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  • Shingo Sakamoto

B2Bスタートアップがエンタープライズに営業・協業提案をする場合のポイント(IDATEN主催イベントからの考察)


2021年8月、IDATEN Ventures がモデレーターを務め、オンラインイベントを開催しました。テーマは「B2Bスタートアップがエンタープライズに営業・協業の提案をする際、どんなポイントがあるだろうか?」というものでした。このテーマの前提として、B2Bスタートアップが、自分たちのプロダクトをエンタープライズに使ってもらえる、共同プロジェクトを開始することができる、というところをいったんのゴールとして考えています。


日頃から、B2Bスタートアップの方々と話すと、「どうやって営業先(エンタープライズ)を見つけるべきか?」「商談をしてもなかなか話が前に進まない...」「どうやって意思決定者に出会えるのか?」という疑問・悩みを抱えていらっしゃるケースが多いように感じます。


一方で、エンタープライズのDX関連・新規事業関連部署の方々と話しても、「そもそもどうやってスタートアップと出会えばいいか?」「どんな風にコンタクトすればいいか?」「どちらが悪いとかではなく、検討のスピード感が違う...」など、ヒントを探していらっしゃるところが少なくありません。


そこで、「スタートアップとエンタープライズがそれぞれ悩んでいるのであれば、直接カジュアルにディスカッションしたら、フレッシュなアイディアや、リアルな悩みに基づいた解決案などが出てくるのではないだろうか?」と思い、関係者を巻き込んでイベントを開催することにしました。B2Bプロダクトを開発するスタートアップ2社とエンタープライズ2社からゲストをお招きし、私がモデレータを務める形でパネルディスカッションを行いました。



今回のブログは、そのイベントで出てきた意見やアイディアを紹介することで、B2Bスタートアップ・エンラープライズどちらも、今後の施策に活きるのではないかと思い、執筆しています。対象者は、アーリーステージのB2Bスタートアップの方や、スタートアップ連携を担当されているエンタープライズの方々を想定しています。


なお、出てきた意見やアイディアそのものは、すでに定石として色々なサイトで掲載されているようなことも含まれているかもしれませんが、イベントの中で出てきたリアルな意見としてご参考いただければと思います。

(Source: https://pixabay.com/photos/job-office-team-business-internet-5382501/)



どのようにエンタープライズとコンタクトすべきか?


B2Bスタートアップが営業する時に課題として多く挙がったのが、「そもそも、どのようにエンタープライズと出会うことができるのか?」というものです。


紹介

まず、「紹介」が多く挙がりました。経営陣・株主が元々持っているネットワークを生かす場合もあれば、顧問名鑑のような外部サービスを使ってトップ営業を行う場合もあります。確かに、エンタープライズ側も「この人の紹介なら、きっといいサービスかもしれない」というスタンスで聞いてくれることがあるため、粘り強く前向きに検討してくれる傾向があります。


プレスリリースからの問い合わせ

ただ、やはり紹介だけだと数が限られるため、認知を増やすためにプレスリリースを打って、そこからの問い合わせ増加に成功しているというスタートアップもありました。そもそも、プレスリリースを見て問い合わせてくれるエンタープライズは、課題解決の緊急性、担当者の熱量どちらも高いケースが多く、スピーディに商談成立まで進むケースが多いそうです。


お手紙

一方で、そのように直接問い合わせてくれるエンタープライズは、自社内で「課題認識」ができているところが多いです。なんとなく課題を抱えている気はするけれど、その具体的な解決手段がわかっていなかったり、そもそも課題として認識(言語化)できていないケースもたくさんあります。その場合、紹介してもらうことも、プレスリリースを見て「ビビッと」きて問い合わせてくれることも考えにくいのが現実です。そんな時は、全くネットワークがない相手のふところにも飛び込んでいく必要があります。


そこで、スタートアップによっては「お手紙戦略」を使っている、というところがありました。プロダクトユーザーとなる部門が明確な場合(例えば、調達部門、品質管理部門など)、ホームページの組織図を参考に部門管掌役員を特定し、直接お手紙を出します。この手法は、新規開拓に従事する法人営業パーソンであれば馴染みのある手法かもしれませんが、そういった人材がまだいないようなアーリーステージのスタートアップには新鮮かもしれません。「法人営業 手紙」で検索すると、コツや手紙執筆サービスが出てきますので、ご参考ください。



