Search
  • Shingo Sakamoto

2021年にインドでユニコーンになったIDATEN領域スタートアップ4社を解剖

2021年、インドでユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)が急増しています。10月13日に公表されたジェトロの短信によると、2021年にインドでユニコーンになった企業数がちょうど30社に達したそうです。


もちろん、2021年にいきなり突然変異が起きたというより、毎年着実にスタートアップが調達資金を増やしてきた延長線上に、いまのインドスタートアップ市場の活況があると思います。経産省のレポートによれば、インドの年間スタートアップ投資額は、ばらつきがあるものの、2012年の約11億ドル(≒1,200億円)から年間平均成長率約60%で増加し、2015年に約100億ドル(≒1兆1,000億円)、2018年に約190億ドル(≒2兆1,000億円)に到達しています。ちなみに、ソースによってインドのスタートアップ投資額が異なる場合がありますので、ご注意ください。

(Source: https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kaigaima/image/20200525_01.pdf)



インド市場の盛り上がりには、行き場を失った中国スタートアップ資金がインドに流入していることが関連していると言われています。2020年11月にアントグループのIPOが延期を余儀なくされてから、2021年には中国企業の海外上場に対する規制が強化されるなど、特にIT企業の失速リスクが高まっており、中国スタートアップに対する投資家の投資意欲が下がってきているようです。そこで、それまで中国に集まっていたスタートアップ投資資金がインドを含む海外諸国に流れ、インドの活況に繋がっている、という見方があります。



少し前段が長くなりましたが、活況を見せているインドのスタートアップ市場についてもっと知りたいと思い、今年ユニコーンになった30社のうち、IDATEN Venturesの投資領域に近いスタートアップについて調査し、紹介していきたいと思います。


(Source: https://pixabay.com/photos/taj-mahal-india-building-misty-1209004/)




2021年にユニコーンになった30社(10月13日時点)


こちらが、ジェトロが発表した、2021年にユニコーンクラブ入りしたインド企業30社です。

(Source: https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/10/0e8a2099a29cbc63.html)



今回はこの中で、Infra.Market、Moglix、OfBusiness、Zetwerkをご紹介します。いずれも、製造・建設領域のEC・マーケットプレイスビジネスを展開しています。


各社は2021年に大型の資金調達を経てユニコーンになったため、資金調達のまとめ記事等でリストアップされることが増えましたが、日本語で詳しく紹介されている記事が少なかったため、少し細かめに書いてみました。分量が多くなってしまい、一度に読むと疲れてしまうかもしれないので、気になる企業のところだけでもご参照いただければ幸いです。




Infra.Market

創業は2016年で、本社をムンバイに構えています。創業者はSharda氏・Sengupta氏の2名。

創業の経緯

インドの建設プロジェクトにおいて、比較的容易に調達できる鉄鋼材料が建設材料全体に占める割合はわずか15%で、残りの85%の材料はサプライチェーンが複雑で調達に手間がかかる、ということにSengupta氏が課題意識を持ったのが創業のきっかけです。Sungupta氏が、建設業界で10年以上の起業経験を持つ友人であるSharda氏に声をかけ、建設材料の調達を容易にするプラットフォームをつくろう、というアイディアでInfra.Marketをはじめることになりました。


ビジネスモデル

Infra.Marketは、建設会社・小売店が建設材料をオンラインで発注・調達することができるB2BのECサイトを運営しています。サイト上で販売される製品ラインナップのうち、1/4は生産委託先である中小サプライヤーの製品で、いわゆるマーケットプレイスモデルのサイトになっています。一方、残りの3/4は、中小サプライヤーの遊休設備を用いて生産した製品にInfra.Marketブランドを冠して販売しており、ファブレス経営を行うInfra.MarketのECサイトのような位置付けになっています。


製品ラインナップは、RMC(Ready Mixed Concrete)、フライアッシュ、混和剤(コンクリートに混和される薬剤)、骨材(コンクリートやアスファルトを作る時に用いられる砂や砂利)、セメント等です。こういった材料は、小規模な生産者が各地に分散・乱立しており、鉄鋼材料のようにまとまったロットで調達できるものに比べて、調達に手間がかかっていたようです。


