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エネルギー問題の中で重要な役割を果たす「モータ技術」とスタートアップ

Writer's picture: Shingo SakamotoShingo Sakamoto

Updated: Feb 27, 2023

今回は、昨今エネルギー問題の中で注目が集まりつつある「モータ技術」について調査を行いました。モータは、種類・用途が非常に幅広いため具体的なテーマの絞り方が難しい領域ですが、今回は「モータ技術とスタートアップ」という切り口でアプローチしてみました。


構成としては、前半でモータの原理・出力容量の観点から分類を行い、「良いモータ」にはどのような要素が関わっているのか整理します。そして、後半でモータ技術に関わるスタートアップを6社ご紹介します。


留意点として、モータは「何かに動きを与え、運動させるもの」を指し、必ずしも電気を用いるとは限りませんが、今回はこちらのサイトで定義されている「電気エネルギーを機械エネルギーに変換する装置」として扱っていきます。また、モータは「モーター」と書かれることも多々ありますが、本記事では「モータ」で統一して記載します。ただし、図やグラフにおいては、参照元の表記を優先して「モーター」のままにしているケースもありますので、その点はご考慮ください。


なお、記事の中で、為替レート(ドル・円)は2022年10月7日時点のものをベースに計算しています。

(Source: https://pixabay.com/ja/photos/円-装備-スプロケット-協力-4868498/)



モータの分類


モータの分類方法にはさまざまな種類が存在します。電力から動力への変換原理、電流の種類、回転数、用途、等。例えば、以下の図では、第1に電流の種類(DC、AC等)、第2に回転原理の順序で系統図が書かれています。なお、DCは直流電流、ACは交流電流を表し、DCモータ、ACモータは、それぞれの電流で動作するモータです。

(Source: https://www.renesas.com/jp/ja/support/engineer-school/brushless-dc-motor-01-overview)



上記の分類をもとに、それぞれの違いをまとめてみます。第1分類であるDCモータ・ACモータ、第2分類である回転原理ごとのモータの違いに入る前に、第0分類とも言える分類があります。まずはそこからご紹介します。


【第0分類】

〜電磁モータ〜

現在普及しているモータの多くは、電磁モータになります。第1分類以降は全て電磁モータに関する説明となりますので、ここでの詳細説明は割愛します。


〜静電気モータ〜

静電気モータは、静電気の引き寄せる力を利用したモータです。静電気モータの基礎原理については、NHKの実験がわかりやすいのでご紹介します。


下の図で、逆さまになったプラスチックカップに乗った人形はくるくる回り続けますが、これは静電気の力によるものです。カップの手前と奥側に見える銀色の帯は静電気を帯びたアルミ箔で、カップには画鋲が刺さっています。①アルミ箔の静電気に画鋲が引き寄せられ、カップがほんの少し回り始めたところで、アルミ箔と画鋲は接触します。②ここで金属(導体)である画鋲には電気が流れ込み、両者は互いに引き寄せる力を失います。③そして画鋲は反対側のアルミ箔に接触して放電し、また反対側のアルミ箔に引き寄せられる、という形でぐるぐる回転していきます。

(Source: https://site.ngk.co.jp/lab/no08/)



〜超音波モータ〜

動作イメージとして、以下の図をご参考ください。右側の「駆動原理」を見ると、下から①圧電セラミック、②ステータ(固定子)、③ロータ(回転子)の三層構造になっています。印加された圧電セラミックが伸縮を起こし、接触したステータを動かします。ステータはロータに接触しているため、両者の間に摩擦が生じます。その結果、ロータはステータと逆方向に動き始めます。

(Source: https://www.piezo-sonic.com/about/ultrasonic-motor)



【第1分類】

DCモータ・ACモータはどのように使い分けられるのか、こちらのサイトを参考にしました。DCモータを動かす直流電流の電源として挙げられる代表例はバッテリーです。一方、交流電源の代表例は家庭用コンセントです。


分類図では書かれていませんが、交直両用モータというものも存在します。交直両用モータは、文字通り直流でも交流でも回転するモータで、「ユニバーサルモータ」「整流子型モータ」とも言われたりします。基本構造はDCモータと同じで、交流電流も処理できるようにロータが整流機能を持っています。



