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  • Shingo Sakamoto

自動運転の目を司るセンサーとLiDARへの期待


今回の記事は以下のような読者を対象としています。

・自動運転 / ロボット / ドローン等に興味はあるものの、LiDARやRADARについて簡単にまとまった記事は見たことがないという方 ・自動運転開発で重要なセンサーについて大まかに理解したい方


(Source: https://pixabay.com/ja/photos/%E4%BA%A4%E9%80%9A%E6%B8%8B%E6%BB%9E-%E8%BB%8A-%E9%83%BD%E5%B8%82-%E5%B8%82-4522805/)




自動運転のボトルネックとLiDAR


"Anyone relying on lidar is doomed. Doomed!"

(LiDARに頼っているやつに未来はない、ないぞ!)


このセリフは、イーロンマスクが2019年4月22日に行われたテスラの株主向けイベントで発したものです。この言葉を聞いて想定されるリアクションは、驚愕・不信・呆れ・共感などさまざまなものでしょう。それほどこのコメントにはインパクトがあります。


日頃からセンサーについての技術革新を追っている人でなければ、「LiDARって使えないんだな」で終わりですが、技術に関心を持っている人々からすれば、この発言は非常にControversialなものです。



自動運転は長らく開発が行われていますが、レベル5(完全実用化)の完成時期を正確に見通せている人はまだいません。それほど技術的にも倫理的にも難しいテーマです。


実用化を妨げる論点には、100万回に1回起こり得る事故の責任を誰が取るのかという倫理的なものから、具体的な技術問題まで幅広く残っていますが、技術的課題の中でも1つの大きなテーマになっているのが「センサー」です。


そこで関係してくるのが冒頭の発言です。これまでLiDAR技術は自動運転の目として有力候補に挙げられてきました。アメリカを中心にカナダ・ドイツ・イスラエルなど世界中のLiDARスタートアップが積極的に大型資金調達を行い、市場を期待させてきたからです。マスクは、こうした流れの中であえて「爆弾」発言し、物議を醸しました。なぜ物議を呼んだのか、背景にはセンサー技術のどんな発展が関係しているのか、この記事でキャッチアップしていきましょう。



LiDAR?RADAR?カメラ?各センサーの特徴


ドローンや自動運転のニュースを日頃から熱心に読んでいる方々は、LiDARやRADARというアルファベットを目にしたことがあると思います。まずはこうした言葉の理解から始めましょう。


LiDARはLaser Imaging Detection and Rangingの略称で、邦訳すると「レーザーによる画像検出・測距」となります。近赤外線を使った距離計測技術です。


RADARはRadio Detecting and Rangingの略称で「電波探知・測距」と訳されます。


ここで改めて、簡単に電磁波の整理をします。

(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h30kisoshiryo/h30kiso-01-03-05.htmlより)


もうすこし細かい分類がこちらでも整理されています。ご参考ください。


RADARに用いられるのは波長が1mm程度の電波で、LiDARに用いられるのは波長が900nm(0.9μm)前後の近赤外線です。一般的なカメラが捉える可視光線は波長が380nm〜780nmです。



各センサーの特徴を整理してみましょう。RADARとLiDARの仕組みは基本的に同じで、対象物に向けて電磁波を発して跳ね返ってくるまでの時間から距離や位置などを計測します。


RADAR

RADARは3つの中で最も波長が長く、相対的に遠くのものを検知することができます。雨・雪などの天候影響を受けにくく、暗所でも対象物を捕捉できる一方で、反射率が弱いものや近距離の対象物は見過ごしてしまうというデメリットがあります。

LiDAR

LiDARは、RADARに比べると測定距離の短い対象物がターゲットになりますが、その特徴として、パルス幅(レーザーを発出する間隔)が短く、分解能(対象物の検知解像度)が高いことが挙げられます。ちなみに、LiDARには短距離・中距離・長距離がありますが、長いものだと200m以上先の対象物を補足できます。

カメラ

カメラは可視光線という文字通り「人間に見える」波を捉えますが、雨・雪などの悪天候下や、夜間・影などの暗所では対象物の認識精度が低下します。この中で最も「人間らしい」画像認識を行うと言えます。認識できる対象物までの距離がこれらのセンサーの中で最も短くなります。