ホームページには、顧客価値が言語化されています。まず、バイヤー(建設材料を買う側)にとっての価値は、調達コストが下がり、調達効率が上がることです。複数のメーカーや卸売業者に電話や紙で分散発注する必要がなくなり、Infra.Marketが顧客を集めてまとめ発注します。Infra.Marketは注文ロットを大きくすることができ、メーカーや卸売業者に対する価格交渉力が上がることで、調達コストが下がります。また、登録サプライヤーはInfra.Marketの厳しい品質基準をクリアした業者だけに絞られており、バイヤーは品質が悪いものを高く買わされるリスクを軽減することができます。


次に、サプライヤー(建設材料を売る側)にとっての価値は、取引機会を増やせる点にあります。Infra.Marketのパートナーとして、登録サプライヤーに名を連ねることで、これまで取引できなかったようなバイヤーに建設材料を販売することができます。また、Infra.Marketは、サプライヤーの品質を担保するために生産設備にセンサーを取り付けたり、より売れやすくするために販売価格のアドバイスを行ったり、売上拡大を支援します。


Infra.Marketのコーポレートサイトを見る限り、ウェブサービスではなく、モバイルアプリとしてサービスを提供しているようです。総務省のデータによると、2019年時点で、インドの固定ブロードバンド普及率が1.4%に対して、モバイルフォン普及率は84.3%となっており、建設プロジェクトのようにオフィスから離れた活動が多い業界向けサービスの場合、モバイルアプリにするという戦略がビジネスモデルに合っているのかもしれません。



資金調達

現時点で、累計約3億ドル(≒330億円)を調達しています。


シードラウンド 創業3年後の2019年1月に実施。投資家はAccel1社で、調達額は350万ドル(≒4億円)Infra.Marketは自力で事業を立ち上げてから3年間、ムンバイのあるマハラシュトラ州にフォーカスして利益が出るところまで成長しましたが、それでも銀行から融資を受けることができなかったそうです。Accelが出資したことで、他の州・都市に進出し、事業を拡大していけるようになります。このタイミングでの月間売上は250万ドル(≒3億円)で、次のラウンドまでに1,000万ドル(≒11億円)を目指しており、調達資金を製品ラインナップの拡大に利用する予定である、と資金調達ニュースに書かれています。


シリーズAラウンド

シードラウンドの約11ヶ月後の2019年12月に実施。投資家はTiger Globalを含むアメリカのVC3社。エクイティによる調達額は2,000万ドル(≒22億円)で、同時にデットで600万ドル(≒7億円)調達しています。翌年2020年6月にシリーズAの追加ラウンドで4億ルピー(≒6億円)調達していますが、ここで初めてインドのVC(Trifecta Capital Advisors)が株主として入ります。資金調達ニュースによると、このタイミングにおける月間売上が500万ドル(≒6億円)で、次のマイルストーンとして月間売上2,000万ドル(≒22億円)を目指しているようです。


シリーズBラウンド

前回ラウンドから6ヶ月後の2020年12月に実施し、2,000万ドル(≒22億円)調達。また前回ラウンドのように、合わせてデットファイナンスを行い、680万ドル(≒8億ドル)を調達しています。調達ニュースによると、コロナウイルス本格化の直前まで年間売上1億ドル(≒110億円)を達成するペースで成長したものの、直近2ヶ月はパンデミックの影響で売上が半減しているそうです。


シリーズCラウンド

シリーズA〜Bまでの期間よりもさらに短く、シリーズBのわずか2ヶ月後である2021年2月に実施。Tiger Globalをリード投資家に迎え、1億ドル(≒110億円)調達。その5ヶ月後の2021年7月にはデットで10億ルピー(≒15億円)調達このタイミングの資金調達ニュースには、パンデミックに対応するべく、建設会社や不動産会社が資材調達ルートを見直し始め、急激にInfra.Marketのプラットフォーム利用が進んでいること、また売上の10%は海外の需要家で、事業のグローバル化が進んでいることが書かれています。


シリーズDラウンド(直近)

