつかのプロダクトを展開していますが、メインプロダクトとなるのが、Freightos.com Marketplaceです。Freightos.com Marketplaceを一言で表現するなら、国際輸送版のExpedia(エクスペディア)、Skyscanner(スカイスキャナー)、Booking.com(ブッキングドットコム)のようなものです。このマーケットプレイスを利用すると、顧客は陸・海・空の国際輸送を数クリックで横並び比較することができ、決済まで行うことができます。


まずはFreightos.com Marketplaceを利用してみる

無料で誰でも検索ができる仕様になっているため、試しに検索を行ってみました。


1.まず、トップ画面からです。上方に検索窓があり、「Origin(出発地)」「Destination(到着地)」「Load(貨物の形状・サイズ等)」「Goods(品物の価格)」を入力します。


1-a.「Origin」をクリックすると、出発地のタイプとして4つリスト表示されます。Port/Airport(港/空港)、Factory/Warehouse(工場/倉庫)、Business address(ビジネス住所)、Residential address(居住住所)がありますが、今回はResidential addressで日本の横浜を住所として入力してみます。

(Source: https://ship.freightos.com/)


1-b. 「Destination」をクリックすると、Origin同様に到着地のタイプがリスト表示されますが、候補は6つで先ほどと微妙に異なっており、Port/Airport、Warehouse、Fulfillment center(フルフィルメントセンター)、Business address、Residential address、Last mile delivery warehousing(ラストマイル配送倉庫)の中から選択できます。今回は米国のニューヨークにあるFulfillment centerを選択してみます。なお、Fulfillment centerとLast mile delivery warehousingの場合は、住所を自由に入力するのではなく、事前にデータベースに登録された場所から選択する仕様になっています。試しにFulfillment centerとして表示されたいくつかの住所を検索してみると、各輸送事業者が運営する拠点がヒットしました。

(Source: https://ship.freightos.com/)


1-c. 「Load」をクリックすると、まず「Loose Cargo」か「Containers」を選択することが求められます。Containersをクリックしようとすると、「Containers are not supported for selected origin/destination type」と表示されました。そこで、試しにOriginをResidential addressではなくFactory/Warehouseに変えてみたところContainersタブは有効化されました。Loose Cargoとはコンテナに積まれないで輸送するバラ貨物を指します。Loose Cargoを選択すると、次は「Package Tyoe」としてPallets(パレット)かBoxes/Crates(木枠による梱包)か、ユニット数、サイズ(縦・横・高さ)の入力が求められます。Containersを選択すると、次は「Container Type」として20フィート、40フィート、40HC(ハイキューブコンテナ、40フィートよりも背が高い)の3つから選びます。今回はLoose Cargoで、高さ100cm、重さ20kgを入力してみます。


1-d. 「Goods」をクリックすると、Goods Valueとして価格を入力するよう求められます。今回は1,000ドル(≒15万円)としてみます。

(Source: https://ship.freightos.com/)


2. 全て入力して検索ボタンをクリックします。


3.ここで、もしアカウントを登録していない場合は、登録しなければいけません。アカウント登録時、「Which of the following describes you best?」という項目があり、First-time shipper、Ships up to 10x a year、Ships more than 10x a year、Freight forwarder/3PL、Otherから選択することになります。今回はFirst-time-shipperを選択します。



4. アカウントを作成すると、結果が表示される前に、「Recommended Services」という画面に遷移します。意図していませんでしたが、どうやら私が選択したFulfillment centerはAmazonのFulfillment centerだったようです。今回は、推奨された以下3つのサービスを、全て選択した状態で検索することにします。

  • Amazon Labelling(Amazon以外のFulfillment centerの場合は表示されず) Amazonに求められるラベル貼付けを代行するサービス