【第2分類】

(1)DCモータ

DCモータは、「ブラシ付きモータ」「ブラシレスモータ」「ステッピングモータ」に分かれています。


ブラシ付きモータの一般的な仕組みは、以下の図をご参考ください。ロータ(コイル)の周りにステータ(磁石)があります。ロータの中心には、互いに接触しないよう120°ごとに配置された3つの整流子があり、1つの整流子は2つのコイルに接しています。直流電源に接続されたブラシは、2つの整流子に接触しています。電流を流すと、まずブラシを通じて整流子・回転子に電流が流れ、固定子との間で生まれた吸引・反発の磁力によって回転します。

(Source: https://www.renesas.com/jp/ja/support/engineer-school/brushless-dc-motor-01-overview)


ブラシ付きモータは、ブラシと整流子が接触した状態で回転するため、ブラシが摩耗する、電気ノイズが発生する、等の課題があります。


一方、ブラシレスモータは、ブラシ(および整流子)が存在せず、中心にある磁石がロータとして機能することになります。ステータにはコイルが用いられます。ブラシ付きモータでは、ステータである磁石が生む磁界は変化せず、ロータであるコイルに印加する電圧を変えることで、コイルが生む磁界を制御して回転が発生します。一方、ブラシレスモータでは、ロータである磁石が生む磁界は変化せず、ステータであるコイルに印加する電圧を変えることで、コイルが生む磁界を制御して回転が発生します。

(Source: https://www.renesas.com/jp/ja/support/engineer-school/brushless-dc-motor-01-overview)


ブラシレスモータは、ブラシ付きモータに比べて耐久性が高く、電気的ノイズが小さいという特長を持つ一方で、制御が難しいという側面を持っています。ブラシレスモータは、ロータが滑らかに回転するよう、各コイルに与える電流の方向とタイミングを制御する必要があります。3つのコイルの場合「120°通電制御」、6つのコイルの場合「60°通電制御」となります。当然、コイルの数が増えれば増えるほど、回転は滑らかになりますが、通電制御するタイミング周期が短くなるため、制御の難易度が上がります


また、ブラシレスモータは、回転を維持するために、各コイルに流す電流の方向・大きさを変えますが、そこでインバータ回路が用いられます。


ステッピングモータとは、パルス信号に同期してロータの回転角度、回転速度を正確に制御できるモータで、「パルスモータ」とも呼ばれます。

(Source: https://www.renesas.com/jp/ja/support/engineer-school/brushless-dc-motor-02-inverter-pmw)



DCモータを用いるメリットは、制御が容易であること、可搬電源を利用できること等が挙げられます。直流電流は一定方向に電流が流れており、極性が入れ替わる交流電流に比べて回転を安定させやすいと言われています。また、「電池」を用いることができるため、電源と一緒にモータが移動できるという可搬性によって、用途の幅が大きく広がります。



(2)ACモータ

ACモータは、「誘導モータ」「同期モータ」に分かれています。先に同期モータから始めた方がわかりやすいため同期モータについて説明しますと、実は、同期モータの回転原理としてはブラシレスDCモータと同じです。ステータであるコイルに印加する電圧を変えることで、コイルが生む磁界を制御して回転が発生します。これが直流であればブラシレスDCモータ、交流であれば同期モータ、という扱いになります。


また、誘導モータも同期モータと構造は似ていますが、ステータが生んだ回転磁界がどのようにロータの回転につながるかが同期モータとは異なります。ブラシレスDCモータ・同期モータは、ステータが生んだ回転磁界と中心磁石が引き合うことで回転しましたが、誘導モータは中心に磁石を利用せずコイルを用います。①ステータが回転磁界を生む→②ロータのコイルに誘導電流が流れる→③電流と磁界の作用で力が発生→④ロータが回転、というステップになります。

(Source: ​​http://arduinopid.web.fc2.com/K33.html)


出力容量による分類

ここからは、「出力容量」によって分類していきたいと思います。


モータは、出力容量によって大きく4つに分けることができます。

・【〜3W】→ 超小型モータ

・【3W〜100W】→ 小型モータ

・【100W〜数kW】→ 中型モータ

・【数kW〜】→ 大型モータ


ここで「小型、中型、大型」とは、外観としての大きさではなく、出力容量としての大きさである点に注意が必要です。例えば、見た目がコンパクトでも、出力容量が数十kWあるようなモータは大型と分類されることになります。


