今回は触覚センサについて調査を実施しました。COVID-19以降、ロボット活用ニーズの拡大や、メタバースに対する期待の高まりもあり、今まで以上に触覚センサに注目が集まっていくかもしれません。
そこで、触覚センサの原理やスタートアップの動き、これからの発展可能性についてまとめました。
(Source: Stable Diffusionで「robots empowered by haptics sensing technology」という筆者のテキスト入力に対して出力された画像)
1.触覚について
触覚センサについて調べる前に、まずは触覚そのものについてまとめてみました。触覚は生物にとって外界を感知する基本機能として不可欠な感覚です。皮膚には「触覚受容器」というものがあり、皮膚を通じて得た物理刺激を触覚受容器が化学シグナルに変換し、それが感覚神経を通して中枢神経に伝わることで触覚が生み出されている、と言われています。
例えばヒトの指腹部(指の中央の腹の部分)の内部には、以下の図のように触覚受容器が配置されています。物体の硬さを測る時は表皮の下側に突き出た「メルケル触盤」が、物体の質感を測る時にはメルケル触盤の付け根に位置する「マイスナー小体」が関与している可能性があると言われています。
(Source: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjws/75/4/75_4_230/_pdf)
あえて「可能性があると言われている」と記述したのは、今でも触覚に関する仕組みは正確に因果関係が解明されていない場合があるためです。参考にした論文にも、そのように表記されています。
ちなみに、全身で上記の感覚受容器が107個、大脳皮質への神経伝達繊維は106本あり、神経伝達繊維1本あたり10個の感覚受容器を管轄していると言われています。また、通信容量の観点では、大きい順に、視覚(107 [bit/s])>触覚(106)>聴覚(105)>嗅覚(103)=味覚(103)となっているそうです。単純計算、全身の皮膚感覚が消えてしまうと、聴覚を失ってしまった場合に比べて、取得できる感覚情報が1/10になってしまうことになります。
感覚受容器が107個あると言っても、全身の皮膚感度は一定ではなく、偏りがあります。以下の図は「触2点弁別閾」(同時に2点に刺激を与えた時に、それが1点ではなく2点であると認識できる2点間の最短距離)を表しています。この閾値が大きいほど鈍感、小さいほど敏感、と言えますが、最も敏感なのが中指、最も鈍感なのが脹脛(ふくらはぎ)、肩となっています。
(Source: http://www.rm.mce.uec.ac.jp/lecture/mech/H19PDF/TactileSensing.pdf)
上記の「触2点弁別閾」は「空間分解能」を測る指標ですが、「時間分解能」(2つの刺激提示時間間隔が短くなった場合にそれが2つであることを区別できる最小時間間隔)、「表面凹凸判別」、「ずれ判別」等、皮膚感覚が豊富な機能を有していることがわかります。ちなみに、「ずれ判別」に関して、ヒトの皮膚感覚は、大きい順に「縦のずれ」>「斜めのずれ」>「横のずれ」に対して敏感であるそうです。つまり、指先を物体に当てて、その物体を同じ速度、同じ距離動かした場合に、横方向よりも縦方向に動いたことを細かく検知できるということになります。
また、温度に対する皮膚感覚において、「冷」と「温」で違いがある点も興味深いです。ヒトの温度感覚は皮膚上の冷点と温点によって検出されますが、手の表面1cm2あたりに冷点が1~5個存在するのに対して、温点は約0.4個しかないそうです。つまり、ヒトは「温」よりも「冷」に対して敏感ということになります。
このように、生物の皮膚感覚はさまざまな検知機能を備えており、生物が持つ触覚を工学的に再現することのハードルは非常に高いと言われています。とはいえ、そんな中でも徐々に触覚センサの開発は進んできています。次の章で、触覚センサの原理をご紹介します。
2.触覚センサの原理
まず、広義の触覚センサは大きく2つに分類できます。それは「対象物に触れる前」と「対象物に触れた後」に動作するセンサです。前者を「近接覚センサ」、後者を「狭義の触覚センサ」と呼ぶことにします。
近接覚センサ
