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  • Shingo Sakamoto

ワイヤレス給電技術の現状と、世界のスタートアップについて

昨今、ワイヤレス給電スタートアップの資金調達が進んでいるため、ワイヤレス給電について公開情報ベースで調査してみました。


今回は、ワイヤレス給電技術の現状と、世界で当該技術の開発を進めるスタートアップについてご紹介します。


(Source: https://pixabay.com/ja/illustrations/%e3%82%ac%e3%82%b8%e3%82%a7%e3%83%83%e3%83%88-%e3%82%a2%e3%83%97%e3%83%aa%e3%82%b1%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%b3-2142921/)



ワイヤレス給電とは?


ワイヤレス給電とは、有線を使用することなく、離れた場所に電力を伝送する技術を指します。日本語では「無線給電」、英語では「WPT=Wireless Power Transfer」と表現されることがありますが、この記事では「ワイヤレス給電」という表記で統一していきます。


ワイヤレス給電にはいくつかの種類があり、それぞれ伝送距離(伝送元から伝送先までの距離)、伝送原理(どのように電力を伝送するか)が異なります。


早稲田大学 環境総合研究センターの「ワイヤレス給電の技術動向」によれば、まず大きく分けて非放射型(NON-BEAM WPT)と放射型(BEAM WPT)があります。非放射型の中に①磁界結合方式、②電界結合方式があり、放射型の中に、③電波方式(マイクロ波)、④レーザー波方式などがあります。同資料の中では、これら4種類に加えて、中間型として⑤エバネッセント波方式、⑥超音波方式も紹介されていますが、この2種類の名前が他資料で紹介されることは珍しいため、今回は割愛します。

(Source: https://www.chademo.com/wp2016/pdf/japan/infra28/WPT170418.pdf)


まず、①〜④それぞれの原理を、簡単にご紹介します。


①磁界結合方式

ファラデーが発明した電磁誘導の原理を利用した給電方法です。送電側のコイル(1次コイル)に電流を流すことで生まれた磁束が、受電側のコイル(2次コイル)に錯交することによって電流が生まれます。磁界結合方式の中には、「電磁誘導型」と「磁界共振型」があります。

(Source: https://www.rd.ntt/se/media/article/0023.html)


まず先に「電磁誘導型」が登場しましたが、コイル間の距離を大きくしようとするほど磁束の漏れが大きくなり、伝送効率が低下してしまうという課題が現れました。その点を改善する形で登場したのが「磁界共振型」です。同じ周波数で振動する2つのコイルを利用し、互いに磁界を共振させることで、磁界を強く保つことができます。これによって、伝送可能距離が伸びました。

(Source: https://www.rd.ntt/se/media/article/0023.html)


電磁誘導型の最大伝送距離が数mm〜数十cmであるのに対して、磁界共振型は数mと距離を大きくすることができます。


ここで、一般的な磁界結合方式のワイヤレス給電システムの主要コンポーネントを見てみます。まず、大きく送電側(トランスミッター)システムと受電側(レシーバー)システムに分かれます。送電側では、まず高周波の交流電流がコイルに流れます。送電側のコイルから受電側のコイルに伝送された交流電流は、受電側で整流器によって交流電流に変換され、機器の充電に利用されます。

(Source: https://www.renesas.com/jp/ja/products/power-management/wireless-power/introduction-to-wireless-battery-charging)


②電界結合方式

電界結合方式は、磁界の代わりに電界を利用します。電極を2つ用意し、片方の電極の先に正電荷を流し込むと、もう片方の電極の先に負電荷が集まってきます。この時、負電荷の動きと逆に流れる電流を取り出し、電力として利用します。

(Source: https://www.rd.ntt/se/media/article/0023.html)


電界結合方式にも、磁界結合方式の歴史と同じように、「共振型」という手法が現れました。電流が流れる電極に共振コイルを設置することで、コイル同士を共振させ、伝送効率を大きくしようというアプローチです。少し原理が複雑なので、詳細はこちらをご参照ください。