一般的に出力容量が100W以上(上記の区分でいうと中型・大型)のモータは、産業用途の利用がメインとなります。こちらのサイトでは、工場のコンベア、ファン・コンプレッサー、プレス機械等に用いられる例が挙げられています。


一方、100W未満の小型モータは、エアコン・電子レンジ等の一般家電やコンピュータに用いられています。


日本には、750W以上のエネルギー容量を持つモータに関して、「トップランナー制度」という制度が存在します。国全体の省エネ推進を目的として2015年からスタートした制度で、消費電力量が大きい(750W〜375kW)モータについて、「トップランナー」として定められたモータ性能を下回る製品を国内向けに出荷することが禁止されています。海外でも日本同様にモータ性能に関する規制が存在し、各国において国際電気標準会議(IEC、International Electrotechnical Commission)の枠組みが採用されているものの、それぞれ独自の基準が定められているケースが多く、足並みは揃っていないようです。


「トップランナー制度」における対象モータと、エネルギー効率の目標基準値は以下の通りです。前述の回転原理による分類でいうと、「ACモータ→誘導モータ」が対象となっています。

(Source: https://www.jema-net.or.jp/Japanese/pis/top_runner/sansou_yudou.html)


(Source: https://www.jema-net.or.jp/Japanese/pis/top_runner/sansou_yudou.html)


「良い」モータとは?

なお、上記のモータ効率(エネルギー基準値)は、以下のような式で表すことができます。

  • モータ効率(%) = (機械出力[W] ÷ 入力電力[W] )× 100

  • 入力電力[W] = 電圧[V] × 電流[A]

  • 機械出力[W] = 回転速度[rad/s] × 回転力[Nm]


そして、入力電力と機械出力の間には、以下のような等式が成立します。

  • 入力電力[W] = 機械出力[W] + 損失[W]


損失とは、モータを通じて入力電力が機械出力に変換される過程で損なわれるエネルギーです。よって、損失が小さければ小さいほど、効率が良いモータということになります。以下の図では、順番に回路損・銅損・鉄損・機械損が描かれています。

(Source: https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00001/)



モータ効率には、電圧[V]、電流[A]、回転数[rad/s]、回転力[Nm]の4指標が関わっていることがわかりました。これらの4指標が、モータの回転原理、あるいはモータを構成する部品素材等と関わっていることになります。


なお、回転力は「トルク」と言われることもあります。トルクには「モータトルク」「負荷トルク」の2種類が存在します。モータトルクはモータがある速度で回転する時に発生しているトルクで、負荷トルクはモータがある速度で回るために必要なトルクです。定常状態ではモータトルク=負荷トルクとなっていますが、負荷トルクが相対的に大きくなれば減速、モータトルクが相対的に大きくなれば加速、となります。



モータ技術開発に取り組むスタートアップのご紹介


ここから、モータ関連の技術開発に取り組むスタートアップを6社ご紹介します。


【Turntide Technologies】

2013年にアメリカで創業された企業です。累計4億9,000万ドル(≒710億円)調達しています。株主として、BMWのCVC、Breakthrough Energy Ventures等が参画しています。


同社は、「従来型の電気モータによって浪費されている世界の電力消費量の25%を削減し、化石燃料からの脱却を進める」というミッションを掲げ、高効率モータおよび遠隔制御・管理ソフトウェアから構成されるTuntide Smart Motor Systemを開発しています。


Tuntide Smart Motor Systemには、大きく分けて、HVAC(Heat, Ventilation, Air Conditioning)と車両電動化の2領域が存在します。まずHVAC領域では、センサーから把握した屋内環境の温度・湿度・空気品質に応じて、モータを最適に自動制御します。モータの故障検知、使用エネルギー状況等を遠隔で把握できるダッシュボードを提供しており、車両電動化分野では、バッテリー・モータ・インバータ等をパッケージ化し、トラック・バン・AGV(Automated Guided Vehicle、無人搬送車)のような物流、トラクター・コンバインのような建設分野の車両電動化を支援しています。


