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  • Shingo Sakamoto

ハードウェアスタートアップにとっての資金調達

Updated: Nov 5


近年VCやアクセラレーターの積極的な活動によって、スタートアップに有益な情報がインターネット上に無償で公開されることが多くなってきました。プロダクトの作り方はもちろん、広告の打ち方、採用の仕方など、スタートアップが初期につまづきやすい壁を取り払う動きが進んでいます。

一方で、こうした情報の多くがSaaS・スマホアプリなどのソフトウェアビジネスを前提として語られることが少なくありません。CAC(Customer Acquisition Cost=顧客獲得単価)・LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)・Churn(解約率)・広告・etc...。


これらの指標は基本的にソフトウェアのビジネスモデルで考えたほうが頭に入りやすく、触ることのできるモノ(ハードウェア)を作って売るようなビジネスモデルのスタートアップにはあまりしっくりきません。

そして、同じことが資金調達に関しても言えます。スタートアップの資金調達ラウンドは、シード・シリーズA・シリーズB・シリーズ◯◯〜と続き、(もちろん事業領域・起業家やチームメンバーの経験値によってばらつきはありますが、)一般的に以下のようなマイルストーンを目処に進みます。




【シード】
 プロダクトのローンチ

【シリーズA】
 PMF(プロダクトマーケットフィット)を狙う、チームメンバーが徐々に増え始める

【シリーズB】
 広告投下や機能追加によるユーザー拡大、顧客獲得費用と収益のバランス健全化

【それ以降】
 既存プロダクトの収益を伸ばすためのマーケティング・採用・開発
 プロダクトの多角化、地域展開などの用途に合わせて追加で調達を行う



ハードウェアスタートアップにとって、このような考え方はなかなか当てはまりません。プロダクトをローンチすると言っても、そもそも1つのプロトタイプを作るのに数百万~数千万円のコストが掛ってしまう場合もあり、しかもそれはSaaSのように「簡単には複製ができない」のです。



ソフトウェアの世界では「小さく検証せよ」と言いますが、大型のハードウェアの場合はβ版ですら作るのに大変な手間がかかります。その結果、プロダクトが顧客に本当に刺さるかどうか確信が持ちきれないまま、次の資金調達(プレシリーズAやシリーズA)を迎えなくてはならない場合があります。このような不確実性もハードウェアスタートアップを「Hard」たらしめている要因の一つです。


(Source: https://pixabay.com/ja/photos/%E3%83%BB-%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%82%B9-%E7%82%89-%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC-1139033/)



一口にハードウェアといっても、大型モビリティから小型のIoTキットまでさまざまな種類があります。そのような多様なプロダクトを一概にまとめることはとてもできませんが、例えば大型のハードウェアを開発するスタートアップが進むルートをロールモデルとして考えてみます。




【シード】
 プロトタイプを完成させる(大型であればこれだけで千万単位の場合も)
 この時点で創業者がフルスタックでない限り人員費用がかさむ

【シリーズA】
 少量生産(数十〜数百)販売によるPMFの確認、量産試作の完成

【シリーズB】
 量産体制構築(事業提携、倉庫契約、サポート体制、etc)


実際に資金調達が進んでいるハードウェア系の企業の例を見てみましょう。


例えば、ロボットスーツHALを提供する筑波大学発のサイバーダイン。2004年に創業し、2008年頃まで研究開発・少量生産を行っていました。この時点での年間生産量は20体程度だったそうです。2008年には大和ハウス工業から10億円ほど調達し、年間生産台数を400~500体まで増加させるべく、つくば市に量産工場を作りました。ラウンドというのは曖昧なものですが、恐らくこれがシリーズBになります。


電動車椅子を開発するWHILLも見てみましょう。2012年に創業し、2013年初頭にシード資金として約1億円、2014年9月にシリーズAで約10億円、2016年にはシリーズBで約20億円、2018年にシリーズCで約50億円を調達しています。だいたい1~1.5年の間に次のシリーズに進んでいるようです。この間に2014年に250台、シリーズA調達後に2,000台まで販売目標を増加させたようです


アシストパワースーツを手がけるイノフィスは、2013年に創業し、シリーズAで約6億円、シリーズBで8億円、シリーズCで35億円を調達しました。イノフィスはシード資金を菊池製作所から受けており、ここで初期の製品化を行い、シリーズAの資金で1,500台近く出荷したそうです。シリーズBを経てターゲットを個人向けにシフトさせ、マーケットを拡大させたことで量産に踏ん切りがつき、シリーズCまでこぎつけたと言います


作っているモノはそれぞれ違いますが、これらの事例はこのロールモデルをある程度踏襲しています。


(再掲)

【シード】
 プロトタイプを完成させる

【シリーズA】
 少量生産(数十〜数百)販売によるPMFの確認、量産試作の完成

【シリーズB】
 量産体制構築(事業提携、倉庫契約、サポート体制、etc)


こうして考えてみると、シード調達後にきちんと使えるレベルのプロトタイプを作り上げられるかがシリーズAへのマイルストーンになります。それと同時に、ただモノが出来ても事業リスクは残るため、それが数百台・数千台と売れていく確信を持つことも資金調達の上では重要です。それはプロダクト改善だけではなく、マーケット調査や営業ヒアリングという活動を通じても「本当に売れるのか?」という調査活動は大切です。この記事ではハードウェアスタートアップにとってのPMFの重要性について語られています。


そして、シリーズAの資金でPMFを達成することがシリーズBへの入口につながります。PMFの定義はあちこちで言及されていますが、今ある生産能力では追いつかないほど予約受注が止まらず、量産フェーズに移行せざるを得ない、という状態が一例として挙げられるでしょう。


「顧客の声を聞け」という言葉は、ソフトウェア・ハードウェア関係なく大切な教えです。むしろ、ピボットがしにくいハードウェアスタートアップだからこそ、プロトタイプづくり・少量生産の過程で顧客のニーズをプロダクトに反映させることが欠かせないのです。



このような難しい領域でチャレンジするようなスタートアップをの力になることができれば幸いです。


IDATEN Ventures(イダテンベンチャーズ)について

フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の、デジタル化をはじめとした進化・変革を支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。

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