磁界結合方式と電界結合方式には、それぞれ強みと課題があります。まず磁界結合方式の強みは、比較的大きな電力(数W〜数kW)を伝送できる点です。また、磁界共振型は最大で数mと、伝送距離も確保できます。一方、コイルに必要なリッツ線が高価である点、磁束を強化するためのフェライトが重い点などが課題です。電界結合方式は、電極に金属板があれば良いため安価で軽い点が強みである一方、電力量と伝送距離が制限される点が課題です。電界結合方式で電力量が限られる背景には、電極→空気→電極と流れる電圧が増していくとある限度を超えていきなり大電流が流れてしまう、という絶縁破壊電圧が関係しています。


磁界結合方式と電界結合方式が分類される「非放射型」に対して、「放射型」と分類されるのが電磁波を用いた給電システムです。電磁波の種類によって、主に③マイクロ波方式、④レーザー方式に分けられます。電力を使って発振器が高周波の電磁波をつくり、アンテナから放出します。これを受電側のアンテナがキャッチし、電力に変換します。最大伝送距離が〜約100mと長い一方で、伝送効率が低い点、そして電磁波が人体に影響を与え得る危険性が課題として挙げられます。以下、マイクロ波方式の概念図です。

(Source: https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/15/1/15_46/_pdf)



これまで日本においては、電波法の規制によって、マイクロ波の周波数(300MHz〜300GHz)を実験以外で利用する場合は設置許可の申請をしなければなりませんでしたが、2021年度中に電波法の省令を改正し、3つのマイクロ波周波数帯をワイヤレス給電に割り当てる方針であると言われています。後ほどご紹介しますが、日本のスタートアップとして、このマイクロ波方式で市場参入を狙っている企業がいくつかあります。



ワイヤレス給電の用途と求められるスペック


前章で、各方式の原理と特徴について紹介しましたが、今度は利用シーンごとに必要となる「伝送距離」「電力量」でプロットした図を見てみます。総務省が出した「ワイヤレス電力伝送システムの実用化について」というレポートでは、以下4つの利用シーンが想定されています。

(Source: https://www.soumu.go.jp/main_content/000235604.pdf)



特に利用シーン1〜3のイメージをもう少し膨らませるために、一般的な家電の消費電力を以下に掲載してみます。

(Source: https://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/1103/17/news027.htmlを参考に作成)


利用シーン1は左列の家電が対応しています。ノートPCやプリンター等の電子機器に電源がほぼ近接して(〜10cm)給電するようなシーンです。利用シーン2は、対象とする機器は利用シーン1と同様ですが、少し離れた場所(〜数m)にある機器に給電できるため、一つの電源から複数機器に給電できるというメリットが考えられます。例えば、部屋の隅にある1つの電源からノートPC、ビデオデッキ、加湿器に給電するようなシーンが想定されます。利用シーン3は、利用シーン1と伝送距離はほぼ変わらないものの、より大きい電力を必要とする、右列に挙げられているような機器(エアコン、洗濯機、トースターなど)に給電するようなシーンです。


利用シーン4は、図中にも記載がある通り、電気自動車のような大電力を必要とする対象に給電するようなシーンです。一般的な電気自動車の充電システムは、約3〜10kWが普通充電器、約10kW〜が急速充電器として位置付けられていますので、磁界結合方式(磁界共振型)のワイヤレス給電が、普通充電器として求められる電力量を供給できる可能性を持っています。

(Source: https://www.nito.co.jp/quick/evstand/fundamental/)


ここで、火災報知器のような防災システム機器にワイヤレス給電を実施するケースを考えてみます。必要とする消費電力は、製品の種類によってさまざまですが、例えば日本フェンオールの光電式住宅用防災警報器「煙電(えんらい)」の消費電力は約0.9Wとスマートフォンよりも消費電力が小さくなっています。警報器は部屋の電源から数m離れた場所にある可能性が高く、一ヶ所の電源から複数の警報器にワイヤレス給電しようとする場合は、伝送距離を確保できる磁界結合方式(共振方式)のワイヤレス伝送システムが合致しているかもしれません。



ワイヤレス給電は実用化されているのか?