シリーズCラウンドの6ヶ月後である2021年8月に実施。Tiger Globalから1億2,500万ドル(≒140億円)調達しました。調達3ヶ月前の2021年5月には、建設機械レンタル企業のEquiphuntを買収しており、建設プロジェクトの調達に関わるより包括的なサポートを強化していくことを発表しています。シリーズDラウンドで調達した資金は、さらなる企業買収、あるいは新プロダクトの開発に投資していく、と報じられています


創業から初回資金調達までは3年かかっているものの、初回ラウンドからは、平均約6ヶ月で次のラウンドに進んでいます



Moglix

創業は2015年で、本社をシンガポールに構えています(ただし、その前はインドのデリー)。創業者のGarg氏は、元Google Asia PacificのAds and Strategy部門のヘッドを務めていた人物です。


ビジネスモデル

Moglixは、法人・個人が工業製品・ビジネス用品をオンライン上で購入できるようなECマーケットプレイスを運営しています。製品SKUは30万超で、5,000社以上のサプライヤーが製品を掲載しています。Moglixを利用して製品を購入する中小企業・エンタープライズは50万社以上にのぼります。


製品種類は幅広く、安全器具・医療器具・家庭用工具・文房具・自動車部品など、さまざまなアイテムを購入することができます。日本でいうと、モノタロウやAmazonのようなイメージのサイトです。


サイトを閲覧していて感じたのが、Amazonとの類似性です。全く同じ製品で検索すると、記事執筆時点では、MoglixAmazonも価格はほぼ同じで、口コミのデザインなども似通っています。Amazonは2017年にインド市場に参入し、Moglixと同じB2Bマーケットプレイスにかなり力を入れています。一方で、Amazonはインドで商業者連合から事業禁止を求められ、外国直接投資などの規制面で苦戦しているようです。


ちなみに、もし自分がインドの中小企業で備品調達係を務めている場合、口コミの多いサイトを使いたいと思いますが、その点においてはAmazonの方が現時点では圧倒的に多いです。それ以外のところで、どう差別化するか。Amazonに限らず、インドにおけるB2B資材ECはプレイヤーが増えてきており、これからどのように差別化していくのか、注目してみたいところです。


資金調達

現時点で、累計約2億2,200万ドル(≒240億円)を調達しています。


シードラウンド

創業間もない、2015年10月に実施。投資家はAccelをリード投資家とする2社で、調達額は不明ですが、こちらの記事には恐らく100万〜150万ドル(≒1〜2億円)ではないかと書かれています。すでに従業員が50人おり、中国・台湾のサプライヤー、インドの卸売業者と提携し、製品ラインナップを拡大しているようです。


シリーズAラウンド

シードラウンドから1年経過した2016年10月に実施。リード投資家はAccelで、2億8,000万ルピー(≒4億円)調達。この時点で、アジア諸国のサプライヤー約1,500社と提携しており、約20万SKUの製品を揃えているそうです。主要ターゲットとなる中小企業の顧客は2万社程度で、次の18ヶ月で5倍の10万社を目指す、と書かれています


シリーズBラウンド

前回ラウンドの9ヶ月後である2017年7月に実施し、1,200万ドル(≒13億円)調達。このタイミングで、新規プロダクトであるエンタープライズ向けサプライチェーンマネジメントSaaS「GreenGST」をリリースしています。背景には、2017年7月から施行されたGST(Goods and Service Tax)法に基づいて、インド企業が消費税オンライン申告化に対応する必要性が出てきたことが挙げられます。GreenGSTを使えば、オンライン上で請求書を発行し、国境を超えた税金管理、GSTオンライン申告までワンストップで行うことができます


シリーズCラウンド

前回ラウンドから1年ヶ月後の2018年12月に実施し、2,300万ドル(≒25億円)調達。Accelを中心とする複数投資家がリードしました。資金調達ニュースによると、国内外のサプライヤー4,000社と提携し、SKU30万。2018年度の売上は2016年度比120倍で、急成長を続けています。


シリーズDラウンド

前回ラウンドから7ヶ月後の2019年7月に実施し、6,000万ドル(≒66億円)調達。Accelと同じくInfra.Marketにも投資するTiger Globalが株主に入りました。調達資金は、着々と整備しているロジスティクスに投入し、インド全土に物流センターを設立する、と資金調達ニュースに書かれています。


