IoT あるいは Internet of Things という言葉を耳にして久しいですが、その本質は何でしょうか、ということを考えたいと思います。
Internet of Thingsは「モノのインターネット」と訳されることが多いため、一般的には「モノがインターネットにつながること」だと解釈されているように思います。これまで、インターネットにつながっていなかったモノがインターネットにつながることで新たな何かが生まれる、というニュアンスかと思います。
分かりやすいようで、分かりにくいようで、結局、どういうことなのでしょうか?いまいち、ピンと来ないように思います。
一方、私は Internet of Things の本質を「モノがインターネットにつながること」の逆で「インターネットがリアルの世界に直接触れることができる身体(=モノ)を手に入れること」であると、捉えています。
これまで様々な方面で多大な影響をもたらしてきたインターネットですが、あくまで、その直接的な影響範囲はサイバー空間に留まっていたように思います。もちろん、間接的にリアル空間への影響も与えていましたが、それでもやっぱりサイバー空間にその影響力の大半は閉じ込められていたと思います。
それが今、IoTという「身体」を手に入れたことで、インターネットがリアル世界に直接影響を及ぼすことができるようになる、という解釈です。
例えば、インターネットにつながった自動車があります。インターネットにつながっていることで、その自動車は従来のようにデジタル地図で搭乗者を目的地までナビゲーションするだけではなく、搭乗者そのものを、その目的地まで運ぶことができるようになります。いわゆる自動運転です。これはインターネットが人間をある地点から別の地点まで運ぶことができる能力をもつ「身体」を手に入れた、ということだと思います。これまで、間接的にしか人間を運べなかったインターネットが、直接、人間を運ぶことができるようになるのです。これまでとの影響力の差は非常に大きなものとなるでしょう。
インターネットはこれまで、生物機能でいうところの「神経伝達網」のみを有しておりました。あたかも神経が体内で情報のやり取りをするように、サイバー空間で情報のやり取りを行ってきた、ということです。ところがそのインターネットが、生物機能でいうところの「身体」あるいはそこから得られる「身体知」をいよいよ得る、というのが上記の IoT に対する解釈なのです。
この解釈に立てば、インターネットが「神経伝達網」と「身体知」という生物と同じ能力を有するということになり、結果的に生物が持つ「知能」へとその進化はつながっていくでしょう。だからでしょうか、やはり最近「人工知能」という言葉を盛んに耳にするようになりました。ちょうどその時期と、インターネットが「身体」を手に入れ始めた時期とが重なっていることは偶然ではないと思います。
さて話は少し変わりますが、インターネットを中心とするITサービスの変化スピードと、リアル世界の変化スピード、どちらが早いでしょうか?
もちろん、ITサービスです。
だからこそ、2017年末の世界企業時価総額トップ8のうち、なんと7社がITサービス関連企業なのです。すなわち、Apple、Alphabet ( Google )、Microsoft、Amazon、Facebook、Tencent、Alibabaの7社です(トップ8の残り1社は、Berkshire Hathaway)
これら7社は、数十年前には存在していなかったか、存在していたとしてもごく小さな企業でした。それが、ものすごいスピードで成長し、今では世界企業時価総額のトップに君臨しているのです。
そして今後、インターネットがリアル世界に直接影響を及ぼすということは、リアル世界が、これらITサービス並みのスピードで変化する時代が訪れるかもしれない、ということではないでしょうか。
その場合、インターネットの「身体」つまり「モノ」をこの世に生み出す製造業や建設業はITサービス並みの変化が求められるため、今より格段に忙しくなる可能性があります。さらには、それら「モノ」をこの世に広く行きわたらせる物流業も同じく今よりも格段に忙しくなる可能性があります。これらの業界で、人手不足や対応力不足がどんどん進むかもしれません。
実際、下のグラフの通り、例えば製造業へ人材供給を手掛けている企業の株価は、2017年以降、日経平均を上回った推移を示しています。団塊世代の引退といった人口動態の影響も少なくないと思いますが、製造業において人手不足が進んでいる証拠の一つではないでしょうか。IoT人材確保のため、製造業が新卒採用を増やしている、という記事も出ております。量的な観点のみならず、これまでにないスキルがものづくり産業で求められるようになっているという質的な変化も大きいでしょう。
いずれにしても、直接的な人手不足ではなくとも、今までとは異次元のスピードでの市場対応を求められることになるでしょう。
このまま、何もしないまま、というわけにはいかないようです。
だからこそ、IDATEN Ventures ( イダテンベンチャーズ ) では、製造業・建設業・物流業が、そういった市場変化に対応できるようにするための、技術やサービスを開発するスタートアップに特化した投資を展開し、社会に貢献しようと、日々、奔走しております。
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