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  • Writer's pictureShingo Sakamoto

期待の物流フィンテックスタートアップ:Loop

2023年10月、物流フィンテックサービスを展開するLoop(ループ)というスタートアップが3,500万ドル(≒52億円)の調達に成功しましたが、Loopが挑む課題の着眼点や技術の活用方法が興味深かったので、調べてみることにしました。


元々Uberで働いていた創業者らが、どのように課題に気づき、どのように解決しようとしているのか、ご紹介します。


なお、為替レートは2023年10月30日時点のものを利用しています。

(Source: https://pixabay.com/ja/illustrations/金融-分析-会計-請求書-4560047/)


Loopとは?

Loopは、2021年にアメリカのサンフランシスコで設立された企業です。創業者は、元Uberの社員であるMatt McKinney氏(現CEO)とShasu Liu氏(現CTO)の2人です。


2人は、Uber Freightという、Uberが2017年にローンチした、輸送会社と輸送貨物をマッチングするプロダクトに関わっていました。Loopは、実はこのUber Freight時代に2人が発見した課題がきっかけとなって生まれた企業です。少しだけUber Freightについてご説明します。


Uber Freightの売上高は、2020年に約10億ドル(≒1,500億円)だったところから、2021年は約2倍の21億ドル(≒3,140億円)、2022年は約7倍の70億ドル(≒1兆500億円)に拡大しています。

(Source: https://fourweekmba.com/uber-freight-revenue/)


トラックドライバーは、Uber Freightを使って、アプリ上のボタンをタップするだけで積荷の検索・予約、配送ルートの確認を行うことができます。また、ドライバーは積荷ごとに数日以内に支払いを受けることができます。


課題の発見:Uber FreightからLoopの気づきへ

TechCrunchの記事には、(2人はUber Freightの)「売上を伸ばすことはできたものの、不良債権と支払い遅延により、多額の損失を被り、収益を伸ばすことが難しいことに気づいた」と書かれています。


「不良債権と支払い遅延」という言葉がポイントですが、これは恐らく、「Uberが荷主から代金を回収するサイクルが遅れる」という意味合いだと思われます。これによって、Uberは「ドライバーには数日以内に報酬を支払う」のに「荷主からの代金回収には何十日と時間がかかる」ことにより、ビジネスが大きくなればなるほど立て替え払いする資金規模が大きくなってしまいます。


2人が課題を深掘りしていくと、「荷主の支払い業務に時間がかかるのは、ドライバー(輸送業者)から荷主に送られる請求書が間違っていたり、解読するのが難しすぎるが原因なのではないか?」という課題仮説にたどり着きました。この仮説を確かめるために、2人は35社の荷主・輸送業者・ブローカー(輸送手段を持たず、輸送案件の仲介を行う事業者。日本語では「水屋」と言われることがある)にヒアリングを行ったところ、いずれも「代金を回収するのも支払うのも、どちらも大変」という課題を持っていたことがわかりました。


彼らがフォーカスした課題は、さまざまなインタビューシーンで「請求書の約20%にエラーがあり、1つの請求書の処理・支払いに平均約50日かかっている」という数字で表現されています。


改めて、この課題により、それぞれのステークホルダーは次のような課題を抱えることになります。

  • 荷主は、請求書の処理・支払にバックオフィススタッフを追加しなければならず、固定費が膨らんでしまう

  • 輸送事業者は、売掛金が回収できるまでの間、金利の高い融資に頼らざるを得なくなり、財務体質が悪化する

  • 消費者は、荷主と輸送事業者が抱える上記課題によって生じたコストがモノ代に乗るため、購入価格高騰の影響を受ける


Loopのソリューション

先ほどの「荷主の支払い業務に時間がかかるのは、ドライバー(輸送業者)から荷主に送られる請求書が間違っていたり、解読するのが難しすぎるのが原因」という課題を言い換えると、「請求書に記載された金額の妥当性を確認するためにひどく時間がかかる」と言えます。


この課題を解決するため、Loopは、荷主と輸送事業者の間でやりとりされる書類にアクセスし、自動的に請求金額の妥当性を検証します。


具体的には、最初の契約ではどこからどこまでいくらで輸送することになっていたか、メールに添付されたPDFにはどう書かれていたか、EDI(Electronic Data Interchange、企業・行政機関等が伝票や文書を電子データで自動的に交換すること)でやりとりされたデータにはどう書かれていたか等をチェックし、それらの情報を統合したうえで請求されるべき金額を推定します。