シリーズEラウンド(直近)

前回ラウンドから1年10ヶ月後の2021年5月に実施。投資家には、Falcon Edge CapitalやHarvard Management Companyが並びます。評価額は10億ドル(≒1,100億円)で、資金調達額は1億2,000万ドル(≒130億円)です。


Moglixは、創業間もない時期にシード出資を受けてから、平均13ヶ月で次のラウンドに進んでいます。



OfBusiness

創業は2015年で、本社をグルガオンに構えています。共同創業者の1人であるMohapatra氏は、初回の資金調達ラウンドをリードすることになったMtrix Partnersの元ベンチャーキャピタリスト、Gupta氏はSnapdeal社の元エンジニアリング担当副社長、Kalra氏は元McKinseyパートナーです。


ビジネスモデル

OfBusinessは、鉄鋼、セメント、化学薬品、革、石油化学品など、さまざまな原材料をオンライン上で購入できるB2BのECマーケットプレイスを運営しています。


コーポレートサイトには、バイヤー(発注者)とサプライヤー(出品者)それぞれに対して提供する価値が書かれています。まずバイヤーは、OfBusinessによって品質保証された製品を安価かつ短納期に調達することができます。また、サプライヤーは、取引機会を増やし、複数バイヤーからまとまった受注と、そしてOfBusinessからバイヤーの需要動向レポートを得ることができます。


OfBusinessの特徴的な点は、マーケットプレイス運営者でありながら、同時に金融機関でもあるところです。OfBusinessは、バイヤーに対して原材料の調達支援融資を、サプライヤーに対して運転資金融資を行います。2017年のニュース記事によると、金利は月々1.5%前後で、不良債権は0.5%程度であるそうです。日本で似たような役割を担ってきたのが商社です。ファクタリングおよび取引機会の拡大は商社が持つ基幹機能です。


資金調達

現時点で、累計約5億5,500万ドル(≒610億円)を調達しています。


初回の資金調達(シリーズAと命名されている) Matrix Partners Indiaがリードした500万ドル(≒6億円)のラウンドで、2016年2月に実施。調達ニュースには、顧客数や売上高など詳しい情報は書かれていませんが、既にインド国内10州で事業展開している、と書かれています。


シリーズBラウンド

前回ラウンドから10ヶ月後の2016年12月に実施し、7億5,000万ルピー(≒10億円)を調達。シリーズAラウンドをリードしたMatrix Partners India同様、シリーズBをリードしたZodius Capitalも、インドのムンバイに拠点を置く投資家です。


シリーズCラウンド

シリーズBラウンドから1年7ヶ月後の2018年7月に実施し、2,900万ドル(≒32億円)調達していますが、その前の2017年10月にデットで2億5,000万ルピー(≒3億円)調達しています。シリーズCラウンドでは、MoglixのシリーズEラウンドにも入っているFalcon Edge Capitalを含む複数の投資家が株主に入りました。


シリーズDラウンド

シリーズCラウンドの1年2ヶ月後である2019年9月に実施し、24億ルピー(≒36億円)調達資金調達ニュースによると、2018年度の売上高が約40億ルピー(≒60億円)で、バイヤー1,100社以上と、サプライヤー100社以上を抱えています。


シリーズEラウンド

シリーズDラウンドから1年7ヶ月後の2021年4月に実施。1億1,000万ドル(≒120億円)をFalcon Edge Capitalをリード投資家とする4社から調達しました。ニュースによると、資金調達後の評価額が8億ドル(≒880億円)で、バイヤー数が9,000社以上に達しているそうです。前回ラウンド時の顧客が1,000社程度だったことを考えると、1年7ヶ月で9倍近く増やしていることになります。


シリーズFラウンド

シリーズEラウンドから3ヶ月後の2021年7月に実施し、Sofbank Vision Fundをリード投資家とする4社から1億6,000万ドル(≒180億円)調達評価額は15億ドル(≒1,650億円)で、3ヶ月前から倍増しています。


シリーズGラウンド(直近)

