1989年に元号は昭和から平成へと変わり、2019年には平成から令和へと変わりました。
この約30年間に、世界の企業時価総額ランキングがどう変わったのか、振り返りたいと思います。
左が、平成のはじめにおける世界の企業時価総額トップ50、右が、平成のおわりにおける同ランキングです。
平成元年時点、トップ50のうち、なんと日本企業が32社もランクインしています。
その32社のうち12社が銀行業で、11社が製造業と、それぞれ1/3ずつを占めており、残り9社をエネルギーが4社、証券保険が3社、通信1社と不動産1社、となっています。製造業を中心とした日本の高度経済成長が伺えます。
日本に次いで多いのが米国の15社、欧州が3社、となっています。
一方、平成の末におけるトップ50のうち、米国が31社と大きく躍進、次いで欧州が8社、中国が7社、あとは韓国、台湾、香港、日本が1社ずつです。
特徴的なのは、上位をMicrosoft、Amazon、Apple、Alphabet (Google)、Facebookという米国インターネット企業や、Alibaba、Tencentといった中国インターネット企業が占めている点でしょう。これらの企業の大半は、わずか30年前には存在していませんでした。
では、インターネット企業以外が成長していないのかというと、そんなことはありません。例えば、唯一トップ50にランクインしたトヨタ自動車を見てみると、その時価総額は30年間のうちに、541.7億ドルから1,798.3億ドルへと、年平均成長率4.2%で成長し続けているのです。
他にはRoyal Dutch Shellも543.6億ドルから2,623.5億ドルへと、年平均成長率5.6%で成長し続けているのです。
しかし、インターネット企業はそれらをはるかに凌駕する成長を実現したのでした。
その理由はどこにあるのでしょうか。
一つ考えることができるのは、ビジネスサイクルの早さではないかと思います。
例えば30年前に日本が世界をリードした製造業は、「かんがえる(企画・設計)」→「つくる(開発・生産製造)」→「とどける(流通配送・配信)」といったプロセスで進められます。そうして、お客さんに使っていただいた感想を踏まえ、また再び「かんがえる」プロセスに入っていきます。
これと同じことをインターネットビジネスでも行っています。ただ、製造業と違うのは、インターネットはこれら全てのプロセスがオンラインで一気通貫されている点です。だから、企画から開発、配信、そして検証までが非常に早く、ビジネスの改善スピードが著しい、という利点があります。お客さんの要望をスピーディにとらえ、それをビジネスに反映させることができます。例えば製造業が数年かかって実現してきたサイクルを、時によっては数週間で実現してしまいます。そりゃ、ビジネスの成長スピードに大きな差がついてしまったわけです。
では、次の30年で世界はどうなっていくのでしょうか。どういった企業が、30年後の時価総額ランキングの上位を占めるのでしょうか。
製造業が世界をリードした30年間、インターネットが世界をリードした30年間。ここから先の30年間は、どうなるのでしょうか。
1つの仮説として、次の30年間は、製造業とインターネットを融合させ、リアルとサイバーの境界を自由に行き来してお客さんのニーズを満たすことができる企業が、ランキングの上位を占めるのではないか、と考えられます。
私たち人間はリアルの世界に生きています。リアルの世界に生きている以上、最終的には、リアルの世界で受ける恩恵なしでは、存続できません。
ここまでサイバー空間が発達し、サイバー空間内ではできないことはほとんど何もなくなってきた昨今、次の30年間を左右する差別化ポイントは、その「何でもできるサイバー空間の利便性」を「リアル空間に落とし込めるかどうか」ではないかと思います。
その兆候として、モノとインターネットが融合したIoTと呼ばれるものや、インターネットに接続された自動運転車、といったものが次々に誕生しています。
この文脈の中では、リアルの世界におけるインターネットの受け皿となる「身体」をつくる製造業が、大きな変革を求められることになるでしょう。だからこそIDATEN Venturesでは、そういった変革を支えることができるような製造業向けの技術やサービスに注目して投資を進めています。
いずれにしても、次の30年を創ることができるかどうか、今からの動き方が全てを決めるでしょう。
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