  • Insurance 貨物と輸送の代金を最大50万ドルまで補償するサービス

  • Customs brokerage and bond 通関と税関ボンドの手配を代行するサービス。税関ボンドとは、米国輸入時に必要な手続きで、もしも輸入者が関税等を支払えない時に保険会社が米国税関に関税等の支払いを保証する仕組み。


5.ようやく検索結果を見ることができます。検索ボタンを押してから、結果が表示されるまでにかかった時間は、5秒くらいでした。検索結果は4件あり、そのうち2つはトータルコストが1,675ドル、残りの2つは1,730ドルでした(なお、その12時間後に同じ条件で検索した時は、1,860ドルと1,915ドルが提示されました)。1,675ドルのプランは東京港、1,730ドルのプランは横浜港を利用するケースでした。今回は1,675ドルのプランの内訳をご紹介します。

  • 横浜 -> 東京港:408.41ドル

  • 東京港 -> ニューヨーク港:596.44ドル

  • ニューヨーク港 -> Fulfillment center:310.31ドル

  • Insurance:45ドル

  • Customs brokerage and bond:315ドル

(Source: https://ship.freightos.com/)


6. 1,675ドルのプランを選択すると、予約画面に遷移します。右側の合計金額を見ると1,725ドルとなっていますが、1,675ドルとの差額である約50ドルが、Platform FeeつまりFreightosの収益になっています。ちなみに、1,730ドルの場合のPlatform Feeは約52ドルでした。それぞれ割り戻してみると約3%という数値で一致するため、Freightosの手料率は輸送金額の3%相当、ということがわかりました。今回のプランを見ると、輸送・Insurance・Customs brokerage and bondは以下のプロバイダーから提供されているようです。

  • 輸送:Freight Right Freight Rightは、2007年に設立された、カリフォルニア州に拠点を置くフォワーダーです。

  • Insurance:XCover ECや旅行サイトとAPI連携し、さまざまな国・言語・通貨で顧客ごとにパーソナライズされた保険を提供する企業です。

  • Customs brokerage and bond ニューヨークに拠点を構える、オンライン取引通関業者です。

(Source: https://ship.freightos.com/)


7. 試しにそのまま予約ボタンを押してみると、次の画面に遷移します。次に、請求書送付先・輸送品物の詳細情報に関する情報入力、およびインボイス・パッキングリストのアップロードを行います。なお、インボイスには指定のフォーマットがなく、アップロードされた後に非構造化ファイルの情報を抽出するプログラムが動作するか、裏側で人間が処理している可能性があります。これ以上は本格的な書類が必要になるため、いったんここまででプラットフォームの試し利用を終了します。



Freightosのその他のサービス

Freightosは、Marketplaceを自社サービスとして展開するとともに、eコマース事業者向けにAPI提供を行っています。eコマース事業者がFreightos MarketplaceのAPIを利用してサイトに組み込むことで、エンドユーザー(ECサイトを利用する顧客)がECサイトから直接国際輸送手配を行えるようになります。このAPIには、必要なドキュメント管理、輸送事業者とのメッセージ送受信、出荷情報通知等が含まれています。


Freightos.com  Marketplaceの他に、エンタープライズ企業向けに展開しているのが、Freightos.com Enterpriseです。こちらは、新たな取引機会を探索するという意味では厳密にはマーケットプレイスモデルではなく、荷主がすでに取引実績のあるフォワーダーとのやりとりにおいて利用できるシステムとなります。例えば、こちらの事例では、Electrolux Groupというスウェーデンの家具メーカーがFedEx LogisticsというフォワーダーとのやりとりにFreightos.com Enterpriseを利用しているケースが紹介されています。この記事だけでは具体的にどのように利用されているのか理解が難しい部分がありますが、その他の情報も統合して考えると、荷主が航路・貨物・日時を入力すると、その情報が既存フォワーダーにソフトウェア上で伝達され、フォワーダーは同じソフトウェア上でそのリクエストに対する見積もり結果を返す、という流れになっていると思われます。Marketplaceが任意のフォワーダーとマッチングしているのに対して、Enterpriseは既存フォワーダーとの効率的コミュニケーションツールになっているような印象です。