狭義の触覚は「接触するまで対象物を検知できない」という課題を抱えています。そこで、対象物に近い位置にいる、という近接覚が必要になります。例えば、ロボットが動く時、近接覚がなければ、「物体近傍で速度を落とし、ソフトタッチモードに切り替える」ことができず、勢いよく対象物にぶつかってしまう可能性があります。この「近接覚」を実現するセンサには、大きく光学式と静電容量式の2種類があります。
(1)光学式近接覚センサ
光学式近接覚センサには、①三角測距方式、②TOF方式、③フォトリフレクタ方式があります。
①三角測距方式
対象物に向けて光を当て、対象物にぶつかって反射した光素子の入射角を測ることで、対象物までの距離を計算する方式です。この方式は、最小検出距離が数cmと大きいことが欠点として挙げられています。例えば医療ロボットに用いられる場合、より高精度に距離計測することが求められます。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p41)
②TOF方式
TOFはTime of Flightの略で、光の往復時間から対象物までの距離を測る方式です。TOF方式は応答速度に課題があると言われています。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p42)
③フォトリフレクタ方式
フォトリフレクタ方式はTOF方式に少し似ていますが、光の「時間」ではなく「強度」に注目している点が異なります。対象物までの距離に応じて反射光強度が変化する特性を利用しています。応答速度が早いという特徴を持つ一方、対象物の反射率や外乱光の影響を受けるリスクがあります。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p44)
(2)静電容量方式
静電容量方式には自己容量方式と相互容量方式の2種類があります。両者の違いについては、以下の図をご参考ください。静電容量方式は、形状の自由度が大きいこと、検出範囲が広い等の強みを持つ一方で、対象物の形状・材質によって電界の変化量にバラつきがあること、対象物の空間位置を把握しづらい等の弱みを抱えています。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p47)
狭義の触覚センサ
こちらは「触れた後」の感覚を工学的に再現したセンサになります。狭義の接触センサは、多少の違いはありますが、基本的には「対象物に接触した際に得た物理変化を電気変化に変換し」、「検出・信号処理・伝送する」という仕組みになっています。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p8)
この構造の中で、上図の青枠で囲まれている変換器において、以下のような計算式で静電容量の変化量が算出されています。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p9)
この「どれくらい凹んだか」という物理変化量を読み取る方式として、電気抵抗方式、静電容量方式、光方式等が挙げられます。
(1)電気抵抗方式
電極間を流れる電気の抵抗値変化によって圧力を検知する方式です。
①感圧導電ゴム方式
以下の図では、感圧導電ゴム(ゴム中に導電粒子を均一に拡散させたもの)が電極で挟まれています。圧力が加わると、粒子間の距離が縮まり、電気が流れやすく(抵抗値が低く)なります。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p14)
この方式は、薄く柔軟で加工が容易であること、衝撃に強いこと等が強みとして挙げられる一方、ヒステリシス特性(ある系の状態が、現在加えられている力だけでなく、過去に加わった力の履歴に依存して変化するという特性)があることで、定量的な計測には不向きであると言われています。
②接触抵抗値変化方式
感圧導電ゴム方式に似ていますが、「導体・電極の接触面積」と「抵抗値」が反比例する現象を利用しています。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p21)
(2)静電容量方式
電極に圧力がかかると電極間の弾性体が変形し、電極間を流れる静電容量が変化する原理を利用した方式です。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p24)