このように各センサーはそれぞれ異なる特徴を持っているので、自動運転の開発現場では、「センサーフュージョン」といって、各センサーの弱みを他のセンサーでカバーしながら併用する、という手法が採られています。実際に、トヨタの自動運転車両のセンサー構成を示している一例です。


(https://www.sbbit.jp/article/cont1/36559より)


カメラが白線を検知し、ミリ波レーダーが遠方の障害物を事前検知、そして全方位にLiDARを使って周辺の障害物を検知しています。


ここまででセンサーの役割をざっとご理解いただけたでしょうか?各センサーの技術にはもっと細かい分類があるのですが、それはまた別の機会にとっておきます。



揺れるLiDARへの評価


カメラとRADARの中間的なポジションに位置するLiDARは使い勝手が良く、各社がこぞって開発競争を進めています。


実はこれまで、LiDARはコストと重量という2つの弱点を持っていました。LiDARの先駆けとも言える米国のVelodyneは間違いなくリーディングカンパニーですが、2010年にLiDARを開発した時は約800万円で、とても自動車やロボットに載せられるようなモノではありませんでした。コストの問題だけでなく、当時は360°の視野を確保するためにモーターで回転させながら光を照射するという「機械回転方式」を採用していたため、重量が大きかったのです。


しかし、価格は徐々に下がってきています。2019年にはLuminarが約5万円ほどのLiDARを発表しました。 また、2020年のCESでVelodyneが発表した新型LiDAR「Velabit」は量産時の想定コストが約1万円程度を目標に設定されています。(ただし、このLiDARは低価格にする代わりに、高価なLiDARに比べて測定距離が半分以下、視野角が1/6になっています。)


またサイズについても、チップに回転するミラーを埋め込んだMEMS方式の開発によって、手のひらに乗る程度まで小型化しました。


こうしたLiDARをめぐる技術進展はめざましく、まさに2020年は市場の期待を反映した年になりました。先述のVelodyneはSPACを通じて上場し、大型の資金調達を行いました。Velodyneの関係先には名だたる事業会社が名を連ねており、Ford, Baidu, Hyundai, Nikonなどが大型サプライヤー契約を結んでいます。


*ちなみに、SPACについては、こちらの記事を合わせてお読みください。


もう1社、2020年12月(本当につい最近!)にSPACを通じて上場したのがLuminar TechnologiesというLiDARメーカーです。CEOのオースティン・ラッセルは弱冠25歳で、創業からわずか8年でインテル・ボルボなどの企業とサプライヤー契約を結ぶ会社に育て上げました。


この他にも、中国の禾賽科技・RoboSense、イスラエルのInnoviz、アメリカのCepton・Quanergy、カナダのLeddar Tech、ドイツのContinental、フランスのValeo、など各国のスタートアップが数百億規模で資金調達を進めています。いずれもこの3年間で起きていることです。




そんな中で、イーロンマスクの発言はどういう意味を持つのでしょうか?テスラの責任者の発言はこう続きます。「(現在イベントを開催している)この会場に皆様が運転してきたときは目からの映像のみを頼ってきたはずで、目からレーザー光線を打ち出して他の車両との遠近感を計りながら運転していた人間はいないはずだ。」


テスラはあくまでカメラを通じた画像処理に機械学習を加えることで自動運転を進めようとしているようです。しかし、2016年に起こした死亡事故の原因は、日光に照らされて白化したトレイラーを「トレイラー」と認識できなかったことでした。カメラを中心に周辺を認識しようとするとこうしたリスクもある、という教訓になります。



ではLiDARが万能かというとそういうわけでもなく、依然として価格と検知精度のバランスに課題を抱えています。各社は、自動運転車だけでなく、固定監視センサー・ロボット・モバイルスキャナーなどのニーズを捉えて拡販し、量産によってさらなる低価格化を図っているようです。ただしLiDARの開発スピードはすさまじく、各社が大型調達した資金を使って、さらに高性能・低価格化を進めていくことは確実でしょう。


これまで世間を常に驚かせてきたイーロンマスクですから、果たして誰が正解だったかわかるのはもう少し先になりそうです。2021年もLiDARには要注目です。


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