2022年1月時点で、ワイヤレス充電として実用化が進んでいるのは、主にモバイル端末(スマートフォン等)への給電です。最も普及していると言われている規格が、15W以下の低電力向け規格「Qi」(チー)です。電磁誘導方式を元にしたQi規格は、WPC(Wireless Power Consortium)が策定した国際標準規格です。なお、WPC以外にも世界でワイヤレス給電の規格策定を推進する団体は存在しますが、現時点ではQi規格が最も一般的です。


WPCは、世界の431企業から構成される国際コンソーシアムで、自動車メーカー、バッテリーメーカー、コイルメーカー、消費者向け電子機器メーカー、モバイル端末メーカー、通信プロバイダー、ワイヤレス給電システムメーカー等、ワイヤレス給電に関わり得る広範な事業者が会員メンバーリストに名を連ねています。WPCはQi規格の策定を通じて、ワイヤレス給電システムを構成する機器が、製造元によらずに互換性を保つことができるようにしました。WPCは、さらに伝送距離・伝送電力が大きいワイヤレス給電の社会実装を進めるべく、用途に合わせた規格の策定を推進しています。


ワイヤレス給電の実用化がどの程度進んでいるか、という点については、各国の規制が絡み合っており、綺麗に分類することが難しい状況です。例えば、日本では電波法改正によってマイクロ波を用いたワイヤレス給電の導入が進んでいく可能性があるとご紹介しましたが、各国のマイクロ波ワイヤレス給電関連制度の整備状況にはバラつきがあります一方、欧米ではマイクロ波ワイヤレス給電の研究は1980年代から現在まで継続的に行われ、一部の企業は商品化を着々と進めています。


また、制度の整備が進んだとしても、技術レベルやコストが実用化段階にあるかどうかは、また話が別です。ニーズに応じた伝送距離・伝送電力量を実現する技術、そして有線に比べて遜色ないコストが実現できて初めて、社会に広く普及していくことになるのではないかと思います。



世界のワイヤレス給電スタートアップ


この章では、世界のワイヤレス給電スタートアップをご紹介します。ここでは外部から資金調達を行いつつ、技術開発・商品開発を進めている企業をご紹介します。なお、一部資金調達状況が不明の企業、あるいはすでに上場した企業も含まれています。


全部で30社近くあるため、イスラエル・日本・アメリカ・ヨーロッパ・アジア・その他という地域別に分類し、その地域の中で創業年が古い企業順にご紹介していきます。


各企業、社名・創業年・累計資金調達額・ワイヤレス給電方式・特徴(最大伝送距離、最大伝送電力、想定ユースケース、事業進捗など)を、調査可能な範囲で記載していきます。


【イスラエル】

Powermat Technologies

●創業年 2006年

●累計資金調達額 1億1,000万ドル(≒130億円)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式(*電磁誘導型と磁界共振型の組み合わせ)

●特徴 SmartInductiveという独自の磁界結合方式を採用し、顧客の用途に応じて、伝送距離・伝送電力・コストの最適なバランスを提案しています。 ロボット・ドローン(最大電力量600W)、医療機器(最大電力量300W)、IoT・モバイル機器(最大電力量80W)と幅広い用途に対応しており、モバイル端末向けのワイヤレス給電システムはすでに出荷実績が豊富です。それぞれ最大伝送距離は15cm程度です。


Wi-Charge

●創業年 2010年

●累計資金調達額 2,600万ドル(≒30億円)

●ワイヤレス給電方式 赤外線方式 赤外線の使用について、人体への危険性を指摘する声もありますが、Wi-Chargeは、レーザー製品の安全性を規定するIEC規格のClass 1(直接ビーム内観察を長時間行っても安全であるレーザー製品)に準拠しています

●特徴 1台のトランスミッターが約20平方mの範囲をカバーできるそうです。トランスミッターは電源から赤外線を放ち、その赤外線をレシーバーがキャッチして電力に変換します。トランスミッターはレシーバーを自動で見つけ出して充電を行い、完了するとストップします。日本では、NTTドコモが2020年にイベントで実演し、注目を集めました。 原理的にはより大きな電力量を伝送できる技術のようですが、現時点では安全性を考慮して最大数Wの電力を数m先まで伝送しています。なお、給電対象機器に直接赤外線が当たらなければいけないため、ポケットの中に入っている機器や、間を人間やモノが遮る場合は充電できないという課題もあります。