上記2つ(Firehgots.com Marketplace、Freightos.com Enterprise)が主に荷主をターゲットとするソリューションだったのに対して、フォワーダー(荷主にサービス提供している輸送事業者)向けのソリューションがWebCargoです。海運(船の手配)もカバーしていると言いつつ、デモを見る限り空運(航空機の手配)に特化しているように見えます。ホームページによると、1万社以上のフォワーダーに利用されており、45社以上の航空会社がネットワークされているそうです。


実はWebCargoは、Freightosが開発したプロダクトではなく、2016年に買収したことによってソリューションラインナップに組み込んだものです。元々WebCargoを開発したのは、2008年にスペインで設立されたWebCargoNetです。このプロダクトは、フォワーダーによる航空貨物輸送枠の予約をオンライン上でできるようにしたもので、航空会社は輸送枠に対する料金設定・配信がスムーズにできるようになります。


日本語でも情報がないか探していたところ、2023年10月に日本貨物航空株式会社から、WebCargoのプラットフォームを活用して欧州発貨物のWeb予約を開始する、というプレスリリースを発見しました。同社はすでに米国発アジア向けの航路ではWebCargoを利用していたそうですが、今回欧州発の航路にも適用していく、とのことです。同様のプレスリリースが、2024年2月に日本航空株式会社(JAL)からも発表されていました。一般貨物を対象に、WebCargoによる予約受付を開始しています。



Freightosの収益状況


Freightosのプロダクトが一通り把握できたところで、公開されているドキュメントをもとに、Freightosの収益状況を確認していきます。2023FYの終わりに発表された2023FYの実績レポートを参考にします。


Transactions(輸送取引が成立した回数)は1,024,751回で、GBV(Gross Booking Value)が6億7,170万ドル(≒1,050億円)、Revenueが2,030万ドル(≒32億円)です。GBVをTransactionsで割ると、取引1件あたりの予約金額がわかります。計算してみると、6億7,170万ドル ÷ 1,024,751回 = 655ドル(≒10万2,000円)です。ただ、Transactionsの中には大きな法人顧客の予約も、個人顧客の予約も混合して含まれているため、その中の分散は大きそうです。

(Source: https://www.freightos.com/wp-content/uploads/2024/02/2023-Q4-Earnings-Call-FINAL.pdf)


ちなみに、この発表が行われた2024年2月26日時点のFreightosの時価総額は約1億4,000万ドル(≒218億円)なので、PSR(本当はEBITDAに対する倍率を参考にしたいところですが、EBITDAがマイナスなので、便宜的にPSRを参考にしてみます)は、1億4,000万ドル ÷ 2,030万ドル = 6.9倍となります。


次にRevenueの内訳を見てみますが、まずSolution RevenueとPlatform Revenueに分けることができます。Solution Revenueは、主にSaaSや国際輸送に関するデータベースのサブスクリプション収入です。恐らく、荷主・フォワーダー・航空会社がサービスを利用するにあたって固定的に月額費用を支払っていると思われます。Solution Revenueの2023年Q1~Q4を合計すると、1,320万ドル(≒20億円)となります。Platform Revenueは輸送が成立した際にFreightosに入ってくる手数料で、Platform Revenueの2023年Q1~Q4を合計すると、710万ドル(≒11億円)となります。

(Source: https://www.freightos.com/wp-content/uploads/2024/02/2023-Q4-Earnings-Call-FINAL.pdf)


先ほどご紹介したGBVでPlatform Revenueを割った数値が手数料率であると考えられます。計算してみると、710万ドル ÷ 6億7,170万ドル = 1%となります。一方で、最初にユーザーの立場になって予約しようとした際のPlatform Feeは3%だったため、2%の差がどこからきているのか、今ひとつわかりませんでした。いずれにしても、決算情報を見ると、Platform RevenueがGBVの1%になっているのは事実のようです。もしかすると、サブスクリプションフィーを払うと1%、払わないでスポット利用すると3%という仕組みになっているのかもしれません(自分はサブスクリプションフィーを払わずに使えそうだったため3%だったのではないか、という仮説です)。



