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スタートアップと成熟企業を分ける「リソース」について:時間とエネルギーの集中

Updated: Jun 16, 2021


この記事のテーマは「スタートアップが急成長するためには、時間とエネルギーを本当の意味で集中投下させなくてはいけない」というものです。



私が最近すきま時間にちょっとずつ読み進めている「『世界』を変えろ! 急成長するスタートアップの秘訣」(日経BP、デビッド・S・キダー著、小林啓倫訳)の中で、著名な起業家がリソースの集中投下というテーマでアドバイスを書いているのを見て、「これはスタートアップ的に働いている全ての人が読んだ方がいいアドバイスだ」と思い、紹介することにしました。


先ほど紹介した本はこちらです。




(Source:https://pixabay.com/ja/illustrations/%E3%83%A8%E3%82%AC-%E7%9E%91%E6%83%B3-%E7%A6%85-%E8%87%AA%E7%84%B6-%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%BA-1787663/)


「本当に」リソースの集中投下ができているか?


スタートアップは成熟企業とは違いリソースが多くありません。ここでいうリソースは、カネ・ヒトという目に見えるものだけでなく、時間・精神的余裕のような目に見えないものも含んでいます。


だからこそ、「リソースを集中して一点突破するのだ!」という定説があります。優れたアドバイザーは初期のスタートアップに対して、考えれば幾らでも出てくる「これからした方がいいこと」の中から、「いまする必要がないこと、いま本当にすべきこと」を選り分けるサポートをします。これをリンクトイン創業者のリード・ホフマンは「トリアージ」と呼んでいます。


一見簡単に見えるこの作業が実はとても難しく、なんとなく「優先順位をつけなきゃなぁ」くらいではすぐにフォーカスがブレてしまいます。危機管理意識が高い人が「あれもこれもやらなくちゃ!」となるのは当然のことで、訓練的に「リソースを集中投下する」ことを身につける必要があります。


他にも重要なことがあるかもしれない、という意識をいったん捨てる


リード・ホフマンは本の中でこのように述べています。

「... 優先順位が1位と2位のものにフォーカスしながら、3位、4位、5位のものに注意を向けてしまうのです。それは完全に間違った対応です。大切なのは、他に重要な問題があるかもしれない、という可能性に気を取られないようにすることです。」

(p.271)


ここで彼が言っているのは、「3位、4位、5位のものが大事ではない」ということではありません。時間が経てばそれらの課題が1位や2位に上がってくるかもしれません。彼が本当に言いたいのは恐らく、「この瞬間に下位課題に取り組む必要がない」と本当に思い込むことです。


例えば、リリースしたてのプロダクトにバグが見つかったとします。ちょうどその時期、営業開拓に力を入れているところでした。ついさっきまではそれが1位の課題だったからです。しかしバグが見つかった瞬間に、バグ修正が1位の課題に躍り出ます。まずはバグを直すまで、集中力・時間・人員を全てそちらに注ぎ込むべきです。その間には、リード顧客からの電話に対して受話器を上げる必要がないかもしれないくらい、集中すべきなのです。



そうはいっても、ちょっとでも気を抜くと一見大事そうに見える課題が頭の片隅にひとつふたつと湧いて出てきます。そんな時、課題を優先づけするベースになるものが必要です。その点について、LinkShare創業者のステファン・メッサーが良いことを言っています。



タスクを「空気」「水」「食料」で優先づける


「優先度を「高」「中」「低」で表すと、すべてが「高」に分類されてしまいます。そこで私とハイディは、新しい基準をつくりました。すべての生物は空気と水、そして食料を必要とします。しかし、空気なしで生きられる時間は数分、水なしで生きられるのは数日、そして食料なしでは数週間です。... 最も重要なのが空気であることは明らかです。」

(p.271)


私自身、受験勉強をしている時に優先順位表を作ったことがあります。すると、見事に「英語:高、数学:高、歴史:高、etc」となったものです。時代や国境を越えて普遍的な悩みだということです。


「長い目で見れば食料が必要だ!」という意見も理解できます。ただ、そこには落とし穴が潜んでいます。それは、そもそもシードステージからシリーズAに進めるスタートアップは4割程度です。




長い目で考えられるのは、安心して呼吸ができる(=空気がある)スタートアップだけです。


もちろん業界によって何が「空気」かは異なるでしょう。PMF(Product Market Fit)に照らし合わせて考えると、初期に最も大事な空気は「顧客のニーズがあることを知る」ことかも知れません。その調査をすっ飛ばして、「食料」(=プロダクトの機能、組織)の確保に動けば、食料を目の前に息絶え絶えになってしまいます。



マイルストーンに合わせて優先順位を分ける


「空気・水・食料」理論はわかりやすい基準を与えてくれますが、注意すべきことがあります。それは「ステージに応じて、何が空気となるかが変わる」というものです。


この点について、ラダーズ創業者のマーク・チェネデラがこう言っています。


「今1時間あったら、それをプログラミングに割くべきでしょうか?それとも投資家との会話?あるいはその時間で、ニューヨーク大学の学生に無給でインターンに参加するように説得しますか? … 判断を下すには、次のマイルストーンに到るまでの道のりを理解し、そこまでにどのようなステップを踏めばよいかを理解しておく必要があります。」

(p.271)


例えば、顧客のニーズをつかむことができ、MVP(Minimu Viable Product)ができたとします。うまくユーザーの心を掴み、本格的な機能を幾つか追加して事業が軌道に乗り始めました。そこまではプロダクトが「空気」でした。そこから、組織を安定させてプロダクトをメンバーに任せ、次なる市場開拓を進めることが「空気」になったことに目を瞑り、小さな機能改善ばかりしているとどうなるでしょう。「機能追加が以前は空気だったんだ!」とこだわっている間に、その優先順位が下がっていることに気がつかず、そのステージで空気である「資金、採用、ネットワーク」にリソースが回らなくなってしまいます。



繰り返しになりますが、スタートアップにとって、思いつくことは全て「重要度:高」です。ゲージが真っ赤っかになっているテーマを優先することがスタートアップにとっては大事、という学びでした。



余談になりますが、こうした優先順位づけは、スタートアップに限らず日常生活のミクロな場面でも役立ちます。以前こちらの記事で書かれているように、スケジュールを予め決めておき、その時間にはメールもTwitterも全部遮断して、それだけをやる。そういった身近なところから訓練することで、徐々に優先順位づけができるようになるかも知れません。


IDATEN Ventures(イダテンベンチャーズ)について

フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の、デジタル化をはじめとした進化・変革を支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。

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