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  • Shingo Sakamoto

建設プロジェクトの進捗管理プラットフォームについて:Buildotsを参考に

2022年5月、Buildots(「ビルドッツ」と読みます)というスタートアップがシリーズCラウンドで6,000万ドル(≒80億円)の調達に成功しました。同社は、作業者のヘルメットに取り付けられた360度カメラの撮影画像をAIで解析し、建設プロジェクトの進捗を管理するプラットフォームを提供しています。


「2022年の建設スタートアップトレンド」というタイトルでブログを書いた時も、Buildotsに似たサービスを展開するスタートアップがいくつかあり、競争が激しくなってきているようです。


そこで、今回はカメラ画像を用いて建設プロジェクトの進捗を自動的に管理するプラットフォームについて深堀りしていきたいと思います。


なお、記事の中で、為替レート(ドル・円)は2022年6月24日時点のものをベースに計算しています。

(Source: https://pixabay.com/ja/photos/建物-建設現場-夕方の雰囲気-1895879/)


Buildotsのプラットフォーム

まず初めに、Buildotsのサービスイメージをつかむために、こちらの動画をご覧ください。

(Source: https://www.youtube.com/watch?v=1u1hhrMVBvw)


Buildotsは、戸建住宅から巨大複合施設に至るまで、さまざまな規模のプロジェクトに対応しています。顧客は以下のようなステップでプラットフォームを利用します。

  • まず、Buildotsが提供するクラウドソフトウェアプラットフォーム上で、設計図からデジタルツインを作成します。

  • 続いて、同じプラットフォームに施工スケジュールを入力していくと、デジタルツインとスケジュールが紐付けられます(例えば、デジタルツイン上の部屋Xの部品Yは、何月何日に据付けされる予定、等)。

  • 実際に建設が開始してからすべきことは、作業者がカメラ付きヘルメットを被ってこれまで通りに作業を行い、1日の終わりにヘルメットからカメラを取り外し、カメラをコンピュータにつないで画像データをアップロードするだけです。

BuildotsのAIは、アップロードされた画像を解析し、元々立てたスケジュール通りにプロジェクトが進んでいるかチェックし、計画との差異をプラットフォーム上に表示します。例えば、以下の画像からは、2022年5月22日〜5月26日の計画に対して、実績が遅れをとっていることがわかります。

(Source: https://buildots.com/site-ops/)


Buildotsが解決する課題

これまでの建設プロジェクト管理プラットフォームにおいて、進捗状況のアップデートは、人間を介した情報伝達によって行われていました。例えば、その日に施工した現場を作業者がスマホで撮影して画像をアップロードする、あるいは口頭やドキュメントで報告する、等のやり方です。特に後者の場合、特に建設プロジェクトは関わる請負業者の数が多いため、誰かが誰かに紙・口頭で進捗を報告し、それを聞いた人がプロジェクトマネジャーに報告し、という伝言ゲームが行われる場合もあります。こういった情報伝達方法の課題は「ファクトチェック」に時間や労力がかかることです。


プロジェクトマネジャーは、各現場から進捗報告を受けたとしても、実際はどれくらい進捗しているのか、直接現場を確かめに行かなければならないことがあります。報告に含まれていない遅れやミスが、その後のプロジェクト全体に影響を与えてしまう可能性があるためです。


Buildotsは、こうしたプロジェクトマネジャーの現場チェック、あるいは作業者が進捗報告にかけている手間を大幅に削減する、という価値を提供しています。Buildotsのホームページには、「The data don’t lie(データは嘘をつかない)」「Objective data is right here(正確なデータがここにある)」というメッセージが繰り返し登場します。



これまでの事業進捗と資金調達について

Buildotsの創業は2018年で、創業メンバーはイスラエル国防軍で出会ったRoy Danon氏・Aviv Leibovici氏・Yakir Sundry氏の3名です。この章では、創業から現在までの事業進捗と資金調達状況についてご紹介します。


〜シリーズAラウンド

2020年7月、シリーズAラウンドで1,600万ドル(≒22億円)調達したタイミングで、過去にシードラウンドで300万ドル(≒4億円)調達していたことが明かされました。2020年10月のニュース記事には、同社のサービスがすでにヨーロッパ最大の建設会社2社に利用されており、そのうち1社はイギリスのWates社であると書かれています。Wates社は、いくつかの大型住宅建設プロジェクトにBuildotsのプラットフォームを利用しているそうです。


〜シリーズBラウンド

2021年8月、BuildotsはシリーズBラウンドで3,000万ドル(≒40億円)調達しました。この時のニュースによると、同社のプラットフォームはすでにアメリカ・イギリス・スイス・中国等の国で利用されています。また、過去1年間に売上が四半期ごとに50%成長し、世界の建設会社トップ10社のうち4社が同プラットフォームを採用していると書かれています。


こちらの記事を読み解くと、Buildotsのプラットフォームは、当初「技術的に難しい」と思われていましたが、シリーズBラウンドを実施する時には、技術的に顧客の要望にきちんと応えられることが証明されたようです。同記事には、同社のAIが画像解析を通じてデジタルツインと現場の差異を即座に検出することができるようになっている、と紹介されています。