同社のモータは、Switched Reluctance Motor(SRM)という種類のモータに分類されます。SRMは同期モータの一種で、通常ステータに集中巻ステータ、ロータに電磁鋼板ロータが用いられ、ネオジム等のレアアースを用いる永久磁石を必要としないため、供給リスクを低減することができると言われています。日本では、日本電産が2019年から生産を本格開始しました。


SRMは、ロータに永久磁石の代わりに鉄を用いることで、安価に安定供給できる点が強みとされていますが、制御が難しく、振動・騒音が課題とされています。例えば、日本では静岡大学の朝間研究室で、この課題を解決する技術研究が行われています。


【EVR Motors】

2012年にイスラエルで創業されたスタートアップです。小型・軽量・低価格なEV向けモータを開発しています。こちらの記事によると、累計550万ドル(≒8億円)の調達に成功しているそうです。


同社を率いるのは、イスラエル国防軍の軍用機等を製造するIsrael Aerospace Industriesの上級職を務めたOpher Doron氏で、会長職はイスラエル国防省の元研究開発局長が務める等、軍事との関係が特に深いメンバーが携わっています。


同社は、Trapezoidal Stator Radial Flux Parmanent Magnet Motor(TS-RFPM)というモータ技術をベースに、顧客の要件に最適なモータを設計しています。TS-RFPMは、モータの分類としては同期モータの一種です。Turntide TechnologiesのSRMも同期モータに分類されますが、SRMは永久磁石を用いていないリラクタンスモータで、TS-RFPMは永久磁石を用いているモータになります。

(Source: https://www.e-mechatronics.com/mailmgzn/backnumber/201904/mame.html)


TS-RFPMは、永久磁石モータの中でも、台形のステータに巻線を加えて磁束を増加させる特許技術に基づいたものです。2021年に公開されたニュース記事によると、EVR Motorsが開発したTS-RFPMは、同じ出力を持つ通常のRFPMモータに比べて、サイズが半分以下、数十%軽量であるそうです。顧客の用途に応じてモータ設計を変えることで、48V〜800Vと幅広い電圧に対応できるため、電動二輪車から電動トラックまで利用可能となるようです。


TS-RFPMモータにはレアアースが用いられていますが、同社はレアアースフリーのTS-RFPMも開発を進めています。レアアースフリーの場合、SRMに近い構成となるため、振動・騒音等の課題がどう解決されるのか、気になるところです。



【Elaphe Propulsion Technologies】

2006年にスロベニアで創業された企業です。創業から15年以上経過していますが、crunchbaseによると近年外部資金の調達を始め、直近の2020年の資金調達を含めて、累計1,500万ユーロ(≒21億円)調達しています。


同社は、EV向けのインホイールモータシステムを提供しています。インホイールモータは、ホイール(車輪)内部に装備されたモータで、ギアや駆動軸を省略して車体重量を削減したり、エネルギー効率を向上させたり、さまざまなメリットが期待されています。一方、路面の衝撃を直接的に受けるため、高い耐久性が求められる点が課題となります。


Elaphe Propulsion Technologiesの強みは、各インホイールモータをリアルタイムで最適化できるソフトウェアと、特許技術をベースとしたモータ設計ソリューションにあります。ホームページには、「期待に応える最適な電動モータを開発するために、寸法・重量・性能・デューティサイクル等の設計基準に関する主要な電磁設計パラメータを見つけるために、独自開発された分析ソフトウェアを利用する」と紹介されています。


確かに、EVの利用シーンごとに、インホイールモータに求められる特性は大きく変わりそうです。例えば、道路の整備状況によって耐久性能は異なりますし、車体重量・環境温度等も関係します。


同社のインホイールモータシステムは、アメリカの新興EVトラックメーカーであるLordstown Motorsを含む複数の自動車メーカーに採用されているそうです。


【C-Motive Technologies】

2012年にアメリカで創業された企業です。crunchbaseによると、創業から2015年まではNational Science Foundationから助成を受け、2017年からエクイティファイナンスを行っています。累計、380万ドル(≒6億円)を調達しています。


同社は、2019年の資金調達ニュースで、「これまでの鉄・銅線・磁石に依存したモータは、非常に高速回転した時のみ高効率となり、低速で使用するには重いギアが必要である」と現状のモータ課題を指摘し、その解決策として静電気モータを開発しています。


