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  • Shingo Sakamoto

空飛ぶクルマ・大型ドローン時代の到来:増え続けるeVTOLスタートアップまとめ

近年、eVTOL(electric Vertical Take Off and Landing、電動垂直離着陸機)開発企業が次々に設立され、資金調達を行っています。


近年よく耳にするドローンとは、一般的に無人航空機(UAV=Unmanned Aerial Vehicle)のことを指し、その中で垂直離着陸(VTOL=Vertical Take Off and Landing)するものをVTOL型ドローンと呼びます(単にドローンと言った場合、水平に離着陸するものもあります)。また、ドローンは「無人」を想定されており、「有人」の場合は空飛ぶクルマ(UAM=Urban Air Mobility)と呼ばれたりしますが、これもドローンと同じように、VTOL型とそうでないものがあります。eVTOLとは、電気で動くVTOL型のドローンや空飛ぶクルマを指す言葉になります


以前国内外の大型ドローンスタートアップに関する記事で、eVTOL機体を開発する海外企業としてVolocopter、Lilium、Elroy Air、Sabrewing Aircraftの4社を取り上げましたが、それら以外にもたくさん登場しているため、今回はその他のeVTOL企業をご紹介したいと思います。


(Source: https://pixabay.com/photos/airplane-sunset-clouds-sky-1149792/)



調査方法としては、労働集約的ではありますがさまざまなソースを駆使してeVTOLを開発している企業を対象に、ここはリストアップしておいた方がよさそうだと思ったところを紹介する形にします。外部から資金調達を行っているスタートアップが多くなっていますが、中には資金調達情報が不明なところもあります。その点はご容赦ください。



数が少し多くなります。以下簡単な表記ルールを定めておきます。

  • 創業年が新しい企業からご紹介

  • 開発するeVTOLが複数種類ある場合は、ペイロード(搭載重量)× 飛行距離が最も大きいスペックのeVTOLをご紹介

  • ペイロードの表記方法は、公式ホームページやニュースサイトに掲載されている「重量」 or 「人数」に合わせる。ただしパッと見でどれくらいか比較しやすいように、人数表記の場合は1人70kgと仮定して重量も参考情報として書いておく。

  • 動力源がバッテリーの場合、基本はリチウムイオンバッテリーと想定。ただし、燃料電池と明示されている場合は、バッテリー(燃料電池)と表記することとする。

  • スペック情報は、基本的にホームページの情報を参考にするが、そうでない場合は参考にしたニュースサイトなどのURLをハイパーリンクで付与する。



TCab Tech

創業:2021年

地域:中国

プロダクト:E20

動力源:バッテリー

飛行距離:〜200km

ペイロード:5人乗り(≒350kg)

資金調達:2021年9月にシードラウンドで約1,000万ドル(≒11億円)


Vinata Aeromobility

創業:2021年

地域:インド

プロダクト:-

動力源:ハイブリッド(エンジン発電&バッテリー)

飛行距離:100km

ペイロード:2人乗り(≒140kg)

資金調達:2021年5月にシードラウンドで100万ドル(≒11億円)を調達


Archer Aviation

創業:2020年

地域:アメリカ

プロダクト:-

動力源:バッテリー

飛行距離:100km

ペイロード:5人乗り(≒350kg)

資金調達:未上場時にシリーズAで5,600万ドル(≒60億円)、2021年9月にSPAC上場し、上場後に8億5,700万ドル(≒960億円)を調達


Eve Urban Air Mobility

創業:2020年

地域:ブラジル

プロダクト:-

動力源:バッテリー

飛行距離:-(製品スペックに関する情報が少ないのが特徴)

ペイロード:4人乗り(≒280kg)

資金調達:ブラジル大手航空機メーカーのEmbraelが設立したeVTOL子会社。2021年6月にイギリスの運行会社HALOから10月にブラジル大手運行会社Avantto社からそれぞれ100機の受注を発表。


Jaunt Air Mobility

創業:2019年

地域:アメリカ

プロダクト:Journey

動力源:ハイブリッド(エンジン発電&バッテリー)