これらの意見はスタートアップ側の視点ですが、エンタープライズ側はこういった意見をどう捉えているのでしょうか?イベントでは、その点についてもディスカッションしました。(ただし、一口にエンタープライズといっても、組織図・スタンス・スタートアップ連携状況にはかなりばらつきがあるため、あくまで「こんな意見もある」くらいでご参考ください。)


エンタープライズは紹介が好ましい

エンタープライズによっては、組織としてスタートアップのサービス利用や協業の検討をする部門があるものの、そういった窓口がない企業もあります。その場合は、ベンチャーキャピタル経由や、個人的なつながりを起因とする「紹介」で、スタートアップと接触するケースが多いようです。


これは今回のイベントと違う場所でヒアリングした内容になりますが、スタートアップとエンタープライズをマッチングさせるサービスはいくつかあるものの、エンタープライズのニーズにマッチするスタートアップの登録が少なかったり、スタートアップからニーズと異なる営業・提案を受けることが多すぎて使いづらくなってしまう、ということがあると聞いたことがあります。


つなぎ役となる「誰か・何か」が必要

イベントに参加いただいた視聴者の方からは、このテーマに関連して、エンタープライズ側のニーズを汲み取り、コンシェルジュ的にスタートアップとつなぐ役割が必要である、というコメントをいただきました。その役割を果たすのが、ベンチャーキャピタルなのかもしれませんし、エンタープライズのスタートアップ連携担当者やスタートアップ経営者がテーマ別にゆるくつながるコミュニティなのかもしれません。いずれにしても、第三者が交通整理して、両者のニーズや相性を考慮してつなぐことが必要そうである、というのが、イベントに参加した方の感想として見られました。


IDATEN Venturesでも、日頃からエンタープライズが抱える課題をヒアリングし、その課題を解決できる出資先のご紹介を積極的に行っています。それがきっかけになり、出資先スタートアップのプロダクトを導入していただいたり、業務提携や合弁会社設立までつながったりすることがあります。




どのように(まだプロダクトが完成していないような)アーリーステージのスタートアップが営業・協業の提案をすべきか?


次に、まだプロダクトの機能が十分でないようなアーリーステージのスタートアップは、どのような持ちかけ方でエンタープライズと会話を始めるのが良いのか?というテーマに移りました。


点ではなく、線で営業する

まず、エンタープライズ側から挙がったのは、社内の審査を通していくことを考えると、「当然のことだが、プロダクトの完成度は高いほど良い」という意見でした。完成度というのは、インターフェースの機能が充実しているだけでなく、セキュリティ面の安全性などインフラ部分も含めて、ということです。


一方で、価値検証をしながらプロダクトをつくるアーリーステージのスタートアップが、最初からそこまで完成されたプロダクトを持っているとは限りません。かと言って、そのまま突撃しても相手にされないことも少なくない。そこで出た意見が、スタートアップが「点ではなく、線で営業する」という姿勢でした。


どういうことかというと、まず営業の中で「完成されたプロダクトではない」という前提を共有し、今日(=プロダクトをみてもらった日)時点のプロダクトが使える使えない、ではなく、必要な機能をこれから実装していくので、一緒に作っていきましょう、という提案をするイメージです。


もちろん、これをやりすぎるとカスタマイズしすぎた受託プロダクトになってしまうため、本当にその機能が必要か?という視点でさまざまな顧客候補と話し、多くの顧客候補が望む機能を実装していくことが重要です。SaaSは永遠のβ版、と言われることがありますが、まさにそういった姿勢が結果につながった、という事例がイベントでも挙がりました。


エンタープライズも、「粘り強い」提案はウェルカム?

こういった提案の仕方は、エンタープライズ側にとって決してネガティブではないようです。一度営業を受けて、「まだこの状態だと使えません」となっても、機能が追加されてから「じゃあこれならどうですか?」と提案をくれれば、そこから導入検討が開始されることもあるようです。


これは当たり前というか当然のことのようにも思えますが、意外に見落としがちな点ではないかと思います。スタートアップは、営業リストを作って、一度話してみて感触が悪いと、リストから落としてしまうことがあります。そうではなく、「この機能を追加されたら再コンタクト」とか「前回は〇〇部門にコンタクトしたけど、今度は時間を置いて△△部門にコンタクト」など、再チャレンジしていくことも必要かもしれません。