今後の成長性という意味では、市場規模とTransactionsの推移グラフが参考になりそうです。まず、WebCargoの市場規模(GBVベース)が1,340億ドル(≒21兆円)、Freightos Markerplaceの市場規模(GBVベース)が2,080億ドル(≒32兆円)で、合わせて3,420億ドル(≒53兆円)と推定されています。これはGBVベースなので、もし仮に手数料率が1%とすると、3,420億ドル × 1% = 34.2億ドル(≒5,300億円)となります。手数料率が1%だと、最初に持っていたイメージよりも小さい数値となりました。

(Source: https://www.freightos.com/wp-content/uploads/2024/02/2023-Q4-Earnings-Call-FINAL.pdf)



Solution Revenueの市場規模に関する情報はありませんが、2023FYのSolution RevenueがPlatform Revenueの約2倍だったことから、単純計算すると、約70億ドルのポテンシャルがあるかもしれません(ただし、Solution Feeがアカウント数に紐つく課金モデルだった場合、Transactionsが増えてPlatform Revenueが増えても、それに伴ってSolution Revenueが増えるとは限らないので、あくまでご参考まで)。合計で約100億ドル(≒1兆5,000億円)規模の市場でFreightosは挑戦しているのかもしれない、とざっくり試算ができました。


次に、そんな市場の中でFreightosがどういう成長を遂げているかというと、CAGR162%でTransactionsが増えています。2020年Q4のTransactionsが15,973件だったのに対して、3年後の同時期である2023年Q4は286,938件と、大きく取引成立数を増やしています。このページには、Strong consistent transactions growth reflects marketplace network effect(ネットワーク効果が働いて力強く取引件数が成長している)と書かれています。

(Source: https://www.freightos.com/wp-content/uploads/2024/02/2023-Q4-Earnings-Call-FINAL.pdf)


Freightosの事業モデルを考えると、世界中の荷主・フォワーダー・航空会社にサービスを提供できるよう事業エリアを拡大するのが、1つの成長戦略となります。確かに、同社のサービスを利用開始したという日本企業のプレスリリースがここ数年で増えているのも、その1つの表れかもしれません。アジア戦略はM&Aにも表れており、2018年に買収したAir Freight Bazaarという企業は、インドの航空輸送オンラインマーケットプレイスを提供する企業です。2022年には7LFreightという航空輸送ソフトウェアを開発する米国企業を買収していますが、買収に関するプレスリリースを見ると、7LFreightはWeCargoの競合にあたる存在で、7LFreightが持つ北米の顧客基盤を獲得する目的で行われた買収だったよう

です。


FlexportやFortoは陸・海・空を総合的にカバーするトータルプラットフォームですが、Freightosは(もちろん陸・海も一部カバーしているものの)基本的に航空輸送に特化していている点が特徴です。また、自らが(デジタルの力を使って効率的にオペレーションを行うことのできる)フォワーダーになっている2社に対して、Freightosはあくまで中立的なマーケットプレイス運営者というポジションをとっているのも興味深いところでした。「売上」を見れば確実にデジタルフォワーダーの方が大きくなりますが、デジタルフォワーダーは(デジタルで効率化されていると言っても)オペレーション組織が肥大化しやすい傾向にあると思います。Freightosは、正直言って売上規模(GBVではなくRevenue)はこじんまりしていますが、デジタルフォワーダーに比べるとオペレーションコストは相対的に小さそうな印象でした。


いずれにしても、ここ数年で急増している取引件数を見ると、今後の動向が非常に気になるところです。今回はこれで以上とします。


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