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  • Kenta Adachi

ベンチャーデット (Venture Debt) とは?

本記事は、CB Insightsで公開されていた記事「Venture Debtとは何か?」の解説を試みる内容となります。


What Is Venture Debt?

https://www.cbinsights.com/research/report/what-is-venture-debt/


Venture Capital(ベンチャーキャピタル、VC)という言葉はよく耳にしたことがあるかと思いますが、Venture Debt(ベンチャーデット、VD)は、その対となるようなものです。


Venture Capitalが、スタートアップに対して出資(スタートアップの株式を買い取ることで現金を提供する行為)であるのに対して、Venture Debtは、スタートアップに対して融資(スタートアップに貸付を行って現金を提供する行為)となります。


なお、ここではスタートアップを「短期間に圧倒的な事業成長を実現する株式会社」と定義しておきます。


さて、短期間に圧倒的な事業成長を遂げるためには、何が必要でしょうか?


ヒト?

モノ?

情報?


もちろん手掛ける事業内容にもよりますが、これら経営資源の全て(そして状況に応じてその他の資源も)が必要で、それを短期間で集め、あるいは創り上げ、それらをもって事業を垂直立ち上げしていくものです。


では、元手となる資金なしに、そういった資源を集めたり、あるいは創り上げることができるかと言うと、なかなかそうはいきません。


スタートアップ(になろうとしている株式会社)が、そうした資金を持っていなければ、外部から何らかの手段で資金調達をする必要があります。そうしたスタートアップにとって、その主たる資金調達方法は「増資」つまり、自社の株式を投資家に売り出すことで資金を調達する、というものです。その株式の買手として活躍するのが、Venture Capitalですね。


例えば、1株1万円で1,000株を売り出すことで、1,000万円の資金を得よう、というものです。中には、その場では株式を売り出さず、将来的に株式と買い取る権利を売り出す、といった手法もありますが、いずれにしても、株式を売って現金を得る、という観点は同じです


(なお、Convertible Noteあるいは転換社債など、最初は性質上借金としてスタートしながらも、特定の条件下で株式に転換されるものもありますが、それも入り口では株式への転換を企図している部分が大きいため、ここでは増資と同じグループとして考えておきます)


対して、ここ最近、増資ではない資金調達手段への注目が集まってきています。


それが何かと言うと、タイトルにもあるVenture Debtです。増資ではなく「借入」で資金調達を行う手法で、とはいえ一般的な借金ではなく、スタートアップ向けのものということで、特別にVenture Debtと呼ばれることが多いものです。


なぜ今、そうしたVenture Debtへの注目が集まっているのか、Venture Capitalと比べて違いは何か、探っていきましょう。


Source:https://www.cbinsights.com/research/report/what-is-venture-debt/




一般的な借入は、売掛金や在庫など、会社そのものが持つ無形資産を含めた何らかの担保・信用をもとに、会社の返済能力を予測して実行されることが多いですが、Venture Debtはそうではなく、会社とVC・サポーターとの関係性に焦点を当てています。


シリコンバレー銀行によれば「会社が調達できるVenture Debtは通常、直近のエクイティ・ラウンドの20~35%に設定されている」とのことです。


つまり、株式発行で1億円を調達した会社があるとすれば、Venture Debtはその「1億円を調達した」ことを背景として、2,000~3,500万円の融資を行う、というものです。


よって、Venture Debtの対象はVCから支援を受けたスタートアップとなることが多く、会社がVCから資金調達するのと同時に交渉されるケースが一般的です。


そうしてVenture Debtで得た資金は、運転資金ではなく、VCからの調達と同様、設備投資を代表とする成長資金に充当されます。


こうした背景から、Venture Debtは通常の融資とは異なって投資に近い判断が必要なこともあり、Venture Debtの貸し手はその専門家が大半となっています。


一例をあげると、前述のシリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank)、その他にはTrinity Capital、Western Technology Investment、TriplePoint Capitalなどです。さらには、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、事業会社が事業の一部としてVenture Debtを展開しているケースもあります。


こうしたプレイヤーがVenture Debtの検討をする際には、会社の経営陣、製品、出資者、市場、資本政策等を重視します。なぜなら、Venture Debtの返済原資は次の資金調達ラウンドで獲得するお金であることがほとんどで、「この会社ならきちんと事業成長して、次の資金調達ラウンドの進むことができるのか?」という点をチェックするからです。


日本ではVenture Debtに特化した金融機関はあまり見ませんが、中小機構の資本制ローンは性質が近いものがあり、とてもありがたいものです(ただし、中小機構の資本制ローンはVenture Debtと違って、VCからの出資を前提としておりません)。


Venture Debtの貸し手の収益は、一般的な融資と同じく利息や手数料といったものもありますが、最も大きな収益になりうるのが、ワラントの獲得です。ワラントとは、会社の株式をあらかじめ定められた価格で購入することができる権利のことで、つまりは貸付を行った会社の株主になろう、と言う権利です。一般的な融資には、まず見られない条件です。


VCマネーに追随してVenture Debtを融資し、会社の成長資金を膨らませ、会社が想定通りに成長したら、融資時に設定しておいた株価でその会社の株式を購入し、将来的なIPOや被買収を通じて、融資に対する利息や手数料をはるかに超える大きなリターンを得る、というものです。