ソフトウェア・ハードウェアの区別はない、むしろ価格

ここで、そういった「プロダクトの改善サイクル」という観点に少し関係するかと思い、「ソフトウェアの方が、ハードウェアよりも社内で検討を進めやすいか?」という問いをモデレータから提起してみました。エンタープライズの方からは、「あまりそれは関係ない。例えば、ドローンやロボットのようなハードウェアでも、導入のハードルという意味では、それほど影響しない。」という意見がありました。(ただし、この点は、エンタープライズによってスタンスが分かれる場合もありますので、あくまでご参考までに。)


ただ、やはり「価格」は重要で、部門決裁者の上限を超えると、社内稟議のハードルが上がる、というのはあるようです。


近年は、ハードウェアも売り切りではなく、月額課金でレンタル提供するという「as a Service」トレンドがありますが、「お試し」ができて「うまくいかなければレンタル解約」とすることで、エンタープライズの導入検討ハードルも下がる、というテクニックは使えそうです。




トラクションと導入ハードル


一つ前のテーマに関連しますが、トラクションと導入ハードルについてもディスカッションしました。


早くイノベーターを見つける

やはりエンタープライズとして、事例があると導入しやすいものです。ロゴ効果は大きいもので、有名な企業が使っていればいるほど、信頼感は増していきます。


一方で、B2Bスタートアップにとって、最初の導入企業を見つけるのが難しい。イノベーター理論(こちらをご参照)でもある通り、初期にプロダクトを使ってくれるイノベーター・アーリーアダプター企業を見つけ、導入してもらうことが重要になります。イベントでも、まさにイノベーター企業の導入がその後の勢いを生んだ、という話がありました。


ここで、冒頭の「どう出会うか?」というところに戻りますが、イノベーター・アーリーアダプターに知ってもらうために、やはり市場の認知を高める必要があります。TwitterやFacebookのようなSNSも、広報に役立つことはありますが、B2Bの場合はプレスリリースがきっかけで認知してもらえることが多いそうです。


イベントでは、資金・時間ともに限られたアーリーステージのスタートアップが、「このエンタープライズはイノベーター・アーリーアダプターだろうか?」という見極めを間違えないことがその後の成長に重要である、という意見がありました。あまりに商談が長引きそうな時には、すっぱり諦めて、検討スピードの速い顧客候補を見つける方が、アーリーステージのスタートアップにとっては重要なのかもしれません。


トレンドについて語ること

一方で、窓口となる担当者が、スタートアップ連携以外の通常業務も抱えて忙しい場合、全てのスタートアップからの提案をスピーディにさばいていく、というのは無理な話です。また、意思決定者(上司・役員など)のスケジュールを確保するのが難しかったり、正規の審査・稟議フローに則って進めると自然と時間かかったり、一朝一夕にはいかない事情もあります。


とすると、スタートアップとしては、やはり入口の時点でどう優先順位を上げてもらうか、を心がける必要があります。イベントでは、エンタープライズ側の参加者から「会社が中期経営計画で掲げているテーマに沿っていると優先順位が高い」、また「あるいは中期経営計画にあげられていなくとも、緊急度の高いテーマに関連づけて提案してもらえると、社内で通しやすくなる」という意見も出ました。その一例として、コロナウイルス・脱炭素などのキーワードも挙がりました。


もちろん、プロダクトに価値があることが前提になりますが、入口のところで、どういうストーリーから入るかによって、エンタープライズ側の聞く耳の傾け方も変わってくるかもしれません。



いかがでしたか?改めて、挙がったアイディア・意見の中にはネット上でもまとめられているトピックもありますが、イベントを通じて、営業・協業の提案を受ける側(エンタープライズ)のリアルな声・事情を聞くと、モデレーターとしても、各施策の効果について納得感が増すことがありました。また、スタートアップの方々からも施策の効果含めて聞くことができ、視聴いただいたスタートアップの方々の参考にもなったのではないかと思います。


上述したように、IDATEN Venturesとしては、イベントで挙がったような、「適切なつなぎ役」として、双方のニーズを汲み取ってエンタープライズとスタートアップを、出資先中心におつなぎしています。今回のイベントのような悩みを抱えていらっしゃるようなエンタープライズ・スタートアップの方々は、ぜひお気軽にご連絡ください。



IDATEN Ventures(イダテンベンチャーズ)について

フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の進化・変革を支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。


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