この方式は、構造がシンプルであるという強みを持つ一方で、電磁ノイズ、温度の影響を受けやすいと言われています。
(3)光学方式
柔軟体の内部に発光・受光素子を対に配置し、外部圧力による柔軟体の変形に伴う受光量・光透過性の変化を計測することで、外部圧力を算出する方式です。
(Source: https://www.docswell.com/s/m_shimojo/ZQDL35-2022-10-14-172544#p28)
光学方式という意味では、この他にも、対象物にわかりやすい模様(◯、△等)をプリントしておき、力が加わった時の模様変化をカメラで計測することで、加わった力の大きさを算出する方法も存在します。この方法は、内部に電気回路を設ける必要がないため、シンプルな構造になります。
狭義の触覚センサとしてご紹介したのはいずれも、触覚センサの中でも力覚センサ(力やトルクの大きさ、向きを検出することができるセンサ)です。冒頭の「触覚について」という章でご紹介した通り、生物の触覚は力覚だけにとどまりません。例えば、触覚センサの中には「すべり覚」に特化したセンサもあります。
「すべり覚」とは、「把持している対象物がすべり落ちそうになった時に検知する」センサ、ロボットハンドによる把持作業では、特に要求性能が高いセンサです。このセンサは、変位検出方式式、光学方式、高周波検出方式、負荷変化検出方式等、いくつかの種類に分けられます。
変位検出方式式
対象物をつかむ部分にローラ・ボールを配置し、回転量からすべり量を検出する。
光学方式
対象物をつかむ部分に光学センサを備え、すべりによる対象物表面の状態変化を検出する。光学式マウス(PC作業で利用するマウス)と似た原理。
微振動方式
つかんだ対象物がすべり出す直前に発生する特有の微振動を、加速度センサが検出する。
負荷変化検出方式
力覚センサから得られた負荷状態をモニタリングし、アルゴリズムによって負荷変化量を算出する。例えば、すべりが発生すると急速に負荷が減少する現象を利用する等。
この他にも、ヒトの皮膚が持っている触覚には、「ザラザラしている」「ぬめぬめしている」「ふわふわしている」等の、繊細な感覚が存在します。それらを工学的に再現しようとする技術が研究開発されている一方で、必ずしもヒトと同じように再現しなくてはならないわけではありません。当然、どんなシーンで、どの程度の予算感で、触覚センサを利用すべきなのかに応じて、実現すべき触覚機能も異なってきます。次の章で、実際に触覚センサを研究開発するスタートアップをいくつかご紹介します。
3.触覚センサスタートアップ
この章では、触覚センサを開発する日本のスタートアップを5社ご紹介いたします。創業年が古い順にご紹介していきます。
モーションリブは2016年に創業された企業です。慶應義塾大学ハプティクス研究センターからスピンアウトする形でスタートしました。モーションリブのホームページでは、同社が強みとする「リアルハプティクス技術」について、「ロボットに力加減を感じる能力と力加減による制御を行う能力を与え、ロボットがモノの感触を感じながら力加減をすることを可能にする技術」と定義されています。
リアルハプティクスには、前章の「触覚センサの原理」でご紹介した力覚センサのどれも用いられておらず、ソフトウェア的に力情報を取得している点が特徴と言えます。
「ロボットハンドが対象物に触れ、その反作用として力情報を取得し、力情報に応じてハンドの位置を制御する」、という一連の動きを滑らかに実現しようとすると、通常はロボットハンド先端に装着された力覚センサが得る「力」情報と、ロボットハンドの「位置」情報を、別の情報源から取得することになります。この仕組みには、2つの情報を連続的に処理しようとすると、時間のズレが発生してしまい得るという問題点があります。力情報・位置情報からハンド位置を動かすと、また力情報と位置情報が変化する、ということを繰り返すため、ぴったりと情報取得タイミングを合わせることの難易度が非常に高いそうです。
そこで、モーションリブは、ロボットのアクチュエータの回転角度という「位置情報」から、「力情報」をアルゴリズムが算出する、というシンプルな構造を採用しています。力覚センサが不要になることによって、ハードウェアのコスト・重量を削減でき、センサ破損リスクも抑えられることになります。また、知覚と制御のリアルタイム性が向上するというメリットもあります。