もし推定金額と実際に請求された金額が一致していればそのまま支払いプロセスに進み、一致しない場合はスタッフが関係書類をチェックします。


技術的には、上記プロセスの裏側で、以下のような処理が行われているようです(Loopは、ブログを頻繁に更新しており、こちらのブログでワークフローを紹介しています)。


(A)出荷データの一元化

  1. さまざまなチャネル(EDI、メール、メッセンジャー、etc)からあらゆる種類の文書を保存し、すべての出荷データのデジタルリポジトリを作成する

  2. リポジトリに保存された出荷データをユニークデータ(重複のないデータ)として正規データベース化し、各文書をリンクする

  3. 出荷データから、ルート・費目・費目別の金額感を分析し、異常データがないかどうかチェックする


(A)出荷データの一元化は、次の(B)請求書データの妥当性チェックの前処理プロセスに該当します。


(B)請求書の妥当性チェック

  1. 輸送事業者ごとに推定した請求金額と、実際の請求書を突合し、どこがどのようにずれているのかを確認する(レートの不一致や、事前に知らされていない追加オプション費用等が多いとのこと)

  2. 輸送事業者ごとに異なる支払条件に合わせて、いつ、いくら支払うべきか、を提示する


(A)と(B)が完了してデータが蓄積してくると、荷主は(C)輸送支出管理インテリジェンスを構築できるようになります。Loopが紹介しているのは、2つのインテリジェンス機能です。


(C)輸送支出管理インテリジェンス

  1. 「どの輸送事業者に、どこからどこまでの輸送を依頼すると、いくらで輸送してくれるのか」というデータが蓄積するため、これを活かして、「この荷物を運ぶ場合は、どの輸送事業者に頼むと、最もリーズナブルに輸送してくれるのか」をシミュレーションすることができる。また、そういった判断材料を持つことで、輸送事業者と契約交渉する際に有利に進められる。

  2. 荷主は、(Loopの提携企業である)JP Morganが提供する「Quickpay」という買掛金の早期支払い割引を利用することができる。例えば、30日後に1万円払うことになっている買掛金を、もし20日後に支払うのであれば9,000円で良い、というイメージサービス。これによって、荷主は早期支払いインセンティブが生まれ、輸送事業者の売掛金回収サイクルが短くなり、ステークホルダー全体がより良い関係に近づいていく可能性がある。


技術のベースと市場の期待

このプロダクトを支えるコア技術は、分散したコミュニケーションチャネルでやりとりされる非構造化データから、必要なデータを抽出し、構造化されたデータベースを構築するところにあると思われます。


改めて考えると、Loopの事業は、BSM(Business Spend Management、法人支出管理)の物流特化版と分類できるかもしれません。BSMにおいて、請求書の受取から支払いまでのプロセスをデジタル化する動きが進んでいますが、物流は(手書き含めた)書類が多く、突合業務に複雑性が多いことから、BSMのデジタル化がもたらすインパクトは大きいと思います。


なお、Loopの事業は、「物流」と考えると遠い課題かもしれませんが、もう少し身近なシーンを考えても思い当たると思います。


例えば、業務委託契約で業務をお願いしている方から月末に請求書が届いた際、その金額が本当に正しいかどうかを検証するのは、意外と難しかったりします。もちろん、しっかり稼働時間を記録したデータを共有していたり、タイムカードで保存していれば容易に確認できるかもしれませんが、例えば毎日メールで「おつかれさまです、今日は9〜17時で働きました。間に1時間休憩を挟みました。」と報告を受けていた場合、月末になってそれをエクセルに手入力して集計して...とやるのは骨が折れる仕事です。さらに、業務委託が1件であればまだしも、50件・100件となると、大変です。Loopのようなサービスがあった場合、メールで受けた報告が自動でデータベースに保存され、請求書との突合まで自動化できることになります。これは卑近な例ですが、こう考えると便利そうなサービスだなと感じます。


こういった事例は物流に限らずあるため、今後さまざまな領域で「〇〇特化のLoop」のような企業が登場するかもしれません。


IDATEN Ventures(イダテンベンチャーズ)について

フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の進化・変革・サステナビリティを支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。


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