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  • Shingo Sakamoto

2022年に資金調達を実施した金属3Dプリンター関連スタートアップ

IDATEN Venturesは毎月ホームページFacebookで、国内・海外の「ものづくり・ものはこび系企業の資金調達関連ニュース」一覧を公開しています。


今回は、その中から、2022年1月〜6月に資金調達(被買収を含む)を実施した金属3Dプリンター関連スタートアップについて、技術の特徴、顧客セグメント、事業開発状況を中心に調査していきたいと思います。


イメージを膨らませるために、いくつか動画をご紹介しておりますので、もしよろしければそちらもご参考ください。


なお、記事の中で、為替レート(ドル・円)は2022年7月21日時点のものをベースに計算しています。

(Souurce: https://pixabay.com/ja/vectors/3dプリンタ-3dプリント-3d-3311587/)



金属3Dプリンター市場について

まず、金属3Dプリンター市場の状況について、簡単にご紹介します。


こちらの記事によると、金属3Dプリンターの市場規模は2019年時点で約1,300億円で、2025年には約2,500億円まで成長すると言われています。2019年度のデータによると、欧州・北米が全体売上の60% 以上を占めているそうです。


特に金属3Dプリンター利用が進んでおり、今後さらなる普及が期待されるのが、医療・航空宇宙・自動車業界と言われています。主な用途は「試作品」や「多品種小ロット部品」の製造です。次の章でご紹介しますが、これから広く普及していくにあたって、Q・C・D(Quality・Cost・Delivery:品質・コスト・スピード)の観点で課題・成長可能性があると言われています。



金属3Dプリンターの種類について


一口に金属3Dプリンターと言ってもさまざまな種類が存在し、種類ごとに品質・コスト・造形スピードも異なります。代表的な3Dプリンターの種類について、いくつかのサイトを参考にご紹介します。なお、価格帯はあくまで目安となりますのでご留意ください。


①パウダーベッド方式

現在最も普及している方式で、世界の金属3Dプリンターの約8割を占めていると言われていま。金属粉末を敷き詰め、造形部分にレーザー・電子ビームを照射して、溶かし固めていきます。一層ごとに粉末を敷き詰め・溶融・凝固を繰り返していくため、造形精度が高い(数十〜数百マイクロメートル)一方で、時間がかかるのが課題と言われています。もちろんサイズにもよりますが、モノによっては完成まで数十時間〜数日かかることも珍しくありませ


なお、電子ビームは、レーザーに比べてエネルギー効率が高いこと、造形スピードが速いことが強みである一方、精度は劣ると言われています。価格帯としては、3,000万〜億円単位と言われていま


(参考動画)

(Source: https://www.youtube.com/watch?v=733aQ2fBfQI)



②メタルデポジション方式

溶融した金属材料を積層していく方式。金属粉末を用いるレーザー方式と、金属ワイヤーを用いるアーク放電方式があります。パウダーベッド方式に比べて造形スピードが速いことが特徴です。また、部分的な積層が可能となるため、部品の一部を補修(肉盛り)するために利用することもできます。一方、造形位置を機械的に制御するため、パウダーベッド方式よりも精度が低いと言われています。


価格帯としては、3,000万〜億円単位と言われています


(参考動画)

(Source: https://www.youtube.com/watch?v=gZn72RKi1f0)


③熱溶解積層方式(FMD)

金属粉末に熱可塑性樹脂(バインダー)を混合した材料を積層していく方式。樹脂3Dプリンターと同様の造形方式です。造形後、脱脂(バインダーを取り除く)・焼結工程を実施します。この方式では、脱脂・焼結を通じて造形品が収縮するため、それも加味してサイズ調整を行うことが必要となります。


価格帯としては、パウダーベッド方式・メタルデポジション方式に比べると安価で、数十万〜5,000万円程度と言われています


(参考動画)

(Source: https://www.youtube.com/watch?v=EmL8P5UV1VI



④バインダージェット方式

金属粉末を敷き詰めた層に、液体の熱可塑性樹脂(バインダー)を吹き付けて固定化する方式。造形後は熱溶解積層方式同様、脱脂・焼結を行います。造形スピードが速い一方、パウダーベッド方式・メタルデポジション方式に比べて密度が低い言われています。また、造形時・完成時でサイズが異なる点も注意が必要です。


価格帯としては、3,000万〜億円単位と言われています


(参考動画)

(Source: https://www.youtube.com/watch?v=LTUL2UvUmlY)



2022年1月〜6月に資金調達を実施したスタートアップ


この章では、2022年1月〜6月に資金調達を実施した金属3Dプリンター関連スタートアップをご紹介します。この他にも拾いきれていない案件があるかもしれませんが、その場合はぜひご連絡ください。並びは資金調達時期が早い順としています。


RE3DTECH

地域:アメリカ

創業:2017年

概要:

以前ブログでご紹介したCORE Industrial Partnersに買収されたRE3DTECHが提供するのは、レーザーパウダーベッド方式、そしてバインダージェット方式の3Dプリンティングサービスです。主な顧客は航空宇宙・防衛、自動車、医療等の業界の企業となっています。