飛行距離:〜130km

ペイロード:5人乗り(≒350kg)

資金調達:不明。2021年10月、AIRO Groupと合併してSPAC上場を計画している、と報じられている


MightyFly

創業:2019年

地域:アメリカ

プロダクト:MF-100

動力源:ハイブリッド(エンジン発電&バッテリー)

飛行距離:1,000km

ペイロード:45kg

資金調達:2021年4月にシードラウンドで510万ドル(≒6億円)を調達。


Craft Aero

創業:2019年

地域:アメリカ

プロダクト:-

動力源:ハイブリッド(エンジン発電&バッテリー)

飛行距離:〜1,600km

ペイロード:〜9人乗り(≒630kg)

資金調達:2021年7月にシードラウンドで350万ドル(≒4億円)を調達。Y Combinator卒業生。飛行距離とペイロードの数字が、他のeVTOL企業に比べて大きい。


Autoflight

創業:2019年

地域:中国

プロダクト:V1000CG

動力源:ハイブリッド(エンジン発電&バッテリー)

飛行距離:〜250km

ペイロード:〜300kg

資金調達:2021年9月にシリーズAラウンドで1億ドル(≒110億円)を調達



Advanced Air Mobility

創業:2019年

地域:スペイン

プロダクト:-

動力源:バッテリー

飛行距離:300〜500km

ペイロード:200kg

資金調達:不明


Gadfin

創業:2018年

地域:イスラエル

プロダクト:The Spirit X

動力源:バッテリー(燃料電池)

飛行距離:400km

ペイロード:〜100kg

資金調達:不明


Autonomous Flight

創業:2017年

地域:イギリス

プロダクト:Y6S(prototype)

動力源:バッテリー

飛行距離:130km〜

ペイロード:2人乗り(≒140kg)

資金調達:2021年4月にシードラウンドで500万ポンド(≒7億6,000万円)調達


AMSL Aero

創業:2017年

地域:オーストラリア

プロダクト:Vertiia

動力源:バッテリー

飛行距離:250km(燃料電池の場合は800km)

ペイロード:5人乗り(≒350kg)

資金調達:不明



Beta Technologies

創業:2016年

地域:アメリカ

プロダクト:ALIA-250

動力源:バッテリー

飛行距離:400km

ペイロード:6人乗り(≒420kg)

資金調達:2021年に2回資金調達を実施し、合計で5億1,100万ドル(≒570億円)集めている


Vertical Aerospace

地域:イギリス

創業:2016年

プロダクト:VA-X4

動力源:バッテリー

飛行距離:〜160km

ペイロード:5人乗り(≒350kg)

資金調達:2021年6月にシードラウンドで金額非公表で資金調達2021年9月に、日本の商社である丸紅株式会社が、200機のeVTOLを予約受注したと報じられた


Volansi

創業:2015年

地域:アメリカ

プロダクト:VOLY M20

動力源:バッテリー

飛行距離:560km

ペイロード:〜15kg

資金調達:2018年にシードラウンドで500万ドル(≒6億円)、2019年シリーズAラウンドで2,000万ドル(≒22億円)、2020年シリーズBラウンドで5,000万ドル(≒55億円)調達


Ehang

創業:2014年

地域:中国

プロダクト:EH216

動力源:バッテリー

飛行距離:30km

ペイロード:2人乗り(≒140kg)

資金調達:未上場時にシリーズAで1,000万ドル(≒10億円)、シリーズBで4,000万ドル(≒45億円)調達し、2019年NASDAQ上場後に4,000万ドル(≒45億円)調達


Wisk

創業:2010年

地域:アメリカ

プロダクト:The Cora

動力源:バッテリー

飛行距離:40km〜

ペイロード:2人乗り(≒140kg)

資金調達:不明


Urban Aeronautics

創業:2001年

地域:イスラエル

プロダクト:CityHawk

動力源:バッテリー(燃料電池)

飛行距離:150km

ペイロード:6人乗り(≒420kg)

資金調達:設立6年後に1度資金調達を実施(金額不明)、2020年にシードラウンドで4,000万ドル(≒45億円)、2021年9月に1,000万ドル(≒10億円)を調達