モーションリブはこの特徴を活かして、遠隔操作、センシング、自動化、VR・AR、という4つのソリューション開発を進めています。こちらの記事には、同社のセンサを用いた遠隔操作を体験した方の、「時間遅れが体感ではまったくないので、作用側の機械と完全につながっているように感じる」という感想が掲載されています。
これらの機能を1枚のチップ上に集約させたのが、モーションリブがメインプロダクトとして販売する「AbcCore」です。AbcCoreを用いたシステム構成イメージとして以下の図をご参考ください。
(Source: https://www.motionlib.com/product/abc-core/)
XELA Roboticsは2018年に創業された企業です。早稲田大学菅野研究室からスピンアウトする形でスタートしました。同社は、「uSkin」というコンパクトな触覚センサを、さまざまなロボットハンドに組み込んで提供しています。ロボットハンド自体は協業パートナーの製品を活用しているようです。
センサの構造、使用イメージをお持ちいただくにあたって、こちらの動画をご参考いただくと良いかと思います。
(Source: https://youtu.be/Ns1NwdbBdkk)
XELA RoboticsのuSkinは、複数のセンサをチップ上に配置し、そのセンサが得た圧力分布から、「どこに」「どの程度」力が加わっているかを解析します。圧力を測る方式について詳細は明かされていませんが、こちらの論文を見ると、感圧導電ゴムを用いた電気抵抗方式に近いのではないかと思います。
こちらの記事によると、uSkinの強みは、シンプルな構造を採用したことによって低コストでセンサを製造できる点にあり、競合製品の約半額程度で提供可能と書かれています。実際にどの程度普及しているのかわかりませんが、主に物流倉庫における包装・ピッキング用ロボットでの利用をターゲットとしているようです。
レイセンスは2020年に創業された企業です。東北大学田中研究室で研究されていた「イベントドリブン通信システム」を活用してロボット技術を向上させる目的でスタートしました。
レイセンスが解決しようとしている課題は「触覚センサの配列における二律背反性」です。①触覚センサを実装するにあたって、各センサと情報処理部を一本一本配線で接続した場合、情報伝達は早くなるものの配線重量が増大し、ノイズ発生リスクが高まります。②一方で、1本の配線に各センサを連続的に配置し、わずかに時間をずらして各データを送信すると、重量とノイズ発生リスクは抑えられるものの、リアルタイムな情報伝達が難しくなります。この二律背反性を解消する技術が「イベントドリブン通信システム」です。
イベントドリブン通信システムは、一言で言うと、「イベントが発生した時だけデータ伝送を行われる」仕組みです。上記②は「各センサの情報を全て集めようとするから渋滞を抑えるために情報伝送タイミングをずらさなければならない」ため、イベントドリブン通信システムは「意味のない情報はエッジ側で抹消し、一定の閾値を超えたデータだけを中央に伝送する」仕組みを構築しています。以下のイメージ図をご参考ください。
(Source: https://reisense.co.jp/core-technologies/)
このイベントドリブン通信システムの採用によって、1チップ上に多様なセンサを搭載しても時間ずれが生じにくいというメリットを得ることができます。実際に、レイセンスは触覚センサだけでなく、加速度センサ・角速度センサ・においセンサ等を1本の配線上に搭載しても対応できる、と紹介しています。
なお、センサ原理としては、静電容量方式が採用されています。
FingerVisionは2021年に創業された企業です。東北大学で研究されていた「視触覚」技術を実用化する目的でスタートしました。FingerVisionのセンサは、透明で柔らかい皮膚(のようなもの)を持つロボットハンドの内部に小型カメラが埋め込まれており、カメラの画像から触覚に必要な情報を取得します。文章だけだと少しイメージが湧きづらいため、こちらのサイトに掲載されている動画をご覧ください。
ユースケースとしては、多品種(形状の種類が多い)、柔軟物(押すと形状が変わりやすい)を取り扱うことの多い、食品の盛り付け作業等が挙げられています。