シリーズFラウンドから2ヶ月後の2021年9月に実施し、Tiger Globalをリード投資家とする3社から2億ドル(≒220億円)調達しています。資金調達ニュースによれば、評価額は30億ドル(≒3,300億円)と2ヶ月前の倍で、売上高は10億ドル(≒110億円)以上と伝えられています。外から見ると、あまりに短期間に評価額が上がっていることで少しびっくりしますが、同ニュースによれば、OfBusinessは2021年に入ってから売上をしっかり何倍にも伸ばしているそうです。投資家と起業家の需給が一致すれば評価は決まるため、投資家が適正と判断した結果なのだと思います。


OfBusinessは、平均11ヶ月で次の資金調達ラウンドに進んでいます。



Zetwerk

創業は2018年で、本社をバンガロールに置いています。創業チームはAcharya氏、Sharma氏、Ramakkrushnan氏、Chaudhary氏です。


ビジネスモデル

Zetwerkは、カスタム部品製造のB2Bオンラインマーケットプレイスを運営しています。特注部品を調達したいメーカーと、受注生産可能な工場とマッチングさせるビジネスモデルです。以前ご紹介したXometry(ゾメトリー)というアメリカの企業が、類似ビジネスを展開しています。


発注側には、インフラ・電子機器・航空宇宙・エネルギーなど幅広い業界の企業が並びます。発注可能な加工方法は、金型鋳造・砂型鋳造・インベストメント鋳造・鍛造・射出成形・押出成形など、幅広く取り揃えています。


Zetwerkは、単なるマッチング機会の創出にとどまらず、積極的にマッチング後のプロジェクト管理を行っています。例えば、ソフトウェアによる生産パートナーの生産ステータス管理、受注予測に基づいた在庫管理、Zetwerk品質認定など、独自のオペレーション体制を築いています。


現時点で、ホームページによれば、15ヶ国、25業界、100顧客以上にサービス提供を行っています。


資金調達

現時点で、累計4億4,000万ドル(≒480億円)調達しています。


シードラウンド

2018年8月に実施され、インドのムンバイに拠点を置くKae Capitalと、Sequia Capital Indiaが共同リードで120万ドル(≒1億円)を出資。


シリーズAラウンド

シードラウンドから7ヶ月後の2019年3月に実施し、900万ドル(≒10億円)を調達資金調達ニュースによると、調達時点で生産パートナー1,000社、月間平均プロジェクト数200件を達成しているようです。創業15ヶ月間で、月間売上成長率は平均20〜30%を維持しています。


シリーズBラウンド

シリーズAラウンドから9ヶ月後の2019年12月に実施し、3,200万ドル(≒35億円調達)。その1ヶ月後に、デットで220万ドル(≒2億円)調達しています。資金調達ニュースによると、顧客が100社、生産パートナーが1,500社を超えており、毎月15,000点以上の部品を納入しています。


シリーズCラウンド

シリーズBラウンドから7ヶ月後の2020年7月に実施し、2,100万ドル(≒23億円)調達シリーズBラウンドの推定評価額が約260億円程度と報じられています。


シリーズDラウンド

シリーズCラウンドの7ヶ月後の2021年2月に実施し、1億2,000万ドル(≒130億ドル)調達。シリーズB〜Dラウンドを一貫してリード投資家として支えたのが、Greenoaks Capitalです。その4ヶ月後である2021年6月にデットで3,000万ドル(≒33億円)調達しています。このラウンドでの評価額は約6億ドル(≒660億円)と推定されています。


シリーズEラウンド

シリーズDラウンドの6ヶ月後の2021年8月に実施し、1億5,000万ドル(≒165億円)調達。その2ヶ月後である2021年10月に、デットで50億ルピー(≒75億円)を調達しています。シリーズEラウンド時のニュースによれば、すでにZetwerkはインドから東南アジア・北米に進出を進めており、2021年度の年間売上が1億3,000万ドル(≒140億円)を記録しており、約1,500億円の評価額で資金調達を完了させているようです。