ちなみに、海外eVTOLご紹介という趣旨から少しずれますが、2021年9月末にHondaがeVTOL市場への参入を表明しました。現在公表されている情報は以下の通りです。


Honda

公表タイミング:2021年

プロダクト:HONDA eVTOL

動力源:ハイブリッド( エンジン発電&バッテリー)

飛行距離:〜400km

ペイロード:400kg〜



本当は飛行時間の情報も集めたかったのですが、企業によって公表していないところもあり、割愛させていただきました。価格については、公開している企業が少ないです。まだ開発途中のところも多く、これから商業製品として価格をどの程度に設定するのかは、注目ポイントとなりそうです。収益モデルとしては、単なる販売で終わらせず、空飛ぶタクシーとしてサービス売りしているところもあります。そういった企業は、スマホで空飛ぶタクシーの手配を予約できるスマホアプリとセットで宣伝したり、運行会社と資本業務提携を結んでいるケースがいくつかみられました。


今回は各eVTOLメーカーが提供する最上級スペックの製品(開発段階含む)を可能な範囲でご紹介しましたが、価格・用途によってどういうスペックにすべきかは変わってくるため、一概にeVTOLとしての良し悪しを比較するべきではないと思います。用途によっては、多少価格が高くても安心して長時間ヒトやモノを運ぶeVTOLが求められることもありますし、逆にいくらハイスペックでも担う業務コストの規模を考えると過剰である場合もあります。よって、eVTOLの世界に限らず当たり前のことですが、用途が求めるスペックに必要十分な機能を提供することが重要だと思います。


その前提で、あえて近年トレンドがあるとすれば動力源をハイブリッド(エンジン発電とバッテリー)にするアプローチです。今回ご紹介した企業18社に限ってみると、2018年以前に創業された9社は全てバッテリー(燃料電池含む)を動力源としており、2019年以降の9社のうち5社がハイブリッドです。新興企業ではありませんが、2021年にeVTOL参入を決めたHondaも入れると、2019年以降では10社中6社がハイブリッドを選択していることになります。(恐らく私が取りこぼしているハイブリッドeVTOL企業もあると思います。)


Hondaの公式リリースを見ると、以下のようなコメントがあります。

...オール電化によるeVTOLには、バッテリー容量による航続距離の課題があり、その現実的な稼働範囲は都市内移動に留まっています。これに対しHondaは、より航続距離が長く使い勝手の良い都市間移動を実現するため、電動化技術を生かしたガスタービンとのハイブリッドによるHonda eVTOLの開発に取り組み、市場拡大が見込まれる都市間移動の実現を目指します。

Hondaが計画するペイロード400kgで飛行距離400kmを実現しようとするとバッテリーでは電力量が十分ではない場合があり、その課題を打破するために電力量の大きいガスタービン発電機とバッテリーをハイブリッドで利用するようです。


IDATEN Venturesも、eVTOL関連企業に2社(大型eVTOLを開発するSabrewing AircraftとeVTOL向け動力システムを開発するエアロディベロップジャパン )に出資・支援させていただいておりますが、どちらも動力源をハイブリッドとするアプローチになります。ハイブリッドを選択するeVTOL企業は、多くの場合、大ペイロード・長距離飛行が必要となる用途向けに、機体および動力源の開発を進めていると思われます。ただし、一口にハイブリッドといってもさまざまな種類がありますが、ガスタービンを用いると明言しているHondaと異なり、ハイブリッドの仕組みを公表していない企業も(特に海外は)多いです。そういう意味では、ハイブリッドという名がついているからといって、ペイロード・飛行距離の点で本当にバッテリーに対して優位性があるのか、という点は精査が必要と思われます。


これから社会の中でeVTOLに求められる飛行距離・ペイロードは、どのような数字になっていくのか、引き続き注目していきます。また、これからもeVTOL企業は増えてきそうな気がするので、折を見てリストに追加していきます。


IDATEN Ventures(イダテンベンチャーズ)について

フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の進化・変革を支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。


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