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  • Shingo Sakamoto

スタートアップがベンチャーキャピタルとの相性を測るための視点

Updated: Jun 16

スタートアップが資金調達をする時に、投資家がスタートアップの企業価値や投資リスクを詳細に調査する、DDDue Diligence=適正で万全の注意を払って遂行される審査)という言葉を耳にすることがあると思います。投資のリスク(もちろん悪い面だけでなく、良い面も)を洗い出し、本当に投資して良いのかを見極めるプロセスに当たります。


一方で、このプロセスの中で、投資家がスタートアップを見極めるのと同様に、スタートアップも同様に投資家を見極めていくことになります。投資家の持つ、資金力、ネットワーク、経験、それに加えてスタートアップとの相性など、さまざまな視点で考えていくことになります。


その中で、この記事では、「スタートアップが投資家(ベンチャーキャピタル)との相性を測る視点をどのように持ち得るか」について書いてみたいと思います。


この記事は、初めて資金調達に動かれるようなスタートアップや、これから起業されるような方の参考になれば幸いです。


*スタートアップに投資するのは、ベンチャーキャピタル(以下、「VC」)に限りませんが、この記事では限定的にスタートアップ投資家=VCという前提で書いていきます。


(Source: https://pixabay.com/ja/photos/%E6%8F%A1%E6%89%8B-%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF-%E6%89%8B-3091906/)


お金だけでない価値...相性

スタートアップが資金調達をするうえでVCに求めるものは何か、ということを考えた時に、まず最初に思い浮かぶのが「お金」でしょう。資金調達とは「必要な時に」「必要な資金を」出してもらうことですので、その需要を満たしてくれる資金供給者としてVCが候補に挙がります。


一方で、必ずしもお金だけではない、という見方もあります。スタートアップがフォーカスする領域の知見を豊富に持っていたり、営業のネットワークを持っていたり、優れた採用候補者をたくさん紹介してくれたり、簡単にお金では買えないような価値を求めて、VCを探すケースも少なくありません。


いくつか考えられる、お金で買えない価値の1つとして、本日のテーマに挙げてみたいのが、「相性」という価値です。相性というのは言語化するのが難しい曖昧な概念ではありますが、出資をしてもらってから数年間に渡って近い距離感で仕事をすることになる「起業家と投資家の相性」というのは重要なファクターであると言えるでしょう。


あるVCは力強く背中を押してくれる、あるVCは厳しい視点で起業家の視座を高めてくれる、またあるVCは文字通り伴走し、常に真横でそっと支えてくれる、などさまざまな関係性があります。十人十色で正解がないからこそ、スタートアップからすれば、自分たちと少しでも「相性がいい」と感じるVCから出資を受けた方がいいでしょう。



一方で、VCに接触してから投資を受けるまでの間に、聞かれたことに答えているだけでは、こうした相性を積極的に測りにいくのは難しいかもしれません。


そこで、特にIDATEN Venturesがメインラウンドとしているシード期において、スタートアップ側がVCとの相性を測る際に、「持っておくと良いのでは?」という視点をご紹介します。


パートナーとしての資質を見る

シード期のスタートアップの特徴として、チームといっても創業者1人あるいは数人しかおらず、プロダクトといってもプロトタイプしかなく(コストのかかるハードウェアの場合はそもそもプロトタイプすらない場合も)、事業計画といっても蓋然性が非常に低い状態であるケースが多いのではないでしょうか。


そんな状態でVCと接するのですから、そもそもターゲットとする顧客の課題がどれくらい確からしいのか、その課題解決にどんなソリューションをあてがうのが最も効果的なのか、というディスカッションが多くなるでしょう。VCとしては、この段階でそのスタートアップが「Problem, Solution, Product」について絶対的な確信を持っていない場合がある、ということについては百も承知です。そのうえで、ディスカッションを始めます。



VCは、上記のようなポイントについて、スタートアップ(起業家)の思考プロセスや行動力をさまざまな点から見ていくと思います。その時点で持っている仮説が確からしいかどうかももちろん大事ですが、「なぜそのように思うに至ったのか」「それを確かめるユニークな視点を持っているか」というある種メタな部分を見ていることが多いということは、あまり知られていないかもしれません。


例えば、私自身でいうと、起業家の「言語」は注意深く傾聴しています。起業家が使う一つ一つのワードが、SNSで頻繁に耳にするような表層的なものではなく、自身の体験や思考の積み重ねからジットリと抽出されたものであるかどうか(なんというかこう、ドリップコーヒーのようなイメージです。)は大切にしています。


繰り返しになりますが、VCがする問いかけは、必ずしもその質問の「答そのもの」を知りたいだけではなく、「なぜそれが答だと思うのか」「答だと思う仮説は、誰かから聞いたものなのか、自分で観察したものなのか、それとも体験したものなのか」という部分が気になっていることが多いように思います。



それでは逆に、起業家がVCを見極めることができるでしょうか?