Zetwerkは、平均7ヶ月で次の資金調達ラウンドに進んでいます。



ユニコーン4社の考察

資金調達サイクルが短い

こうして4社の資金調達を見てみると、日本と比較した時に、資金調達ラウンドの周期が短いことが特徴として挙げられると思います。各社の資金調達サイクル(あるラウンドから次のラウンドまでに空く期間)は、Infra.Marketが6ヶ月、Moglixが13ヶ月、OfBusinessが11ヶ月、そしてZetwerkが7ヶ月です。日本のスタートアップがエクイティで資金調達を行う場合、一般的に18ヶ月程度のランウェイを確保するのが目安、と言われますが、それに比べると今回ご紹介した4社は、約2〜3倍早いサイクルで調達を実施しています。


それでいて、前回ラウンドからわずか数ヶ月しか空いていない中で、評価額を数倍引き上げて資金調達しているケースがいくつもあり、高い成長率を根拠に大きな資金を集め、積極投資しながら事業を急拡大させていることが窺えます。今回ご紹介したスタートアップ以外にも、似たような事業テーマで急速に資金調達を進めているところが、各テーマごとに何社かあります。


製造業・建設業の生産効率に関して

インドは、政府が「Make in India」を掲げ、世界の製造業の中心拠点となるよう積極投資していることもあり、製造業セクターのGDPが2013年以降増加傾向にあります。2019年の製造業セクターのGDPは約4,000億ドル(≒44兆円)です。

(Source: https://keikakuhiroba-mfi.com/archives/24547)



一方、インドに比べて国土が9分の1、かつ人口が13分の1である日本も、製造業セクターのプレゼンスは依然として高く、2017年時点で当該セクターGDPが110兆円あります(インドの約2.5倍)。建設業についても、インドの建設業セクターのGDPが約1,800億ドル(≒20兆円)であるのに対し、日本は約60兆円あります(インドの約3倍)。


ちなみに就業人口について調べてみると、おおよその数値で、インドの製造業≒4,000万人、インドの建設業≒1,000万人、日本の製造業≒1,000万人、日本の建設業≒500万人となっています。前述のセクター別GDPと合わせて、就業人口1人あたりGDP(円/人)で比較すると、以下のようになります。


【インド】 製造業≒110万円/人、建設業≒200万円/人

【日本】  製造業≒1,100万円/人、建設業≒1,200万円/人


インドに比べて日本は、就業者一人あたりGDPが、製造業で10倍、建設業で6倍高い、ということになります。


アメリカ市場も調べてみました。2021年のアメリカの製造業GDPがで約2兆3,000億ドル(≒250兆円)、建設業GDPが約6,900億ドル(≒76兆円)。就業人口が、製造業≒1,500万人、建設業≒1,100万人です。先ほどと同じように、就業人口1人あたりGDP(円/人)を算出すると、以下のようになります。


【アメリカ】 製造業≒1700万円/人、建設業≒690万円/人


アメリカの就業者1人あたり生産額は、製造業でインドの15倍、日本の1.5倍。建設業でインドの3.5倍、日本の0.6倍。


なお、一口に製造業と言っても、その中で細かくセグメントが分かれており、各国得意分野も異なると思いますので、あくまで参考程度に見ていただければ幸いです。


これらのデータを考慮すると、インドでは、日本やアメリカに比べて相対的に低い労働生産性の製造業・建設業に、日本やアメリカと類似のビジネスモデル(マーケットプレイス等)を当てはめることでスタートアップが急成長している、と考えられると思います。(もちろん、各国の商習慣はそれぞれ異なり、他国のビジネスモデルがそのまま当てはまるわけではない、という前提のうえでの話です。)




冒頭の繰り返しになってしまいますが、インドのスタートアップ市場が大きな盛り上がりを見せているのは、昨日今日の成果ではなく、スタートアップに関わるステークホルダーが、これまで地道に積み重ねてきた努力の結晶だと思います。そういう意味では、製造業・建設業のGDPが成長しつつあり、それでいて就業人口1人あたりGDPが相対的に低い地域では、今日ご紹介したビジネスモデルの再現性があるかもしれません。まだ詳しく調査できていないので、次の機会に、世界の他の地域で似たようなビジネスモデルを展開しているスタートアップがないか、調べてみようと思います。



IDATEN Ventures(イダテンベンチャーズ)について

フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の進化・変革を支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。


お問い合わせは、こちらからお願いします。