スタートアップ側としては、VCからの調達にVenture Debtを混ぜ合わせることでより大きな成長資金・より長いランウェイを確保できるため、次の資金調達ラウンドまでに実現すべき達成事項をより挑戦的なものにしたり、次ラウンドのValuationを引き上げることができます(それは希薄化の低減につながります)




Venture Capital と Venture Debt との違い

これまで説明してきたことで、おおよそVenture CapitalとVenture Debtとの違いを感じていただけたかと思いますが、ここで改めて、両者を比較してみたいと思います。

Source: https://www.cbinsights.com/research/report/what-is-venture-debt/



まず大きな違いが、返済義務の有無です。Venture Capitalは一般的に言えば返済の義務はありません。一方、Venture Debtはあくまで借入であり、返済義務があります。


そのため、Venture Debtを受けるかどうか判断する際には「本当に返済できるのか」を考慮する必要があります。


次ラウンドでの調達資金を返済に充てることができればよいですが、もし仮に次のラウンドに進むことができなかった場合にも、何らかの方法で返済できるように考慮しておく必要があります。この点が、Venture Capitalとの大きな違いでしょう。


ここで、注意すべき点があります。


次のラウンドに参加するVenture Capitalとしては、自分たちが出資した資金が事業成長に使われず、借金返済に一部でも使われることに抵抗を感じることもある、ということです。


もちろん、それは調達額と返済額のバランス次第ですが、あまりにも返済額の比率が大きいとすると、Venture Capitalは出資に対して二の足を踏む可能性があり、Venture Debtを受けすぎると、そもそも次のVenture Capitalからの資金調達難易度があがることがある、ということは忘れないでおきたい点です。


そのため、冒頭にもあった通り、結局Venture Debtの額は、直前ラウンドでVenture Capitalから調達した額の20~35%となることが一般的となります。


また、Venture CapitalとVenture Debtの本質的なビジネスモデルの違いも理解しておいたほうがよいでしょう。


Venture Capitalのリターンの80%は、その約20%の出資先のIPOや買収によってもたらされると言われています。いわゆる、パレートの法則がここでも効いているのです。打率は低いが、ホームランで打点をかせぐ、といったモデルです。


一方のVenture Debtは、上述したワラントこそあれ、基本的には融資であることから、そこまで偏ったリターン構成になりません。Venture Capitalとは異なり、打率は高いが、それぞれが生み出すリターンはそこまで大きなものではない、というモデルです。


Kruze Consultingの調査によれば、Venture Debtの失敗率は1~8%とのことで、とても低いものとなっています。


これはそもそも、Venture Debtの条件の一つに、Venture Capitalからの資金調達に成功していることが上げられるため、その時点で投資デューディリジェンスを通過している、ということももちろんありますが、それに加えて、融資そのものの性質も多分に影響しています。


なお、Venture Capitalはリターンが返ってくるまで5~8年ほどの時間がかかることを想定することが多いですが、Venture Debtは15~18ヶ月で返済されることが想定されています(ただし、満期は3年ほどが一般的)


この想定回収期間の差も、大きな違いの一つでしょう。

この違いから、Venture CapitalとVenture Debtの支援の仕方にも違いが現れます。


Venture Capitalは長期目線のため、とにかく会社の成長につながるような支援を積極的に行います。戦略策定、人材採用、営業支援、広報支援、資金調達支援などなど。

一方のVenture Debtは短期目線であり、とにかく会社がつぶれないような観点を重視すると言われています。


そして、最後にあげる大きな違いは希薄化です。


例えば評価額10億円で1億円のVenture Capital調達をする場合と、同じ評価額10億円で8,000万円のVenture Capital調達ならびに2,000万円のVenture Debt調達をした場合、起業家からすれば、希薄化は明らかに前者のほうが大きくなります。


まだ必要資金に対してそこまで評価額をあげることができないが、あといくばくかの資金があれば、大きな事業マイルストンを達成できるのに、あるいは転ばぬ先の杖として、もう少し多めに資金が欲しいという時に、希薄化をとどめながら必要資金を確保できるのが、Venture Debtと言えそうです。




なぜ今、Venture Debt の人気が高まっているのか?

現代のVenture Debt市場は、2008年の金融危機を経て大きくなってきました。

つまり、不景気で資金繰りが厳しくなった時、あるいはVenture Capitalからの資金調達が難しくなった時に、その埋め合わせという形で発展してきたのです。


そして今、足元でまたVenture Debtへの人気が高まっているのは、そうです、COVID-19が原因です。


スタートアップの何社かは、それまで想定していなかったような経営環境の急変を受け、コスト削減など資金繰りを改善することを余儀なくされています。


そのような状況下でVenture Capitalからだけ資金調達していては、そもそも調達難易度も高いし、希薄化も想定以上に進んでしまうことがあります。


そのような背景と、低金利も相まって、Venture Debtへの人気が高まっているのです。


事業を前に進めるには、やはりガソリンとなる資金が必要です。

その資金を確保する手段を、Venture Capitalのみならず、Venture Debtを含めて複数もっておくというマインドが、この荒波の時代を乗り越えるために必要なのではないでしょうか。




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フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の進化・変革を支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。


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