VCとミーティングした経験のあるスタートアップの方々は経験があるかと思いますが、ディスカッションする中で「逆に何か質問や、話したいこと、相談したいはありますか?」と聞かれたことがないでしょうか。そういうタイミングがあれば(もちろんそういう振りがなくても)ぜひ質問してみるのが良いでしょう。


「この事業の鍵となるのが〇〇という点だと思っているのですが、△△さんはどう思われますか?」など、ズバリ聞いてみるのは効果的だと思います。


ある投資家は過去の類似事例をベースに意見を述べることもあれば、ある投資家は独特の視点で予想もしていなかったような意見を言うかもしれません。また、正直に「わからない」という方もいると思います。そこで、何回か会話のキャッチボールをすることをおすすめします。「どうしてそう思うのか」、「どのように過去の事例と関わってきたのか」など話す中で、投資家をより近くに感じることができると思います。


ここで重要なのは、このプロセスからスタートアップが何を見極めるのかということです。先ほど、投資家が起業家に質問するときに必ずしも「答そのもの」を欲しているわけではない場合がある、と書きましたが、起業家が投資家に問う時も同様のことが言えると思います。投資家が持つ事業ドメインの知識・経験ももちろん重要かもしれませんが、今後何年も一緒に事業を成長させていくパートナーとしてウマが合うかどうか、という観点も同等かそれ以上に大切だと思います。特に、シード期に入る投資家とは、PMF(Product Market Fit=スタートアップがつくるプロダクトがマーケットにしっかりフィットしている状態で、シード期のマイルストーンとされることが多い)までの暗中模索を共にする場合が多く、そのプロセスで「どんな風に物事を考えるパートナーであれば一緒に山を登りきれるかどうか」が大きな意味を持ちます。


金銭のやりとりがベースにあるとはいえ、対面しているときはイチ人間同士のやりとりですから、(他のステージでもそうだと思いますが、特にシードステージの場合は)信頼関係を築くことができるか、一緒に苦難を乗り越えて成長していきたいかどうか、が大事だと言えるでしょう。


投資後の関係性のシミュレーションをする

一度投資を受ければ、それからは定例ミーティングや、日々のメッセージで、都度迷っていることや悩んでいることを話し合うようになると思います。程度の差はあるでしょうが、シード期の投資家といえば、共同創業者に近いくらいの距離感で一緒にやっていくことになるかもしれません。


そこで、投資を受けた後の関係を「シミュレーションしておく」という視点を持っておくことをおすすめします。例えば、現在悩んでいることを素直に相談してみる。「プロダクトのターゲットを特定の年齢層に絞るべきか、マス向けに作るべきか」「CTOをいますぐ探すべきか、もう少し後でいいと思うか」など、そういった悩みや疑問を素直にぶつけてみるのです。


その時に投資家がくれるアドバイスについて、アドバイスの内容そのものや、ワードチョイス、口調、論理構成などから、今後のやりとりの形が多少なりとも予測できると思います。そのやりとりに大きなストレスを感じるのであれば、そもそも投資を受けないほうがいいかもしれません。逆に、「もっとこの人から吸収したい」とか「大きな悩みが出てきてもストレスなく相談できそうだ」というポジティブな感情を持つことができれば、それは相性が良いのかもしれません。


繰り返しになりますが、起業家も投資家もお互いに人間である以上、相性が良い相手もいれば、あまり良くない相手もいるものです。その前提を頭に入れたうえで、このように、投資後の関係性をシミュレーションする、という視点を持つことは有効だと思います。



投資家のビジョンを知る

(こちらは、時間が許せば、という条件付きかもしれませんが、)直接ミーティングをする前に、そのVCがどのようなスタートアップに投資しているのか見ておくことをおすすめします。そこで、投資先にはどんな共通項があるか、どんなポリシーを持って投資をしているか、自分なりに仮説を立ててみるのです。


たとえば、IDATEN Venturesであれば、投資先にはテクノロジーを活用したB2Bスタートアップが並んでいます。また、もう少し詳しく投資先の事業を調べてみると、どうやら「ものづくり」「ものはこび」をアップデートするような技術・サービスを持つスタートアップを中心に投資しているようだ、とわかります。


そこまでわかれば、ミーティングをする中で、どうしてそういった方針で投資活動を行っているのか、あるいは、更にその中で大事にしている投資ポリシーは何か、という一段深い議論ができるようになります。


やりとりする中で、そのVCがどのように今後の世界の流れを見ているのか、何年先を見通しているのか、そういったビジョンが分かるかもしれません。IDATEN Venturesの場合は、コンピューティングパワー、通信技術、素材技術などの革新によって、かつて世界を席巻した「ものづくりの力」が、再び息を吹き返し、次の数十年で再び大きく成長していくのではないか、というビジョンを持っています。


そのビジョンに共感し、一緒にその世界を作っていきたい、と思えることは、単なるお金の関係を超えた絆につながるのではないでしょうか。




今回は、相対する中で投資家との相性を測る、というテーマで書きましたが、もちろん第三者にリファレンスを取ることも重要です。資金調達は「結婚」と描写されることがあるほどに重要なイベントです。本日ご紹介したような視点も持ちつつ、良い資金調達ができるスタートアップがこれから少しでも増える一助となれば幸いです。


IDATEN Ventures(イダテンベンチャーズ)について

フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の進化・変革を支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。

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