ElectReon

●創業年 2013年

●累計資金調達額 2020年にイスラエルのテルアビブ証券取引所に上場。未上場時には5,000万ドル(≒55億円)を調達。

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式

●特徴 ElectReonは、道路にコイルを埋め込み、道路を走行中のEVに給電するシステムを提供しています。すでに、イスラエル・スウェーデン・ドイツ・イタリアで実証実験を数年進めており、イスラエルのテルアビブ市内にある、約600mにも及ぶワイヤレス給電道路では、普通乗用EVや輸送用EVトラックが給電されています。


【日本】

Space Power Technologies

●創業年 2019年

●累計資金調達額 2億3,000万円

●ワイヤレス給電方式 マイクロ波方式

●特徴 日本では、電波法の省令改正によってマイクロ波方式のワイヤレス給電市場が開かれようとしていますが、そのタイミングに合わせて市場参入しようとしているのが、Space Power Technologiesです。 一方、現在のマイクロ波方式ワイヤレス給電の課題として挙げられるのが、伝送距離を長くした時に伝送効率が低下してしまう点です。こちらの記事によれば、発信時に30Wのエネルギーが1m先では1/15になってしまうケースもあるそうです。同社は、最大伝送距離10m程度のユースケースを想定し、電力を保つことができるよう開発を進めています。


Aeterlink

●創業年 2020年

●累計資金調達額

2億円

●ワイヤレス給電方式 マイクロ波方式

●特徴 Aeterlinkも、Space Power Technologies同様に、マイクロ波方式を採用しています。最大伝送距離15〜20m、最大電力量が数mWミリワット)のワイヤレス給電が行えるそうです。 2020年には竹中工務店と実証実験を実施し、15m先の空調機に数mW給電できる結果を発表。2022年には製品を市場投入する計画です。


【アメリカ】

WiTricity

●創業年 2007年

●累計資金調達額 8,800万ドル(≒100億円)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式(共振型)

●特徴 EVを対象とするワイヤレス給電システムを開発しています。WiTricityの伝送電力は3.6kW〜22kWと、普通充電レベルから急速充電レベルまで対応しています。伝送距離は正確には書かれていませんが、イメージ図をみる限り最大数十cm程度と想定されます


Ossia

●創業年 2008年

●累計資金調達額 3,500万ドル(≒40億円)

●ワイヤレス給電方式 マイクロ波方式

●特徴 Cotaというブランドで、トランスミッター・レシーバーから構成されるハードウェアシステム、および充電管理を行うCota Cloudというソフトウェアを提供しています。 最大伝送距離は約10m、最大伝送電力は1Wを実現しており、2019年にはFCC(米国連邦通信委員会)に機器認証され、米国での販売が認可されました。 先ほど紹介したAeterlinkに比べると最大伝送電力が大きく、どのあたりに技術的な差があるのか、気になるところです。


Momentum Dynamics

●創業年 2009年

●累計資金調達額 4,200万ドル(≒50億円)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式(共振型)

●特徴 EVに特化したワイヤレス給電システムを開発しています。コイルを詰めたトランスミッターのパッドを地面に設置し、EV底部に設置したレシーバーが電力を受け取ります。 最大伝送電力は50kW〜450kWと大きく、急速充電に分類されるレベルの電力量です。


HEVO Power

●創業年 2011年

●累計資金調達額 620万ドル(≒7億円)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式(共振型)

●特徴 EVに特化したワイヤレス給電システムを開発しています。コイルを詰めたトランスミッターのパッドを地面に設置し、EV底部に設置したレシーバーが電力を受け取ります。 主要なEVメーカー、電力会社、EV充電器メーカーと提携し、実証実験を進めています。


Energous

●創業年 2012年

●累計資金調達額 2014年にアメリカのNASDAQに上場。

●ワイヤレス給電方式 マイクロ波方式

●特徴

同社はワイヤレス給電製品を販売する企業の中で、確かな実績を積んでいる企業の1つで、一時はApple製品にも搭載されるようになるのではないか、と噂されていました。欧米を中心とする世界112ヵ国で出荷認可を得ています トランスミッター・レシーバーから構成されるハードウェアシステム、および充電管理を行うソフトウェアを提供しています。


Reach Labs

●創業年 2014年

●累計資金調達額 900万ドル(≒10億円)