Seurat Technologies

地域:アメリカ

創業:2015年

概要:

シリーズBラウンドで2,100万ドル(≒29億円)調達。同社は、ローレンス・リバモア国立研究所で開発されたエリアプリンティング技術を活用していますが、この技術は社名の由来にもなっているフランスの画家 Georges Serurat(ジョルジュ・スーラ)の点描絵画から着想を得ているそうです。


(参考動画)

(Source: https://www.youtube.com/watch?v=llAcqwD2TBY)


この方式は造形速度に特徴があり、レーザーパウダーベッド方式に比べて、2022年現在は約3倍のスピードで造形可能で、2025年には約7倍高速になる、とSeurat Technologiesは主張しています。また、この金属3Dプリンターは、100%再生可能エネルギーを動力源として稼働させており、製造業の脱炭素化に貢献すると言われています。


主要な顧客は航空宇宙、自動車、家電等のメーカーを想定しており、2022年に初の商業製品化を予定しています。コスト目標としては、300ドル/kgを目指し、2025年までに150ドル/kgまで低減することを目指しています。


Elementum 3D

地域:アメリカ

創業:2014年

概要:

シリーズBラウンドで1,000万ドル(≒14億円)調達。同社は3Dプリンター用の金属粉末材料を販売しており、鉄・ニッケル合金・銅合金・アルミニウム合金等、幅広い種類を取り扱っています。


顧客は航空宇宙・防衛関連企業が多く、NASA、Ball Aerospace&Technologies、Northrop Grumman等が顧客の一部として公開されています。


同社が公開するブログによれば、「商業利用可能な唯一の航空宇宙グレードのアルミニウムを提供している」を書かれており、顧客は同社のアルミニウム合金原料を用いて、衛星・ロケットエンジンまでプリントしているそうです。


Teton Simulation Software

地域:アメリカ

創業:2016年

概要:

Markforgedに買収されたTeton Simulation Softwareは、金属3Dプリンター用のシミュレーションソフトウェアを開発しています。顧客は、設計・テスト・最適化・検証まで同社のソフトウェア上で実行し、最適なパラメータ発見までにかかる時間を短縮することができるそうです。


Divergent Technologies

地域:アメリカ

創業:2014年

概要:

シリーズCラウンドで1億6,000万ドル(≒220億円)を調達。同社は、自動車部品メーカー向けにカスタマイズされた部品供給サービスを提供しています。


ソフトウェアに部品の体積、および接合部分の情報(形状・負荷等)を入力すると、最適な形状・重量・強度・コストの部品が自動的に算出される仕組みになっています。推奨された部品を選択すると3Dプリンターが製造します。


同社は顧客ターゲットを自動車業界に絞っています。新商品開発・モデルチェンジに合わせてコスト・重量の目標が変わった時、クイックに新しい自動車の設計を検討するにあたって同社の金属3Dプリンターおよびソフトウェアが役立つそうです。具体的な企業名は公表されていませんが、すでにEVメーカー数社と提携済みと書かれています


Aixway3D

地域:中国

創業:2021年

概要:

エンジェルラウンドで数千万元(≒数億円)を調達。さまざまな種類の金属(鉄、ニッケル、チタン、コバルト、タングステン、金、etc)に対応したレーザーパウダーベッド方式の金属3Dプリンターを提供しています。


同社の強みは造形精度の高さにあり、これまでのレーザーパウダーベッド方式の数十〜数百μmレベルから、同社は2〜5μmレベルまで向上できるそうです。なお、精度の高さを支えているのは、粉体粒子同士が凝集しないよう工夫した粉体散布工程技術、レーザー照射位置の精密制御技術にあると書かれています。


なお、創業者である沈李耀威氏は、フラウンフォーファー・レーザー技術研究所で長年レーザー研究を続けた方で、その技術をもとに高精度造形を実現しているそうです。


初期顧客として航空宇宙・医療等が挙げられていますが、まだ商用販売段階にはなく、今回の資金調達で製品開発を進めるようです。




金属3Dプリンター市場においては、M&Aの動きがしばしば見られることが1つの特徴です。プリンターの種類によって対応可能な金属種類・造形サイズが異なるため、プラットフォーマーがM&Aによって統合的な金属3Dプリンティングソリューションをつくっていく動きが見られます。


また、多くの企業が、少量多品種・ハイエンド帯の部品が必要となる航空宇宙・医療等の業界を顧客ターゲットにしていますが、今後は自動車業界に特化して業務全体を効率化するDivergent Technologiesのように、バーティカル金属3Dプリンティングサービスのようなものが、増えていくのではないかと思いました。


金属3Dプリンターは、これからさらに造形精度・スピード向上・コスト低減が進んでいくと思いますが、今後はそれに加えて、「どの市場の」「どの課題解決に」利用するか、という事業開発観点で注目していきたいと思います。


IDATEN Ventures(イダテンベンチャーズ)について

フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の進化・変革を支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。


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