同社は、①センサー単体(柔らかい皮膚部分と内部カメラがセットになったものの)、②センサ+周辺制御機器、③システムセットアップサービス付きのサブスクリプションサービス、の3本立てでサービス展開しています。
Diver-Xは、2021年に創業された企業です。Diver-Xは、寝ながらの使用に最適化されたVRデバイスに加えて、形状記憶合金を用いた触覚フィードバックモジュールを開発しています。このモジュールを活用して、VRに最適な触覚センサグローブをつくろうとしているようです。
(Source: https://diver-x.jp/ContactGlove/)
同社が、ご紹介した他4つのスタートアップと異なる点として、Diver-XはVRに特化していることが挙げられます。そのため、触覚センサも、どのように指にフィードバックを与えるかが重要なポイントになっています。具体的には、センサが力情報を検知し、電子回路から電圧が印加されると、コイルが自己発熱して収縮し、ヒトの指の腹をうまく圧迫するように変化します。
この他にも触覚センサ関連のスタートアップはあるかと思いますが、長くなってしまうため、今回は5社といたします。
4.触覚センサのこれまでとこれから
最後に、こういった触覚センサが、どのような研究開発ステージにいるのか把握するため、こちらの論文を参考に触覚センサの歴史を振り返ってみたいと思います。
触覚センサは1970年代に研究が始まり、1980年代には触覚センサが盛んに試作されるようになりました。その時代の研究は、産業ロボットへの応用を目指して、ゴム表面の圧力を細かく検知することに重きが置かれていたそうです。しかし、触覚センサを活かしたロボットが実用化されたケースはつくられず、論文には1980年代後半には「触覚センサはあまりロボットの役に立たない」という論調が存在したと書かれています。普及に至らなかった背景として、「決められた環境で決められた種類の物体を運ぶだけであれば力覚は必要であっても分布した皮膚感覚までは必要ない」と書かれており、要するに、ぴったり当てはまるニーズが見つけられなかったと考えられます。
1990年代に入って、多品種小ロットの物体を扱うニーズが増えてきても、どちらかというとコンピュータビジョンを始めとする他の計測センサが優先され、あえて機械的接触に晒されて摩耗する触覚センサが重要視されることはなかったと書かれています。
ところが、2000年代以降になって、産業用ロボットではなく、繊細な皮膚感覚を持つサービスロボットに対する期待が高まり、触覚センサの価値も見直され始めました。例えば、介護ロボット・医療ロボットは、まさにその代表例です。そういった背景もあり、2007年の論文には「ここ数年、触覚の研究者は急増してきている」という記載があるほど、研究開発が盛んになりました。
この2007年の論文では、「今後」(つまり2008年以降)の研究開発の方向性として3つ挙げられています。それが、以下の3つです。
①ロボット用全身型皮膚センサ
②主にVR向けの触感センサ
③自動作業ロボット用指先センサ
①は大面積で利用可能な丈夫で柔らかい素材の開発、②は「ぬめぬめ」「ふわふわ」等の抽象的な皮膚感覚を再現する技術、③は触覚と制御の両立、が重要になります。
こうして見てみると、今回ご紹介したスタートアップも、上記3つの方向性に沿って進んでいると言えなくもなさそうです。特に③の指先センサは、医療・介護分野での実用化を目指し、その実績づくりとして産業利用(例えば、食品現場でピッキングに利用する等)を進める、というロードマップを、各社が描いているように見えます。
同時に、また違う文脈として、近年メタバース領域が注目されていることから、②の技術開発が加速するかもしれません。実際、2021年12月には、Meta(旧Facebook)が、メタバース空間上の物質に触った感触を再現する触覚グローブの試作品を公開しました。Metaは、この触覚グローブ開発において、発熱量の小さい新たなアクチュエータを採用し、そのアクチュエータを制御するプロセッサも開発したそうです。バーチャル世界で現実世界に近いリアルな体験が求められるほど、それを実現するために必要な触覚の要素技術も研究開発が進んでいく可能性があります。
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