●ワイヤレス給電方式 マイクロ波方式

●特徴 同社は最大伝送距離18m、最大伝送電力400Wのワイヤレス給電を実現している、とシリーズAラウンドの投資をリードしたDCVCというベンチャーキャピタルがブログに書いています。仮にこれが事実だとすると、AeterlinkやOssiaよりもかなり大きな電力を伝送できることになります。 トランスミッターには、レシーバーへの最適経路を自動で検出するアルゴリズムが組み込まれていますが、このアルゴリズムが同社のユニークな技術となっているようです。


WiBotics

●創業年 2015年

●累計資金調達額 800万ドル(≒9億円)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式と電界結合方式を組み合わせた技術 トランスミッターが、高周波のワイヤレス電力信号を生成し、送信アンテナで電界と磁界の両方を発生させます。受信機は受信アンテナを通じて電力を収集し、直流電流に変換します。

●特徴 最大伝送距離5cm、最大伝送電力300W。アンテナのサイズを大きくすることによって、伝送距離を伸ばすことができるようです。主にロボットやドローンに対するワイヤレス給電をターゲットとしています。


PHION Technologies Corp.

●創業年 2017年

●累計資金調達額 250万ドル(≒3億円)

●ワイヤレス給電方式 レーザー波方式(赤外線)

●特徴

Wi-Chargeと同じく赤外線を用いたワイヤレス給電を開発しています。最大伝送距離4.5m、最大伝送電力5Wの商用システムを2022年中に販売予定としています。なお、同社には、三菱地所が出資しており、今後丸の内エリアでの実証実験を進めていくそうです。今後は、10m以上の距離に最大20Wの電力を伝送することを目標に開発を進めていく、と公表されています


GuRu

●創業年 2017年

●累計資金調達額 1,500万ドル(≒17億円)

●ワイヤレス給電方式 ミリ波方式

●特徴

GuRuは、Smart RF Lensingという独自のミリ波伝送技術を用いて、1つの対象機器にピンポイントで給電するシステムを開発しています。最大伝送距離は数m、最大伝送電力は数Wであるようです。ミリ波は、5Gでも使われている24GHzの周波数帯であり、Wi-FiやBluetoothなど他の周波数帯とも干渉せず、かつ人体への影響も比較的安全と言われています。


Resonant Link

●創業年 2017年

●累計資金調達額 900万ドル(≒1億円)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式(共振型)

●特徴 磁界結合方式(共振型)を元に、ダートマス大学で発明された多層自己共振構造技術を用いて、伝送損失が従来よりも5〜10倍低いワイヤレス給電システムの開発を進めています。米国エネルギー省国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が運営するアクセラレータープログラムに採択されています。具体的な最大伝送距離、最大伝送電力については記載が見当たりません。


invisQi

●創業年 2021年

●累計資金調達額 -

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式(磁界共振型)

●特徴 Qi規格に基づいたワイヤレス給電システムを開発しています。最大伝送距離3cm、最大伝送電力10W。


Electric Sky

●創業年 不明

●累計資金調達額 23万ドル(≒3,000万円)

●ワイヤレス給電方式 レーザー波方式

●特徴 ドローンに地上からワイヤレス給電するシステムを開発しています。


【ヨーロッパ】

Eggtronic(イタリア)

●創業年 2012年

●累計資金調達額 3,400万ドル(≒40億円)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式(共振型)

●特徴 最大伝送距離4cm、最大伝送電力300W。通常の磁界結合方式(共振型)と同じようなスペックに見えますが、同社独自の「E2WATT」技術は、窒化ガリウム(GaN)を用いて伝送効率を高く保つことで、伝送距離をより長くすることができるようです。


Aladyn System S.L.(スペイン)

●創業年 2016年

●累計資金調達額 7万ユーロ(≒900万円)(Grant)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式

●特徴 最大伝送距離25cm、最大伝送電力70Wのワイヤレス給電システムを開発しています。同時に複数のデバイスに給電できるのが特徴です。


Witech Power(ドイツ)

●創業年 2012年

●累計資金調達額 -

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式

●特徴 テーブルの下に薄いタイルのようなトランスミッターを貼り付け、デスク上のデバイスにワイヤレス給電するシステムを開発しています。


MAGMENT(ドイツ)