〜シリーズCラウンド

2022年5月、BuildotsはシリーズCラウンドで6,000万ドル(≒80億円)の調達に成功しました。こちらのニュース記事によると、2019年〜2021年の2年間で売上は毎年10倍のペースで成長し、2022年の売上も2021年比で4倍となることが見込まれているそうです。また同社は2022年に入ってから、請負業者から発注者に対する支払い請求額の妥当性をチェックする機能を追加しました。これから、支払い管理についてもサービスを拡大していくようです。



競合

冒頭でも記載しましたが、Buildotsと似たようなプラットフォームを展開するスタートアップがいくつもあります。ここでは一部をご紹介します。


OpenSpace

OpenSpaceは2017年にアメリカで創業されました。Buildotsと類似するプラットフォームを展開しています。ヘルメットに取り付けられた360度カメラが施工現場を自動撮影し、AIが画像を解析することで、顧客はプロジェクト進捗を自動管理することができます。


同社は、累計1億9,000万ドル(≒250億円)調達しています。2022年3月のニュースによると、すでにOpenSpaceのプラットフォームは、75ヵ国以上、10万以上のプロジェクトで利用されており、創業から現在までの間に、売上が毎年2倍〜3倍のペースで成長しているそうです。


Avvir

Avvirは2017年にアメリカで創業されました。同社もBuildots・OpenSpaceと類似のサービスを展開していますが、BuildotsやOpenSpaceとの違いは、顧客がカメラだけでなくレーザースキャンも利用することができる点にあります。レーザーを用いて、より精緻にエラー発見できることを価値としているようです。同社は、累計1,300万ドル(≒18億円)調達しています。


StructionSite

StructionSiteは2016年にアメリカで創業されました。プラットフォームのコンセプトは、他の企業と似ています。現場作業員はスマートフォンと接続された360度カメラを持って歩くだけで、プラットフォーム上のデジタルツインと紐ついた画像をアップロードすることができます。AIが画像を解析し、デジタルツインと現場の進捗状況を比較します。例えば、以下のサイトでは、同社のAIが画像から軽量鉄骨と石膏パネル(および、その数量)を自動認識している様子が紹介されています。


日本からは大林組がStructionSiteに資本参加しており、日本の数百のプロジェクトでStructionSiteが利用されているようです。こちらのブログによると、利用料金について、もちろんプロジェクト規模によって異なりますが、プロジェクトあたり年間60〜90万円と紹介されています。


Holobuilder

Holobuilderは2016年にアメリカで創業されました。作業員が360度カメラを手に持って移動しながら施工現場を撮影すると、AIが画像解析を通じてデジタルツインと現場の進捗状況を比較します。2021年にFARO Technologiesという企業に評価額3,400万ドル(≒46億円)で買収されました



この他にも、SiteAware、OnSiteIQ、Disperse、Indus.aiなど、類似プラットフォームを展開するスタートアップがあります。


競合との差別化について

こうして調べてみると、各プラットフォームの基本的な提供価値は似通っており、どこで差別化されているのか理解するのが難しいテーマです。一方で、近しい時期に創業された企業間で累計資金調達額、売上規模には差があるようです。


使い勝手についてはどうしても実際に利用してみないとわからない部分もありますが、現場作業者の手間という点で違いがありそうだと感じました。


比較的大規模な資金調達に成功しているBuildotsとOpenSpaceは、カメラをヘルメットに取り付けるだけで画像を収集することができます。一方、AvvirやStructionSiteは、カメラを手に持って指定のルートを歩く必要があります。前者は「普段通りに働いていればいい」のに対して、後者は「データを集めるための別作業が必要」ということになります。


では、ただカメラをヘルメット(あるいは身体のどこか)に装着すれば良いのか?と思いますが、ヘルメットに装着されたカメラが撮影した画像にはいくつか課題がありそうです。例えば「手ブレならぬヘルメットブレ」「決められた位置・角度での撮影が保証できない」等が考えられます。また、作業者が意図的に撮影しない代わりに、恐らく短いスパンで何度もシャッターを切るように設定されているはずですが、その場合、画像の数が多くなり、データ容量が大きくなりすぎてしまう可能性もあります。


必ずしも画質が保証されていない膨大な枚数の画像から、いかに利用価値の高い画像を自動的に選別し、現場の進捗状況を正確に読み取るか、という技術に差があるのかもしれません。


また、画像をプラットフォームにアップロードする時に、どこまで手入力が削減されるのかも重要です。例えば、大規模マンション工事の場合、違う階で撮影されたのに画像は似ている場合、ソフトウェアが「階の違い」を自動的に認識できるかどうかによって、手間が変わってきます。


ヘルメットカメラに限らず、ドローンやロボットがカメラ撮影・レーザースキャンを実施するケースもありますが、その場合でも「既存のオペレーションを変えることなくデジタル化を実現できるか」という視点は非常に重要だと思います。


今回はこれで以上になります。今後は、日本でどの程度こういったサービスが利用されているのか、さらに調査していきたいと思います。

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