この静電気モータは、特に低速回転時に効果を発揮し、最大効率99%で、従来モータの半分の重量で、2倍の電力を供給できるそうです。一方、従来から存在する静電モータには、大きな静電気を起こすために必要な高電圧が大気中で絶縁破壊を起こしてしまう等の課題もありました。この点について、C-Motive Technologiesのホームページで詳細は明かされていませんが、「包括的な特許を抑えている」「重要な秘密が機械内部を満たす独自の液体にある」という表現もあり、このあたりに秘密が隠されているのかもしれません。


【アスター】

2010年に日本で創業された企業です。創業から現在までに約70億円を調達しています。同社は、独自の積層技術を用いた「ASTコイル」を用いた「ASTモータ」を開発しています。このコイルには、従来モータに使われてきた巻銅線の代わりに、アルミニウムが用いられています。同社独自のモータ構造によって、占積率(コイルの断面に占める導体の割合)が大幅に高まり、モータサイズ・重量を小さくすることができるそうです。

(Source: https://www.ast-aster.biz/ast-motor)


こちらの記事には、2020年以降、銅の需要に供給が追いつかなくなっていく可能性があると書かれています。一方、アルミニウムは銅に比べると融点が低く、「リサイクルの王様」と言われることもあり、循環性が高い資源です。また、リサイクルという観点では、銅線には絶縁皮膜が多く、リサイクル効率が低くなっていましたが、ASTコイルは、その点も考慮して絶縁皮膜の量を少なくすることができているようです。


【東北マグネットインスティテュート】

2015年に日本で創業された企業です。創業からこれまでに約21億円を調達しています。JFEスチール、アルプスアルパイン、トーキン、パナソニックの出資によって設立されました。


同社は、モータのロータ・ステータとして用いられる電磁鋼板(珪素鋼板)の代替材料として、NANOMETというナノ結晶軟磁性材料を開発しています。ナノ結晶軟磁性材料自体は、1988年に開発されましたが、Fe濃度が78%以下に制限され、磁束密度が電磁鋼板に比べて劣ってしまうという課題がこれまでありました。同社は、リン(P)・銅(Cu)を用いて、高磁束密度・低鉄損という性質を持つ高Fe濃度合金を実現しました。



種類が多く、かつ、用途も幅広いモータは、技術的な専門性も高く、調査するのが難しいテーマであると感じます。そんな中でも、今回はモータ領域で資金調達を実施している企業の調査を通じて見えてきた、モータ技術の発展の方向性として3つ整理してみたいと思います。


1つ目は、材料の革新です。高性能モータの永久磁石には、ネオジムに代表されるレアアースが利用されるケースが多いですが、昨今は国際情勢の変化もあり、脱レアアース依存が進んでいくと思われます。レアアースの代わりに鉄を用いる場合、いかに磁界を強化するか、それに伴って起こる課題(例えば、振動・騒音等)をどう解決するか、という観点で材料の組み合わせ、設計の技術が進んでいる印象です。


2つ目は、「IoM」です。「Internet of Motors」の略で、モータとインターネットの融合です。例えば、膨大な数のモータが用いられる建物のHVAC管理において、建物全体のエネルギー効率を最適化するために、温度・湿度・空気品質を解析して、モータを遠隔制御する等の動きがみられます。もちろん、中央制御に限らず、エッジで解析してリアルタイム制御する、という動きも増えていくと思います。


3つ目は、高速で「オンリーワン」なモータをつくる設計技術です。モータに求められる要件は用途に応じて異なります。使用場所、使用頻度、環境温度等、さまざまな変数の中で最適なモータをつくることが求められます。例えば、これらの変数を入力すると、一瞬で最適なモータ設計図が自動生成される等のソフトウェアは今後増えていくかもしれません。


少しスコープが大きくなりましたが、これからますます重要になるモータ技術に関心を持つきっかけやヒントになれば幸いです。



IDATEN Ventures(イダテンベンチャーズ)について

フィジカル世界とデジタル世界の融合が進む昨今、フィジカル世界を実現させている「ものづくり」あるいは「ものはこび」の進化・変革を支える技術やサービスに特化したスタートアップ投資を展開しているVCファンドです。


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