●創業年 2015年

●累計資金調達額 12万ドル(1,500万円)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式

●特徴 Magmentは「Magnet」と「Cement」を合わせた造語です。MAGMENTは、セメントと再生磁性粒子を利用したフェライトを配合した磁性を持つコンクリートを製造しており、倉庫内にMagmentを敷き詰め、倉庫内を走行する運搬ビークルに給電を行います。最大伝送距離は数cmで、最大伝送電力は3〜10kWです。


Energysquare(フランス)

●創業年 2014年

●累計資金調達額 480万ドル(≒5億円)

●ワイヤレス給電方式 電界結合方式

●特徴 珍しい電界結合方式を採用しています。超薄型のパッドで、複数デバイスを一度に充電することができます。2020年にLenovoと技術提携し、2021年にLenovoのノートPCに搭載されました。伝送電力は65Wで、伝送距離は数cmでほぼ近接しています。

【アジア】

Xnergy

●創業年 2017年

●累計資金調達額 1000万ドル(≒11億円)

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式(共振型)

●特徴

自律型ロボット向けのワイヤレス充電システムを開発しています。対象機器に使用されているバッテリーの種類に関係なく機能する点が特徴です。最大伝送距離は7cmです。すでに、フランスの倉庫ロボットメーカーBaylo、中国のロボットメーカーSiasun Robot&Automationなどが顧客となり、チップの調達においてはドイツの半導体メーカーInfineonと提携しています。

Photonicity

●創業年 2019年

●累計資金調達額 -

●ワイヤレス給電方式 レーザー波方式

●特徴 地上から月面ローバーや人工衛星にレーザー波を用いたワイヤレス給電を実現することを目指している。


【その他】

Neahtid(チリ)

●創業年 2018年

●累計資金調達額 -

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式

●特徴 医療機器、モバイル端末を主な対象とするワイヤレス給電システムを開発しています。


Wireless Power(南アフリカ)

●創業年 2017年

●累計資金調達額 -

●ワイヤレス給電方式 磁界結合方式(共振型)の応用型

●特徴 ドローン、パーソナルモビリティ、EVにワイヤレス給電するシステム

まとめ


今回はワイヤレス給電の種類とそれぞれの原理、そして世界のスタートアップをいくつかご紹介しました。もちろん、リストアップした企業以外にも、ワイヤレス給電システムを開発する新興企業・大手企業はありますが、量が多くなってしまうため、今回は約30社にとどめました。


改めて、スタートアップの採用方式とスペック(伝送距離・伝送電力)を整理してみると、現時点で実用化が進んでいるのは、磁界結合方式(共振型)と電磁波を用いた方式です。

磁界結合方式(共振型) ほぼ近接(数cm〜数十cm)の給電が基本です。モバイル端末・家電のように数W〜数十Wでよい場合もあれば、EVのように数kW〜数十kW必要な場合もありますが、海外を中心に実用化が進んでいる企業が多数見られます。モバイル端末は標準規格が定められており広く普及していますが、産業利用(ロボット、EV等)はまだ実証実験段階の企業も多く、これから標準規格の整備が進んでいくと思われます。

赤外線・ミリ波・マイクロ波方式 最大数m〜20m程度まで伝送可能な方式で、伝送電力もすでに数Wは実現済みの企業がいくつか見られます。これから、安全性を考慮しつつではありますが、電力量を大きくしていくことも可能と言われています。例えば、部屋の1個所に設置されたトランスミッターから、複数機器にソフトウェアで自動制御しながら給電するような利用シーンが想定されます。一方、電磁波が人体に与える影響、電磁波が人間やモノに遮られた時の対応、距離を伸ばした時の伝送効率には、まだ改善の余地がありそうです。


最後になりますが、ワイヤレス給電の難しいところは、利用シーンによって求められる伝送距離・伝送電力・ロバスト性・予算規模が異なるため、一概に「この技術が良い」とは言いづらい点にあります。まずは、用途に応じた要件設定を行い、採用方式で大まかな当たりをつけたうえで、複数企業にヒアリングを実施するところからスタートするのが良いかもしれません。特に日本では、モバイル端末以外のユースケースが少ないため公開情報が限られています。ヒアリングを通じて、公開されている情報が、一度きりの実証実験に基づいた数字なのか、繰り返し運用に耐えた数字なのか、見極めていく必要がありそうです。


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